第五話『試験!危険!怪事件!?』
高校入学試験。当然だがこの世界にも当たり前に存在している。生まれて初めてまともに勉強を始めたヤノカだが、既にフィルより賢くなっていた。その辺は才能なのだろう。と言うより、フィルに覚える気が無いのかもしれないが。
「ねぇ教えて?」
「良いよ。で、何がわかんないの?」
「まぁここからここまで……」
「その辺はね……」
受験勉強を始めた二人、既にヤノカは問題ないレベルにまで成長しているが、フィルの方が問題になっている。具体的に言えば、ギリ合格出来ないレベルの学力と言う感じなのだ。
「うがぁーっ!頭がおかしくなる!」
「まぁまぁ。とりあえずポーション生成は一律で覚えておくと分かりやすいよ?」
「そうか……。ただ『毒ポーション』と『猛毒ポーション』の違い微妙すぎん?」
「だね……。使う材料は同じなのに、煮込む時間が一分違うだけで効力がこれだけ変わるから面白いよね!」
「面白い訳無いよー!狂っちゃいそうだよーっ!」
とことん勉強がダメダメなフィルと、勉強はできるが教える事が全然ダメなヤノカのペア。とりあえずしばらくは真面目に勉強していたのだが、最終的に模擬戦闘をする事になった。
「ねぇ、現実逃避止めなよ」
「だって難しいんだよ!体を動かす方が楽しいんだよぉ!」
「やぁ息子よ。朗報だ」
と、そんなときフィル父が訓練所にやってきた。相変わらず顔は険しい表情であるが、顔にはどこか余裕が見える。そんなフィル父が持って来た朗報を聞くために、一旦休憩を挟む二人。
「あっオヤジ!なんだよ朗報って?」
「今回の試験では、『カンニング』が許可される」
「え?」
それは、疑問の出るような答えであった。いくら何でもそれは無いだろうと言いたくなる答え。『カンニング』。答えを見ようが何をしようが問題ないと言う事だ。
「ちょっと待って?どういう事?」
「それがだな息子よ。我々が行こうとしている高校は、我流魔法を使えるという前提がある。つまり学力やらなにやらは然程重要では無いのだ。しかし気を付けろ息子よ。後ヤノカも。簡潔に言えばだな、去年一クラス全ての生徒が退学させられている」
「もしかして……勉強してる余裕……ない?」
「あぁ」
その答えを聞き、更に問題が増えた。とは言えやる事さえ知っていれば何とかなると、早速訓練を再開するのであった。試験までは一週間、ボサッとしている暇はなさそうである。
「まぁ勉強しなくても何とかなりそうならいいか!んじゃ早速基礎訓練からだ!」
「そういう前向きな所、嫌いじゃないよ!」
一方その頃。町ではある奇妙な事件が起きていた。それは約二か月ほど前から起きていた事件。何故か表に出ていないし、当人と警察以外は知らない情報。
それは貴族達の我流魔法が、突如として使えなくなると言う物である。初めは何かあったのかと思われたが、現在は病気か何かだろうという結論が出ている。
「けど、この二か月で十人もの我流魔法が使えなくなってるんですよねぇ……」
「病気か?……それにしては体に異常がある訳ではないが」
唯一。その事件を奇妙だと思った男達がいる。一人は『フェルメ・ルルル』、我流魔法は『
「もしかして……、我流魔法を消す我流魔法が産まれたんじゃない?」
「ありそうだな。しかし……、少なくとも町にそんな我流魔法を持った奴はいない。外から来た奴と言うのも考えにくい」
とは言え、やはり然程重要であるとは思えない。仮に誰かの我流魔法だったとして、この町に来るときに我流魔法を教える必要がある為すぐ分かるはずである。
「最近新しく来たのが……、ヤノカって奴くらい」
「そいつの我流魔法は?」
「なんかね?黒い粒を決まった形に変える能力だってさ」
「じゃあ違うか……。にしてもそいつクロクに似た能力持ってんな」
「でもクロクとはだいぶ違いますよ?クロクはかなりの応用力ありますし」
「だよなぁ……」
クロクに関してはぶっちゃけ良い事しかしてないので問題なし。それより重要なのはやはり我流魔法がなくなる事件の方である。しかし情報が全くない。
「で、どうする?」
「ん~……。そうだな。まずは『ブラック・フェザー学園』の入学式に出なきゃいけない話からするか?」
割と真面目に考えていたところで、アナゥがその一言に驚愕する。今の今まで何も聞かされていなかったのだからそりゃそうである。とは言えルルルは知っていたので、当たり前だと言わんばかりに言い放つ。
「ちょっと待って。俺ら呼ばれてたっけ!?」
「え?うん……」
「まずそれから何とかしなきゃじゃんか!?とりあえず台本覚えようぜ!」
しかしそれよりも。今目の前の重要な事は、結局のところ面倒な仕事であった。
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