第十八話『捨てるゴミ、拾うゴミ、どうでもいいゴミ』
「今日だけでなんか検挙率二倍以上に上がったんですけど?」
「だな。それも半分以上が我流魔法を使っての犯行……。その中には貴族達が使えなくなった我流魔法も混じっているとのことだ。……。これは早々にどうにかしなければならない」
「しかし五課の二人が殺されたんだぞ!?由々しき問題だぞ!」
警察の『第八課』。現在貴族の中で我流魔法が使えなくなると言う事件が起きており、その原因を探すために作られた課である。その為現在町の小さな事件を捕まえる警察が減っているのだ。
「実際問題どうする?何もわかっていないんだぞ、我流魔法が使えなくなる事も、今回の事件に関してもだ!」
「……問題なのは、我流魔法の方だ。なぜ平民産まれのチンピラ風情が使えるのだ?」
「それはそうだ。明らかに異常だぞこれは」
しかし、第五課の二人が殺されたことで、警察の内部はパニックになっていた。恐らくだが我流魔法を奪う我流魔法を使える人間がいる。そういう判断が下っていた。
「とりあえず一度、この町にいる全ての人間の我流魔法リストをあげろ!それと……。この件は極秘任務だ。誰にも悟られるな!」
「「「「了解!」」」」
しかし、この町で生まれたなら我流魔法のリストがあるはずだし、少なくともそんな我流魔法があると言う事実は一つもない。これが厄介さをとても上げていた。
「しかしリストをあげろと言われても……。たぶん、出ないと思うぞ」
「だよなぁ。そんな我流魔法の持ち主はいない。……いたとしても、分かるか?」
警察がそうこうしている最中、老人から我流魔法をもらったチンピラ達は、着々と犯行を続けていた。武器やクロクに恨みのある人物を集め、今や大所帯である。
「お前ら!いろいろあったよなぁ?クロクの野郎に散々邪魔されたよなぁ!?」
「全くだ!俺はスリをしようとしてあの野郎に捕まった!」
「あたしなんか詐欺をしようとしたら平気な顔をしてバラされたわよ!」
「俺はクロクの野郎に捕まって半年ムショにぶち込まれちまったよ!ちょっとガキ捕まえて拉致して金取ろうとしただけなのによぉ?!」
恨み言をつらつらと言っていく犯罪者どもだが、どれもこれも自業自得。しかしそう言って伝わるというのなら、犯罪者などになっていないのである。
「クロクの野郎を呼び寄せ俺らで囲んで叩く!いくらクロクの野郎が強いからって言って、大人数で殴れば完全に勝てんだよなぁ!」
そしてヤノカがパトロールに出ると、さっそく助けを呼ぶ声が。すぐさま現行すると、罠であることを察した。既に何人かに囲まれている。
「罠か」
「ぶっ殺す!」「死ね!」
「あぁ。この前捕まえた犯罪者共か」
一般人ならともかく、犯罪者相手にクロクが容赦する理由がない。羽を分裂させ四方八方に吹き飛ばす。そして命中するや否や、再び一点に集中させ衝突させる。
「とりあえず眠っててもらうよ」
基本的に顎や首などを狙い、遠慮なく気絶させていく。既に数十人がクロクの足元に倒れている。手も足も出ないとはこのことであろう。
「いいのか?あいつら負けてるけど」
「どうせ負け犬だし……。そもそもあいつらで倒せるなんざ思ってねぇし。よしやれ」
ここでチンピラ共の一人が我流魔法を発動する。名前は『
「あいよー」
チンピラをボコボコにし続けているクロク。吹っ飛んできた何かを防いだ後、敵意のある奴がいなくなったのを確認してから学園へと戻る。しばらく場所を探していたチンピラ達だったが、いきなり反応が消えたことに驚愕する。
「あっ?!消えたんだけどあいつの反応!」
「物質そのものが消えなけりゃ反応が消えることはねぇが……。と言う事はあれはずっと出せるわけじゃねぇ、と。時間経過からして……。おおよそ五分か。……なら付け入るスキはいくらでもあるなぁおい!」
「でも何にもわかってないんだけどー。我流魔法使い損なんですけどー」
「るっせぇ。少なくとも奴の弱点はわかったんだ、ならとは距離から計算すりゃいい……向こうの学園が怪しいなぁ!」
「いや学園は不味いんじゃね?クロクより前に、あんたシャードってやつに負けて刑務所行きになってたよな?」
「あいつ先公になりやがったのかよ……。チッ、忌々しい」
悪態をつくリーダーの男。そう、何を隠そうこの男、一度ならず二度までも捕まっているのである。一度目はおとなしく刑務所にいたが、二度目の時に刑務所を脱走、そして今に至るのである。
「策を練らなけりゃ今度こそ殺されるな……。俺は今死刑執行対象だ、バレたら問答無用で殺されちまうぜ。……よし時期を待とう。少なくともあの餓鬼どもに負ける訳がねぇからな」
そしてチンピラ達は路地裏に消えるのであった。
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