第七話『ゴールを決めろ!』
「さて。今からお前らには試験を受けてもらう」
「あの……外に出る意味は……?」
「流石に室内でドンパチする訳にはいかんのでな。さてルールは一つ。俺の分身をゴールに叩き込め」
相変わらず影人間に自分を運ばせながら、校庭に出るとゴールポストの前に現れキーパーの格好をする影人間。ここまで見れば大体シャードの我流魔法がなんなのかはわかりそうなものである。
「とりあえず言っておくが……俺の我流魔法は『
そう言い放ち、シャードは寝る。さてどうするかと考えていると、一人の男が挑戦しに向かった。なんというか強そうな男であった。
「ふん。何がゴールに叩き込んだらだ、一分もかからねぇよ!」
そう言うと、その男は両腕にエネルギーを溜める。彼の我流魔法は『
しかし、影人間はそれを見るや否や男の体を殴り飛ばし、そのままゴールに叩きつける。よく見ると、フィールドには十一人の影人間が立っていた。
「……は?」
「サッカーだからな。はい次」
「っふざけんじゃねぇよ!?」
流石にこれにはキレる男。しかし影人間がそれを許さない。頭を掴むとそのまま地面に叩きつける。何度も。何度も何度も。そして男が意識を失ったのを確認し、適当にその辺に投げ捨てる。
「私は去年、無駄に人間をこの学園に入学させてしまってなぁ。才能ナシと判断したから全員退学させた。くだらない学力の試験などやる必要なし。私が判断する」
「あ……。あが……」
「じゃ……次」
「マジ?ヤバいじゃん」
「まぁ十一人をどうにかしてゴールに叩き込めばいいってだけだろ?何とかなるだろ」
「あの程度で怒るとは……。平民産まれより無様ですわね」
その後も何人か挑戦するが、ことごとく失敗する受験生達。しかしここで自信満々に一人が挑戦しに行った。今度はかなり小柄な少女。言い方は悪いけど弱そうであった。
「我の名前は『リジュ・メ・ナ』!リジュと呼んで貰おうか!」
「いいから行け」
「うむ!では行かせてもらおうとする!」
なんか変なしゃべり方をする女であった。オレンジ色の無駄に艶が良い髪をしている、無駄に顔がいい女。早速フィールドに入ると、右目に付けている眼帯を外し、目を見開き何かを叫び出す。
「『我が支配下に飲まれよ!
静寂に包まれる校庭。が、どうやらその効力は絶大なようで、実際影人間達が完全にひれ伏している。どうやらアレが我流魔法に値するらしい。催眠魔法と思われる。
「ハイ合格。次」
「適当だなぁ……。じゃ俺行くわ」
合格者の一人が出たところで、遂にフィルが試験を受けに行く。凄い自信満々である。しかしその実力を知らない奴らは、前評判だけを見て若干バカにしている。
「あのボンボンが?」
「行けるとは思えないけどー」
「前が行けたからって行ける訳じゃないだろw」
「うるさいですわね……。そういうのは平民産まれだけにしておきなさい」
「キミは何?僕の事を侮辱するだけの機械か何か?」
「いえ。しかし事実ですわ」
フィールドに出ると、早速ボールを手に取る。誰も蹴って入れろなどと言われていないし、さっきの奴も実際最終的に手で入れてたし。我流魔法を発動し、すぐに肉体強度魔法も追加で発動する。
「せー……。のっ!」
二重の身体強化を使ったフィルの体は、メチャメチャ強い肉体になっている。その状態で投げられるボールがどれほどの威力になるかくらい、大体察することはできるだろう。
「へぇ」
「……。え?」
「あれ?あいつ身体強化とか言う地味な奴じゃなかったっけ?」
「何あれ」
「よぉ。ゴール決めて来たぜ!」
「やっぱ十一人全員ぶっ飛ばすを見ると気持ちいいね!」
ボールを止めようとした一影人間がボールもろとも吹っ飛び、それを止めようとした影人間が吹っ飛び……。と、影人間は『ボールを止める』事と『対戦相手をゴールにぶち込む』事のみ指示されている結果、全員がボールを止めに行き、全員吹っ飛ばされていた。
「合格。そういやさっきの奴に名前聞いてなかったな……。まぁ後で聞けばいいか。で名前は?」
「フィルガだ。フィルで頼む」
「あいよ。……次からフルネームで言えよ。じゃ次。行け」
その後も何人かは合格するが、最終的にヤノカ試験前に残ったのはたったの十数人。他の奴らはボールを入れられないか、逆にゴールにぶち込まれていた。
「流石に低レベルですわね」
と、ここで今まで動かなかったスターが動く。ボールの元まで向かうと、ボールをバリアで囲い、そのまま真っすぐゴールに向かわせる。影人間は全く歯が立たない。そのままゴミクズのように弾き飛ばされる。
「終了ですわ」
開始十秒足らずで、即終了。流石に名家の産まれらしく、強い能力らしい。聞いていた話以上の強さである。
「……やっぱああ言うだけの事はあるよな」
「レベル違うよね、根本から……」
「ポラリス家のお嬢か。じゃ最後」
「……あっ僕か」
ここまでやってきて、ついに最後の出番がやってくるヤノカ。だが少しだけ問題がある。それはこのヤノカが提出した我流魔法について。と言うのも、ここに来る前にフィルと話していたのだ。
『シンプルに、バレる可能性あるからお前はあまり能力を使いこなすな』
『やっぱり僕がクロクだってバレると……不味い?』
『非常にな』
なので、現状ヤノカは本気を出せない状況にあると言う訳なのだ。
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