第三十三話『バトルロイヤル開始ッ!ファイッ!』
「とりあえず治すからじっとしててねー」
ヤノカはボロボロになりながらも、校長の治療を受けていた。校長の我流魔法は、『
「全く、シャード君から聞いてた通り、無茶をするね君は」
「す、すみません……。つい本気になっちゃって……」
「別にいいんだけどね?なぜなら君らを応援するのが僕の使命だからね!と言う訳で、早速直して進ぜよう」
そういうと、ヤノカの顔面にビンタを放つ。唐突な事に困惑するヤノカだが、しばらくして血が引いていくのを感じる。原理は分からないが、カタガネに殴られると回復する、それが校長の我流魔法。
「なんで治るんですか?」」
「さぁ?」
ちなみになぜ治るのかは本人も分からない模様。彼曰く、どちらかと言えば技術との事。なんだかすごいんだなぁ。ヤノカはそう思った。
「早く寝なさい」
後ろからやって来たフィルを見つつ、あぁ無理矢理連れてこられたんだなぁと、どうでもいいことを考えた後眠るのであった。
翌日。ケガもしっかり回復したヤノカは、リルとフィルと共に第一戦闘場に向かう。観客席も完備している、かなりしっかりした場所である。なおここより大きい場所が普通にある。
「昨日は悪かったな……。顔、大丈夫か?」
「すっかり大丈夫だよ。ほら」
「おー。よし、頑張る」
三者三葉に気合を入れていく。するとリジュがやってきて、ヤノカを励ましていく。
「頑張るのだぞヤノカ!お守りも買ってきたぞ!」
「ありがとうねリジュ。……勝ってくるから」
絆創膏塗れの手を隠しながら、継ぎ接ぎで出来たお守りを手渡すリジュ。何も言わずに二人は背中を叩く。そして選手が入場し、その後細かいルールが課せられていく。
「ルールは二つ。まず今回の選抜メンバーは三人までなので、三人になった時点で戦闘を終了させます」
「単純明快だなぁ」
「そして二つ、ケガは治せますんで、殺す気でやってください」
「良いのか?いやまぁ昨日治してもらったけど」
つまり、数百人を三人になるまで殺しあえと言うルールである。そして言い終えた瞬間、参加者全てを魔方陣を使ってバラバラに飛ばす。ヤノカが飛ばされたのは、なんと校舎内。
『そこは『イルカネガ』先生の能力で疑似的に再現した学園です!ぶっ壊しても大丈夫なので全力でやってください!』
驚くヤノカを差し置いて、校内放送で最後のルールを追加する。最後のルールを追加した後、早速戦闘が開始される。まずヤノカを狙う者が校内に入ってくる。
「ククク……。これであの平民も終わりだな」
なんと、副校長である『カイロウ・ネ・カマセ』が最初にヤノカを校内に飛ばすと決めていた。『イルカネガ・ノガナ』と言うほぼ無関係な先生に命じ、ヤノカだけを指定する場所に飛ばしたのである。
そしてヤノカを倒せば、報酬が出ると言っておいたのだ。なおスターはこれに対し、若干キレながらカマセを侮蔑していた。
『私はこの手でヤノカを倒したいのですわ。あなたのようなゲス相手の命令など聞く気になりませんわよ』
第一戦闘訓練以降、スターは一対一の状況でヤノカを倒すことにこだわる様になった。と言うのも、ヤノカと言う男は、強い。ただ強いだけではなく、そこにいるだけで自然と人も集まってくる。
そんな彼を、卑怯な手段で倒しても、何の意味もない。リジュを使ってヤノカを倒そうとしたこともあったが、あの時の彼女は本当に冷静でなかったのである。
「私の前に勝手に負けたらぶっ飛ばしますわよ……」
第二グラウンドに飛ばされたスターは、自分をバリアで守りながら試合が終わるのを待つことにした。倒されなければいいと言う条件が重要だと言うのなら、スターは一切負けることがない。
「私の読みでは……、後十分もしない内に三人になるでしょうね」
恐らく今回、何かある。スターはそう考えていた。なぜかと言えば、ある女がいたから。
「……『セカンドナンバー・ツイン』。運さえあれば、奴は……」
一方その頃フィルはと言うと、我流魔法を使わず素の身体能力だけで戦っていた。十分しか戦えないと言うのは、何人倒せばいいか分からないバトルロイヤル形式の戦いでは不利である。
「にしてもこの辺敵多いなぁ」
フィルが飛ばされたのは校舎前グラウンド。一対多と言う状況も考えて戦ってきたので、集団戦でも無類の強さを誇っている。腕の関節を折って蹴り飛ばす、自分への攻撃を他人に当てる、倒した敵をそのままにすることで、足場も奪う。
「まぁ弱いからいいけど……っとぉ!」
「あの時以来ですね、フィルガ」
「あー……、誰だっけ?ビルの方だっけ?」
そんな集団戦を行っている時に、不意を突いて魔法を放ってくるドラ・マジカ。フィルはあえて煽る様に兄の名前を呼ぶ。
「……」
黙ってはいるが、兄にコンプレックスを持っているドラは、この瞬間フィルを殺そうと決める。
「俺は……あのクソ兄貴とは違うんだよ!」
眼鏡を叩き割り、大量の魔法陣を浮かべるドラ。流石にこの程度の煽りで釣れるとは思っていたが、ここまで釣れるとは逆にビックリである。
「じゃ、見せてみろよ?」
フィルはファイトポーズを見せつけ、挑発する。
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