第六話『試験当日と面接当日』
「試験クソだったな……」
「うん……」
あれから一週間。二人は訓練を繰り返し、相当強くなっていた。まぁそれはそうと今回の試験は異様な雰囲気を発していた。と言うのもなぜか今回は試験を受けている者が多く、少なく見積もっても百人はいるのだ。
「自分で採点してみたけどとりあえず大丈夫そうって感じ。……んで面接か」
「そう。まぁどうせちょっと話して終わりだと思うよ?」
「へー。あっ俺呼ばれたから行ってくるわ」
試験自体は簡単な物であり、なおかつカンニング可能と言う事もあり、ほぼ全員が余裕で合格しているだろう。しかしそこではない、問題は恐らくここからである。
「いるんだよね……。この中に恐ろしい人が」
この先の面接。ここが問題点になるのだろう。先ほどから誰も戻ってきていないのが本当に怖い。だがその程度で怯えていては、何をすることも出来ないので、本場に向けて心を落ち着ける。
「ヤノカさん」
「はい」
部屋を開けると、そこには三人の面接官ともう一人、なぜかいるスターの姿が。なぜ?と言いたくなったが、スッ……と席に案内され、とりあえず着席する事に。
「あの……」
「えー……。平民産まれ……ですか?」
「あっ、はい。そうです」
「やはり平民産まれですわね。見た目から平民産まれのような感じがにじみ出ていますわ」
いきなり毒を飛ばしてくるスター。しかし一回言った程度ではそれは止まらず、どんどん口が悪くなっていく。
「は、はぁ……」
「そもそも、平民産まれが本当に我流魔法を持っているのか、と言うのも疑問ですわ。証拠を見せなさい証拠を」
「この通りです」
少し我流魔法を見せると、忌々しそうにそれを見た後また毒を吐く。我流魔法を持っているなら、誰だろうが一切文句も言えないせいである。
「ふぅん。一応我流魔法を持っているようですわね。ですがだからと言って、平民産まれである事とは何の関係もありませんわ」
「……」
我流魔法を見せてなお、こちらの事をボロクソに言ってくるスター。どうやらよっぽど嫌いなようだ。とは言え、流石に試験官も気分を害したのか、部屋から出す。
「……」
「はぁ……。すまないね。彼女も入学するはずなのだが、なぜかキミの試験の様子を見たいと言い出してね」
「大丈夫ですよ。こう言われるのは慣れてますし」
割と平民産まれと言うだけでボロクソに言われているので、このくらいの暴言では眉一つ動かさないヤノカ。それはそうと、面接官は何事もなかったかのように質問を繰り出す。
「そうか。さて面接試験だが……。一つだけ聞こう。君は何の為に学園に入りたいと思っているのだ?」
「何の為に……。ですか。単に学ぶため……。ではいけませんか?」
「それでも問題は無いが……。何かしたいことがあるか、だ」
「……」
やりたいこと。ヤノカは少しだけ目を伏せ考え、自分のやりたいことを堂々と言い放つ。
「僕は、誰かを助けるために何かをしたいと思っています。……。ここで学ぶことが出来れば、何かの役に立つかもしれないと思ったからです」
「……ずいぶん、ふんわりとしたやりたいことだねぇ」
「そうですね。でも、僕は平民産まれで、本当は村の皆と暮らしたかったけど……。僕はこの力を、誰かの為に使わなきゃならないんです。それが我流魔法を得た人間の、やるべきことだと思うんです」
「そうか……。とりあえず奥の部屋に進んでくれ」
これで面接は終わりらしい。言われるまま奥の部屋に進む。しばらく歩いていると、やたらと人のいる部屋に案内される。そこにはスターやフィルの姿があった。
「おっヤノカ!お前もこっちに来たか!」
「そうだね!で、何を聞かれた?」
「俺か?なんか『なぜグレたのか』を聞かれたな」
「へー。僕はなんかこの学園に入って何したいか聞かれたよ」
何か見られているような、よくわからない感覚に襲われるが、そこが重要と言う訳ではない。とりあえず雑談しながら誰かが来るのを待つ二人。そんな最中、スターが話しかけてくる。
「あら。一応合格したようですわねあなたは」
「まぁ。そんな難しいって感じじゃなかったけど……」
「まぁどうでもいいですわ。ここまでは誰でも来れるところですので」
「……え?」
と言った瞬間、ドアが開かれ誰かが入ってくる。誰だとドアの方を見ると、そこにはなんと形容すればいいか分からない光景があった。具体例を挙げると、影人間が教師を寝袋事担ぎ上げ、しかもその教師と言うのは寝てると言うのだから言いにくい。
「あー……。どうやら今年はマシレベルまでいるみたいだなぁおい」
「そういえばオヤジが言ってた教師ってのが……あいつだ」
「っと。言い忘れたが……。俺の名前は『シャード・ウカゲ・デル』。シャードと呼べ。さて試験を開始するからお前ら外に出ろ」
そんな教師、シャードはこの部屋の中にいる五十人を校庭に出るように指示する。そして外に出るや否や、そこでシャードに告げられたのはこの学園に入る条件であった。
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