第十三話『で、お前らの我流魔法って何?』


「実技授業って何するの?」


「さぁ?とりあえず行くぞ。なんか面倒な感じがするけどな……」


 そして十六人が向かった先は、何やら急に作られたであろう三階建ての建物。いったいここで何をするのかと身構えていると、そんな皆の前にシャードが現れる。


「で。何をするか気になってるだろうから言うが……。とりあえずお前ら、他人の我流魔法と組んで戦ってもらう」


「……はぁ」


「なぜ?」


「うるさい。いいからやれ。ルールは解説する」


 今回の模擬訓練。シンプルな二対二の戦いである。と言っても完全ランダムで味方が決まり、更に戦う相手もランダムであるとの事。これには何人かが苦言を呈する。


「なぁ、戦いたくない奴もいると思うんだが?」


「良い質問だなジャンガルグ。その前に聞いておくが、この中で完全に戦えない者はいるか?」


 シャードのその質問には、誰も手を上げない。この場にいる以上、それなりの強さを最初に見せており、その上で戦えないと言うのは無理な話なのである。


「そういう事だ。ある程度戦える奴を集めたんだからな。別に勝とうが負けようがそこは評価点じゃない。ある程度綿密に我流魔法の詳細を知っておこうと思ってな」


「……」


「それでどのように我が協力者を決めるのだ?」


「くじ引き。引け」


 そう言われ渡されたのは無駄に装飾された箱。恐らくシャード本人が作った物である。そして各々数字が決まり、結果はこうである。


 1『スターロード:ビゾン』

「はぁ。まぁ平民産まれが仲間でなくてよかったですわ」


「私もー。平民産まれとかといっしょにしてほしくないしー」


 2『リジュ:ヤノカ』

「うむ!よろしく頼むぞ我が下僕!」


「あっ。よろしくね」


 3『ジャンガルグ:ロック』

「俺がお前の相方か?」


「そうだ。せいぜいついて来いよ」


 4『フィルガ:リン』

「よろしく!」


「お兄ちゃんじゃないのが残念ですけど頑張ります!」


 5『ガル:アルカ』

「あなたも宇宙と一つになりましょう!」


「それは遠慮しとくわ」


 6『トリカ:ナル』

「もう地味なんて言わせない!」


「そうなんだ。頑張ってね」「いや一緒に頑張ろう!?」


 7『ボルト:リル』

「ま。お手柔らかに?」


「ん」


 8『ヒョウ:エンガ』

「ちょっと!なんでこいつと一緒なのよ!?」


「うるさい!俺が一番文句言いたいわ!」


「よーし決まったな。じゃ次に誰対誰かを決めるからもう一回引け」


 対戦相手一覧


 1『1VS2』


 2『8VS5』


 3『6VS4』


 4『3VS7』


「抽選の結果こうなった。とりあえずお前ら一番の奴まず配置に付け。さっさとやれ」


「一々うるさいですわね……。まぁこうしてムカつく平民産まれを合法的に殴れるので文句はありませんわ」


「なお殺した場合はそいつも死んでもらう」


「流石にしないと思いますけど……?」


「ではルール説明をする。簡単に言うとだな、お前らには『守り』と『攻め』に分かれて戦ってもらう。攻める方はこのボタンを守れば勝ち、ただし壊れやすいんで気を付けろ。守る方は制限時間いっぱいこのボタンを守れば勝ち。なお壊した場合は明確に壊した方の負けになる」


 そして、今回はヤノカとリジュペアが攻め側になった。とりあえず作戦会議をする事にした。制限時間はそれぞれ十分、ロスタイムなどもあるかもしれない。そんな感じ。


「それで貴様の異能は何か答えると良いぞ!」


「僕の能力はこの黒い剣みたいな奴を作る能力。それ以外にもそこそこ作れるけど、とりあえず形は決まってる」


「そうか!我の異能は『絶対なる命令』!」


「あれ前に言ってた名前と違くない?」


「……と、とにかく目を見せれば相手を操ることが出来る!我の異能はそういう物だ!」


 ここで一つ問題が発生する。どうあってもこの二人、と言うかヤノカはともかくリジュが弱すぎる。接敵すれば強いのだろうが、前提条件が結構厳しすぎる問題である。


「一応、あっちに発動条件がバレてない事だけが救いだね」


「そ、そうだな!して、どうしてあ奴らを倒す?」


「正直、スターに本気でボタンを守られたらこっちはなすすべがないんだよね。と言う訳でリジュの能力……異能でいい?」


「そ、そうだ!我の異能で星空の道を操ればいいのだな!」


「そういう事。とりあえずビゾンの方は僕が何とかするから、リジュにはスターの方を……お願いしていい?」


「任せろ下僕!この我が完璧にこなして見せようではないか!」


 自信満々に言い放つリジュ。と言う訳で早速訓練開始。まず重要なのはビゾンを止める事である。彼女の能力は『疑似屍スリラー』。ヤノカは試験時に少し見たのだが、恐らくゾンビを死体も無いのに作って操る能力だと判断した。


「あの物量じゃ絶対ロクな事にならないよ。スターは多分慢心してると思うし、危険度で言えばビゾンの方がヤバい」


「そ、そうなのか?我からすればあの程度……」


「でもリジュの異能は目を見なきゃだから、大量に出てくるゾンビとは相性悪いよ」


「そ、そうだな。ではビゾンの方はよろしく頼むぞ下僕!我は我の仕事をキチッとこなしておく!」


 そう言い階段を上がっていくリジュ。それを追うようにやって来たのはビゾン。


「悪いけどさ。僕を倒さないと上には行けないよ」


「らしいねぇ。こっちとしても合法的にお前を殴れる機会が出来て嬉しい限りだよ!」

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