第十七話『ダイジェストでお送りします』


「とりあえず第二試合行くぞー」


「始まるなぁ……。ところでどう見る?」


「……あ、俺か。スマンちょっと今考えててだな。ところでなんかリジュとスターの二人がなんか言い争ってたけどなんかあったか?」


「さぁ?僕が来た時になんか色々と言ってたけど……。要するに僕と友達になりたかったんだってさ」


 盛大に勘違いをしているヤノカ。とは言え要約するとそうなってしまうので仕方がない。色々昔にあった事を言いふらす程、ヤノカはひどい奴では無いのだ。


「で、そのリジュはどこ行ったんだ?」


「保険室。気分悪くしちゃったらしくて……」


「そうか。ところで……」


「ねぇねぇさっきの凄かったね!」


 と、フィルとヤノカが話し合っていると、間にリンが混ざってくる。考えてみれば兄が今戦っているので、恐らく暇なのであろう。その兄はと言うと、現在大暴れ中である。


『我、怒人也!』


『おぉ……宇宙と交信したようですね……。では私も一つ』


 ガルが顔に仮面をつけると、性格が豹変したかのように暴れまわる。ガルの我流魔法、名前は『変化する顔面マスク!』。仮面を付けると身体能力から性格まで全部変わってしまうと言うのだ。


「そうかな?」


「そうだよ!ところでクロクに似てるねその能力」


「そ、そうかなぁ?ち、違うと思うんだけどなぁ」


「うーん。……確かに違うかも。クロクの方はなんか羽が生えてるって話だし……」


 その一言に、スターが飛んでくる。そしてお得意の長文高速詠唱をおっぱじめる。


「訂正していただけますかリン。クロク様の背中についているのは我流魔法で作られた壊れぬ羽『黒鳥風見ブラックフェザー』!総勢五つの武器を使いこなし悪人を退治する!それがクロク様ですお間違え無いよう」


「う、うん……。凄い剣幕だね。じゃ、じゃぁ私はこれで……」


「待ちなさい?他四つを解説していませんわ?当然聞いていきますわよね?」


「えっ助けて」


「じゃぁ俺ら試合観戦するから……」


「頑張ってね……」


 これに関わるのは不味いと二人が判断したのか、リンの事を即座に見捨てる。そしてそのまま『裏切り者~』と言いながら、スターに引きずられていくのであった。


「と言うかお前クロクの時に使ってる武器名前つけてんの?」


「前に名前聞かれたことあって……。夢を壊すのも嫌だからとりあえず言ってみたらなんか凄いことになってた」


 ちなみにそれ以外には

蜻蛉微眼ナイトアイ

灰狼爪牙ツインウルフ

亀甲牢タートルプリズム

人乃腕ヒトノウデ

 と言う名前を付けている。意味は無く、とりあえず語感で名前を付けている。


「……ちなみに、使ったことは?」


「最初に言った武器以外使ったことすらないよ。流石に厳しくなったら使うけど」


 試合はと言うと、ガルがいいところまで行ったのだが、ヒョウが『完全氷結パーフェクトフリーズ』で散々冷やしていた空気を、エンガが『爆熱赤光フレアボルテージ』爆破した結果、吹っ飛んで気絶。しかしアルカが何とかワープ能力『彗星ハネムーン』でボタンを押したので勝利したのだが……。


「あの二人強くね?」


「だな。とはいえ最後の最後でしくじったな。最後に喧嘩しなけりゃ、原理のわからんワープでボタンを取られることなかっただろうし」


 お次はフィル&リンの出番。スターに絡まれていたリンだが、何とか逃げ出し配置に着く。その後帰ってきたガルは、少ししょんぼりしながらこちらによって来る。


「出番だからもう行くね!いいね!」


「あっ待ちなさい!まだまだありますわよ!」


 この調子で喋られては日が暮れる。多少涙目になりながらも、とりあえずフィルと共にくじを引く。結果は明らかにどっちも攻めって感じの我流魔法なのに、指定されたのは守り側。まぁ守るにしても割と応用が利く能力ナノで問題なし。


「はー……。負けたなぁ」


「逃げてれば直撃はなかったと思うぞ?」


「だよなぁ。あの仮面被ると理性減るんだよなぁ。と言うかさっきの戦い見てたぞ。やっぱクロクと似てるな」


「ま、まぁ。よく言われるよ。うん。でもほら、根本が違うから……」


 相変わらず誤魔化すのが下手糞なヤノカだが、ガルはそれ程詮索してこなかった。さて試合状況はと言うと、本当に秒殺って感じであった。考えてみれば十分耐久するでもなく、相手をぶちのめせば勝ちな事には変わりないと気が付いたフィル、そして『盤面戦術タクティクス』と言う我流魔法を持ったリンの手により、速攻を仕掛けられた二人が勝てる訳も無く、そのまま敗退。


「圧倒的だなぁ」


 一応二人の能力を説明すると、それぞれナルが『究極最終超絶悶絶激動極極圧裂法ラスターカノン』トリカが『熱源保持アチアチ』である。


「まぁな。むしろ攻め側じゃなくてよかったかもしれん!ボタンを考えないで戦うことが出来たしな!」


「しかしリンの我流魔法強いよな、室内限定だっけ?」


「そうだよ!正しくは私が『盤上』って決めた場所の中なら本当に無敵だよ!」


「俺は可愛くて強い妹を持てて幸せだよ」


 四人でわちゃわちゃしているところに、気絶から目覚めたリジュが登場。あの戦いぶりには流石に皆も目を見張るところがあったのか、割と褒められているようであった。


「凄かったじゃん!ところで何か叫んでたけど何言ってたの?」


「確かに。あの場所だけなぜか映像が乱れてたからな。音声もほぼ出ていなかったし」


「そ、そうか……。特に重要でもない事だ。気にしないでくれ!」


 聞いていたスターが言う気が無し、んでもってリジュが何かを言うことは無い。つまり三階であった事を誰も知ることは無い、と言う事なのである。


「ところで最終試合みたいだねぇ」


「そうだな。と言っても勝負は目に見えてるんだが」


 最終戦はジャンガルグとロックペアが守り、リルとボルトが攻めとなった。対戦内容だけで言えば、序盤はジャンガルグの我流魔法、『膨張物質デミ・パンク』をそこらの壁や床に仕掛け、爆発させる事で有利に立ち回っていたが、リルが『点・線・面リ・ルート』により正確にジャンガルグを撃ち抜いたこと、そしてボルトが『蓄電器コンデンサ』で、床や天井に空いた穴から電撃を通したことで気絶。


 はっきり言って、圧倒していた。超が付くほどの突然変異と、シンプルに名家の生まれである二人が組んだのだ、よっぽど強くなければ勝てない。


「よし。とりあえずお前らの我流魔法は見せてもらった。んじゃ今日の授業はここまでだ。解散」


 最後にはシャードが適当に場を終わらせ、帰ることになった。

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