第十一話『校長先生と警察の奴ら』


「私が校長の『カタガネ・トラン』です」


 校長先生がやってくる。校長は変な奴であり、必ず右目を隠した服を着ているのだ。この学校には一学年に三クラスあり、全ての生徒が現在集まってきていた。


「さて。校長の話は長いと言うので止めます。では次に警察から二人が来ています。お話聞いてもらいましょうね」


「……。今ので入りにくくなってんですけど。まぁいいや、どうも説明された『フェルメ・ルルル』です。そしてこちらが『アナゥ・ガルバニア』」


「えー。最近我流魔法を使った犯罪が横行しています。ここにはやってこないとは思いますが、危険なので注意だけしておいてください」


「はい。と言う訳で解散!今日はもう寮に帰っていいですよ」


 通常こういう話は長くなるのが自然だが、もうほぼ数分で終了してしまう。校長先生も昔長話で損をしている為、とっとと切り上げた方がいいと知っているのだ。


「終わったな」


「だね。フィルのお父さんから聞いてた話と違うね」


「昔は長話が好きって聞いてたけどなぁ」


 とは言え終わったのは事実なので、それぞれ寮室に向かう。流石に寮室が同じと言う訳では無かったが、だいぶ近い部屋になった。部屋は至って普通のアパートと言う感じ。違うのは男女兼用であり、基本の部屋の奥に二つあるベッドルームと、共用のキッチンがあると言った感じ。


「んじゃまた」


「またね」


 そしてヤノカが部屋に入ると、そこにいたのはリルであった。何も言うことはないが、ただもちもちと食事をしていた。ヤノカが部屋に入ると流石にそっちの方向を見たが、少し見た後で興味を失いまたもちもちする作業に入る。


「あー……。こんにちは?」


「……」


 聞いてた話通り、全然話相手にならない。と言うか話すことが無いから仕方ないと言う感じ。ベッドルームは別々にあるので寝る時は問題なし。しかし年頃の男女を同じ部屋にするのはどうかと思うヤノカ。


「……」


「さてどうしようか……」


「……ねぇ」


 もう寝てしまおうか?と考えていると、ふとリルが話しかけてくる。なんだとその方向を向いてみると、どうやらもちもちしている食料が無くなったようである。


「……なんかない?」


「買ってくる?確か店くらいなら敷地内にあったはずだし」


「……はい」


 だいぶ図々しい感じだが、買ってくるかと聞かれると無言で金を渡すリル。どうやらこれで買ってこいとの事。同居人なので仲良くなるのも悪くないと、それを持って商店に向かうヤノカ。


「しかし大きいよなぁここ……。店までずいぶん遠いや」


 飛んでいくか?と思ったが、素顔で飛ぼうものならすぐにバレてしまうだろう。やや遠いが歩いていく事に決めたヤノカ。すると遠くに何かを書いているアルカの姿が。


「何やってるのー!?」


「ん?おぉ、同じクラスの人間か。実は今私はUFOを呼ぼうと思っているのだ。キミもどうだい?」


「あっ、遠慮しておくね」


「そうか。この世界の大宇宙と共になろうではないか……」


 頭おかしいことを言っているアルカに対し、ヤノカはやんわりと拒絶する。一応この世界にも星々のようなモノはあるが、この世界にはデカい月が三つあるだけである。


「今買い出し中ですんで……」


「そうか。では強制しない。私は私のやることをやる」


 そう言うと再び謎の作業に戻るアルカ。変な奴もいるなぁとか思ってしまうヤノカ。何とか売店に入ると、そこには店員はおらず、ただ一枚『ここにお金を入れてね』とだけ書かれた紙が。


「商品はあるから、自分で買っていけって事なのかな?」


 大丈夫?と言いたくなるシステムだが、特に文句を言う理由が無いので、早速食料を籠に入れその分のお金を箱の中に入れる。その後商品を持って帰る。


「何と言うか……雑だなぁ」


 部屋に戻ると、ソファで寝ているリルの姿が。無理やり起こすのもアレなので、しばらく放置しておく。冷蔵庫に食料を入れ、ヤノカは隣の部屋に。向かって右がここがフィルの部屋である。


「そういえばフィルの部屋に誰もいないね」


「人数的に俺だけ余ったんだよなぁ……。十六人なのに!」


「まぁいいんじゃない?それにこれは都合がいいし」


「あー……。帰ってくる場所だな?お前クロクやるのか学校来ても……。まぁいいぞ。どうせ止めてもお前はやるだろうし」


 遅い時間ではないが、色々考えると今パトロールに行くのが一番いいと判断したヤノカ。早速仮面を付けると飛び去っていく。


「……大丈夫かなぁ……?」


 警察から犯罪者が増えていると聞き、あれ以上に増えるのか?と言う困惑と、もしかしたら何か厄介なことが起きているのかもしれないと言う疑惑。その感情が増えていくフィル。


「まぁ大丈夫だろう」


 その慢心がある事件を引き起こすことになった。

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