第43話 犬プレイしている優花も可愛いということです!

 翌日、俺は早速行動に移すことにした。


 まず俺は、別荘に行くために優花専属の運転手に会って話をすることにした。

 学校がある日の朝、俺は優花を送り届けたのち藤川家へ帰るところの運転手に話し掛けた。そして事情を説明し、放課後優花を家に送り届けたあと、俺の家に迎えに来て欲しいと頼んだ。


 別荘には優花に気取られることなく行く必要がある。一度家に帰ってしまえば、優花は運転手の行動など知るよしもない。優花を家に送ったあと運転手と共に別荘に行けば、優花に気取られずに調査ができるという算段である。

 運転手はさすがに戸惑っていた。だが優花の彼氏の頼みだからと、最終的には俺を別荘まで連れて行くことと、優花には秘密にすることを了承してくれた。


 放課後、晩ご飯の支度を終えたのち、俺は優花の運転手が運転する車に乗せられ別荘へ移動。運転手には別荘敷地内の駐車場で待機してもらい、俺は別荘に入った。


 別荘に入ってすぐ、リビング内で俺は発見した。

 以前見たときのまま残っている、複数の犬小屋を


「犬小屋は手放してなかったのか」


 続いて俺はキッチンを探索する。食器棚を確認すると、お疲れ様会のとき優花が使っていた犬用の皿が今も残っていることがわかった。


 この皿を見るとお疲れ様会のときを思い出すな。あのときは俺が作った料理を優花が犬用の皿に盛り付けて、しかも犬食いしたんだよな。犬食いにはドン引きしたが、美味しそうに料理を食べる優花の顔は可愛かったものだ。


 次に俺は優花のお腹を撫でたときに使った部屋を物色する。クローゼットを開けると、あのとき優花が着ていた露出度高めの犬コスチュームが残っていた。


「何度見ても布面積の少ない衣装だな」


 最初にこのエロいコスチュームを着た優花を見たときはびっくりしたな。

 でもまあ、優花はスタイルがいいから犬コスチューム自体は似合ってたと思う。

 それに甘えた様子でお腹を撫でることを求めてきた優花も可愛かったし。

 何やってんだ感はすごかったけど、優花のお腹を撫でたときの気持ちよさはまた味わってもいいかも。


 なおも別荘内を探索していくと、首輪とリードも複数見つかった。


 これらを見て思い出すのは、初デートのときだな。まさか初デートで彼女に首輪を着けてリードで引っ張ることになるとは思わなかった。リードで引っ張ってる間はいろんな人にやばい人を見る目で見られて、超帰りたかったなぁ。


「全く、何が『私が犬として振る舞うことは、もうないですよ』だよ」


 別荘内を見た限り、優花は犬プレイ関連のグッズを手放していなかった。この様子だと実家のほうも同様だろう。


 要するに優花は、犬プレイへの未練を断ち切れていなかったのだ。

 それなのに平気だと偽って、無理して犬プレイを卒業しようとして。


 何考えてるんだよ。恋人関係を維持するためとはいえ、優花が苦しい思いをしちゃ意味ないだろう。


 俺の中で、優花への呆れと憤りが湧いてくる。


 俺は優花と普通の恋人らしいお付き合いがしたいと思っている。現状優花は犬プレイをやめているので、望みは叶ったようなものだ。

 けれども別荘内に残る犬プレイ関連グッズを見て、犬プレイしているときの優花の可愛さを思い出して。俺の心は決まった。


 今のままではだめだと。


 ●●●


「話とは何だね?」


 数日後、俺は賢一さんを説得するべく藤川家に来ていた。

 事前に優花を通してアポを取り、休日に話す時間を作ってもらったのだ。

 なお優花に話したときは交際の経過報告をすると言った。賢一さんを説得することを話したら、そんなことしなくていいと優花に反対されそうだったからである。


「俺から賢一さんに、一つお願いがありまして」

「ほう、言ってみたまえ」

「優花が犬プレイすることを、認めて欲しいんです」


 俺が願いを伝えると、賢一さんは途端に表情を固く険しいものへと変える。


「その件に関して議論することはない。優花と岩瀬くんが犬プレイすることは認めない。これが変わらない私の答えだ」

「優花は犬プレイが好きなんです。『お手』をしたり、首輪を着けてリードで引っ張ってもらったり、犬食いをしたり。そうやって犬として振る舞うことが大好きなんです。犬プレイは優花にとって、手放したくない大切なものなんです」

「人間なら人間らしい振る舞いをするべきだ。それなのに犬プレイを好み、犬として振る舞うなどはっきり言って異常だ。異常なものは正常な状態に戻さねばならない。そうは思わないかね?」

「それでも優花に苦しい思いをさせてまで、犬プレイを禁止するのは間違ってます」

「私は優花の親だ。娘が誤った道に進んでいるのなら、正しい道へと連れ戻すのが当たり前ではないかね?」


 どれだけ俺が言葉を並べても賢一さんには全く響く気配がない。どこまでも冷たい態度で、淡々と処理されるだけだった。

 それでも引くわけにはいかない。犬プレイを禁じられ苦しむ優花を救うため、俺は賢一さんを説得すると決めたのだから。


「俺にだって、犬プレイをするのはおかしいという気持ちはあります。できることなら犬プレイせず、恋人らしく優花とお付き合いしたいと思っています」

「そう思っているのなら、なぜ優花の味方をするのかね?」

「優花と付き合っていくうちに、気付いたことがあるからです」

「気付いたこと?」


「それは、犬プレイしている優花も可愛いということです!」

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