第三十一話『決戦前夜』
「試験は明日です」
ヤノカが泣き、そして立ち直ったのは翌日。なんだかんだと一週間経とうとしていた。いよいよ試験まで二十四時間を切ったのである。
「早いな……。そういえば明日があの試験日か。……大丈夫かヤノカ」
「うん。一応……。それで今回の試験は何をするんですか?」
「えーっとですね、その前にシャード先生が今日来ていないので、代わりに私が教師として説明させていただきます!」
シャードは『気になることがある』と言って、そのまま誰にも言わずにどこかへ行ってしまった。仕方なく、代わりの教師を『レンゲ・アタノキ』が務めている。
「えー、今回はですね。参加すると言った全生徒を集めて、最後の三人になるまでバトルロイヤルです!」
「雑じゃない?」
「最終的に立っていれば勝ちですので!」
誰だよそんなふざけたルールを作ったのは……。と思うだろうが、これはヤノカ一人を潰すために作られたルール。校長は平民差別などどうでもいいと言う人物なのであるが、問題は教師の方である。
びっくりするくらい実力主義であるシャードと、生徒なら全員平等!的な思考のレンゲ以外は、スターと同じかそれ以上の平民嫌いである。もし仮に今回の大会で平民生まれであるヤノカが選抜メンバーに選ばれれば、選ばれなかった奴らはそれ以下と言う事になってしまう。
それは困る。なので、かなり無理を通して今回のクソルールを選ばせたのである。腐ってんな……。と思うかもだが、事実そういうのはザラに平然と行われている。
「なんだそりゃ……。スターどうやっても負けられねぇじゃんそんなの」
「ですわね。そもそも普通のルールであっても負ける気はありませんが!」
「そういうところだぞ……。お前」
若干呆れが入るフィル。参加しない面々は文句を言う理由もないので何も言わないが、恐らく狙われているヤノカも特に声を上げない。フィルはヤノカは強いからな……。と確信していたが。
「まぁお前より強い奴いないしな。と言うかそもそもなんで今回だけそんなルールに?普段はもっとこう……、トーナメントで決めてたはずだが」
「今回は違うんです!正直今回職員会議で無理やり決められたので、納得はしていませんが、仕方ないとあきらめてください」
「ひどいな。まぁ要するに……全員ぶちのめせばいいのだろう!?」
あんまりにも雑に結論を出すジャンガルグ。しかし実際それで大体何とかなるので、今回のルールはだいぶ酷い。
しかし、数さえいればそれで確定してしまうので、仕方なく受け入れるしかない。とりあえず明日に向け今日は眠ることにする。どうせ今日は授業もない、コンディションを整える日なのだから。
「さて、どうするこれから?」
「とりあえず飯にしない?」
「そりゃいいな。よし飯に行く奴、今日は俺のおごりだぞ!」
とりあえず誘ってみると、四人くらい来た。
「……じゃ行く」
「我も行くぞ!」
「なら俺も付いていこうかな」
「お兄ちゃんが行くなら私も行く!」
なおこの中で参加するメンバーは三人だけである。ほぼほぼ暇を持て余している奴らばかり。あとはとりあえず大丈夫そうな奴ら。
「それでどこに行く?」
「……ノープランか」
「とりあえず近くのファミレスでよくない?」
行き当たりばったりの極みである。と言う訳でリンの言う通り、近くのファミレスで夜食にすることにした。案外賑わっているファミレスの中で、適当な席に座る一行。
「で、何喰う?」
「別にそれはいいんだけどさ、大丈夫?明日」
「今聞くことか?大丈夫だよ俺らは。むしろ気になるのはビゾンとジャンの二人の方だよ。あいつら勝てる見込みでもあるんか?」
フィルは、シンプルに気になっていた。ジャンガルグはともかく、ビゾンは勝ち目がないだろうと思っていた。確かにバトルロイヤルならともかく、一対一でほぼ勝ち目の薄い我流魔法。リルは一つの結論を出していた。
「ジャンはともかく……ビゾンはヤノカに嫌がらせしたいだけじゃない?」
「だよなぁ。絶対勝つ気がないだろ。と言う訳でヤノカ。気を付けろよ」
「えっ僕?大丈夫だよ、そもそもビゾンがやってきたとして、まず負けないと思うし」
あっさりと言い放つヤノカ。そういえば最初の時に既に、ボコボコにしていたなぁと思い出す。つまりヤノカにとって、ビゾンと言う奴はしょうもない相手であると認識していたのである。
「大丈夫でしょ」
「そうだな……。そういえばそうだったわ。んで飯どうする?」
「とりあえず美味しそうな奴でいいよ」
「……そういうのが一番厄介なんだよなぁ。自分で決めなさい飯」
まぁそんな事もありながら、ファミレスで一行は雑談をしながら飯を堪能するのであった。
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