二章後編『他校試合が激化する……!』
『トーナメントって逆シードになりがち』
第三十九話『外郭之空』
「ガイカクノガラって、知ってるぅ?」
「……知ってるのか?」
ガイカクノガラの名前を聞いた瞬間、スラム住民ですら身が凍えるほどの殺意を感じる。だがザンはそれを意に介さず、飄々とした態度を取り続ける。
「まぁね。でも……俺ちゃんが知ってるのは奴の正しい書き方だけ」
「……書き方?」
「そいつは……こう書く!」
そういうと、地面に漢字を書いていくザン。そして書き上げたのは、『外郭之空』と言う文字。ヤノカはそれを見て、首を傾げた。
「なんて読むの?」
「これがガイカクノガラの名前だ」
いきなり漢字を見せつけられても、疑問符しか頭に浮かばないヤノカ。そもそも見たことがない文字なので、これがどうだと言われてもそう……。としか言いようがないのだ。
「奴の文字を知ったところで、何かいいことでもあるのか?」
若干口調が荒くなるヤノカだが、ザンは気にすることなく言葉を続ける。
「確かに。でも割と重要だったりするんだなぁ」
「何が?」
「……ニブいなぁ。知ってるかい?この世界には人の名前でそいつがどこにいるか検索する我流魔法があるんだよ」
「……そうか。成程。奴は……。これが本当の名前だと」
「そういう事。まぁそういう感じの我流魔法を持ってる奴は知らん!自分で探せばいいんじゃない?」
かなり適当な受け答えであるが、事実それで見つかりそうなので問題ないと、とりあえず礼を言って立ち去る。
「今度の炊き出しもよろしく!」
何がしたかったのかはよく分からないが、とりあえず有用な情報を教えてくれたのは確か。今度の炊き出しをするときはもう少し量を持ってこようかと、帰りながら考えるヤノカであった。
一方その頃、警察では、ゼロの死体解剖を開始していた。脳を撃ちぬかれ即死である事は誰がどう見ても明らかではあったが、一応と言う訳でやる事に。
「やはり頭を撃ちぬかれ……。即死か。まだ若いと言うのに……」
「そうですね。ところで彼、家族関係などは?」
「母は彼を産んだ後すぐに死亡、そして父は去年まで生きていたようだったが、後を追うように自殺したとの事だった」
つまりゼロは結構不憫な人生を送っていたわけである。その時に、クロクを見てあこがれた、その結果がコレである。余りにひどい最後ではないか。
「つまり天涯孤独の身だったって訳ですか」
「そうだな。……せめて楽に逝ければいいのだが」
そして解剖も終了し、死体を埋葬しようと墓地まで運ぼうとする。ただの死体を二人で運ぶと言うのは変な話だが、最近墓荒らしも多いので、監視目的も兼ねていた。
「しかしなんで俺らが運ばなきゃならんのかねぇ」
「仕方ねぇだろ。それよりしっかり運べよ」
「はいはい……。って、なんだ?」
すると、ゼロの両親の墓の上に、片割れの仮面を付けた男がナイフ片手に座っていた。男と言うよりは、少年と言う感じである。だが明らかに異常な雰囲気を発していた。二人ともすぐに戦闘に入れるよう準備をする。
「あ?」
ここで、何が異常なのかに気が付いた。それは、他の墓全てが掘り返されていると言う事。そしてその死体が全て肉をはぎ取られていると言う事。埋葬するときに土葬するのがここの地域の風習なのだが、まだ埋めて数日も経っていない死体の肉も無くなっていた。
「あ。来たんだ」
そう言うと、即座に二人いる方の片方、右側にいる方の首を軽くへし折り、もう片方にナイフを投げつける。
「何をする!」
迎撃しようと魔法を使うが、手拍子一つでナイフと左の奴が入れ替わり、自分で放った魔法に直撃する。牽制としてはなった魔法なのでまだマシだが、それでも十分な隙が出来てしまう。
「じゃ」
そして少年は素手で喉を掴み、スポンジでもむしり取るように千切る。ゴミクズのように捨てられた二人の死体がそこに転がり、少年は息を吸って吐き出す。
「さてと……」
欲しかったのはこの二人の死体ではない。最初から狙いは一つ、ゼロの死体である。布を剥がして皮を剥き内蔵を貪る。しばらくすると少年の体が大きくなっていき、そしてそこには……。
「あー……しんどいわァ」
ゼロがいた。
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