第39話 もっと力強く、くびれや鼠径部に至るまで、舐め回すようにねっとり撫でて構いませんから!

 それも優花の服装はやたら露出度の高いものだった。

 コスチュームは全体的に茶色を基調としていた。犬耳と犬尻尾は当然着けている一方、下はホットパンツのようになっており、太ももから足先まで大胆に素肌が露出している。

 トップスは肩出しのチューブトップのためさらに布面積が少なく、お腹だけでなく首回りや肩も丸見えだった。


「どうですかこの露出度高めな犬コスチュームは? 通販サイトを探していたら、目に留まって購入したんですよ?」

「よくもまあ、こんな際どいコスチューム買えたな」


 大体優花、前に男子生徒から漫画を没収したとき恥じらってたじゃないか。漫画の中に登場する胸元が見えるメイドコスチュームを見て。

 なのに犬プレイのときはエロいコスチュームも恥じることなく着られるとか。犬プレイのときだけメンタル強化されすぎだろう。ゲームだったら強すぎて調整入るレベルのバフだよ。


「たまにはエッチな恰好でご主人様を喜ばせてあげよう。そう思ったのが購入のきっかけです。康士郎くんも好きでしょう? こういうエッチな服?」

「好きじゃないから! 目のやり場に困るだけだよ!」

「その割にさっきから私のお腹や太ももをチラチラ見ているの、私はわかってますよ。康士郎くんはムッツリさんですね」

「誰がムッツリだ!」


 仕方ないだろう。目の前でお腹やら太もも露出されたらつい見ちゃうって。


「それでは康士郎くん。私のお腹を撫でて下さい」


 お腹を上にしながら、優花は無防備に床に寝っ転がる。

 きれいな曲線を描くくびれ。白くて引き締まったお腹。小ぶりで可愛らしいおへそ。芸術的なほど完成されたその美しい腹部を、これから好きに触れるのだ。

 俺は緊張と言いようのない興奮から思わず生唾を呑み込む。


「じゃあ、失礼して」

「んきゅっ……!」

「ちょっ、なんて声出すんだ!?」

「すみません。びっくりしてしまったものですから。それより、私のお腹の触り心地はどうですか?」

「えっ? そっ、そうだな。ほどよく柔らかさもあって、気持ちいいよ」

「えへへっ、ありがとうございます! 褒めてもらえて嬉しいです!」


 しかし、女子のお腹っていいものだな……。スベスベしていて、触っているとすごく気持ちいい。

 あとおへその周りの少し浮き上がったところが最高だ。適度に脂肪が着いてて柔らかいから、ふかふかのベッドに触れているみたいだ。しかも触りながら白くてきれいなお腹を見ていられるし。何だか癖になりそう……。


 って、しっかりしろ俺!

 初めて女子のお腹、それも恋人の優花のお腹に触れて感動したからといって冷静さを失っちゃだめだ。あんまりお腹撫でるの楽しみすぎると変な道を開拓してしまう。


「はわぁ……。ご主人様にお腹撫でられるの気持ちいいですぅ……」

「だらしないくらい頬緩みきってるな。そんなに気持ちいいかこれ?」

「ちょっとくすぐったいですけど、気持ちいいですよ。それに康士郎くんの手、とっても温かくてほっこりします」

「そっ、そうか」

「ご主人様ぁ、もっと……もっと撫でて下さーい……」

「いつまで撫でていればいいんだ?」

「私がもういいよと言うまでです。今のままでは全然物足りません。それに、康士郎くんの撫で方には遠慮が感じられます!」

「遠慮?」

「優しく撫でてくれるのは構いませんよ? ですが、少し撫で方が慎重すぎます。もっと力強く、くびれや鼠径部に至るまで、舐め回すようにねっとり撫でて構いませんから!」

「言い方っ!」


 何が舐め回すようにねっとりだよ。

 俺をお腹撫でるテクニックに長けた変態にする気か。


「さあ、力強く私のお腹を撫でて下さい! 私、精一杯受け止めますから! ですので康士郎くんの男らしくて大きいので、私をめちゃくちゃにして下さい!」

「だから言い方っ! 男らしくて大きいって、ようは俺の手のことだろう!? 意味ありげな言い回しするんじゃない! あとめちゃくちゃすることもないからな!?」


 本当何なのさっきから!

 狙ってるのか!? 優花を俺の情欲をかき立てたいのか!?


「どっ、どうだ? 少し強めに撫でてるけど」

「あっ……。そっ、そうそう……そんな感じですよぉ……んんっ……! さすがはご主人様ぁ……。ちゃんと私が喜ぶこと……んにゅ……してくれますねぇ……」

「つっ、次はくびれとか、横っ腹のあたりを撫でるよ」

「ひゃん……! こっ、腰の当たりに、康士郎くんの手が触れて……ああんっ! くっ……くすぐったい……。でも……これはこれで……んんっ……横っ腹への刺激が何とも言えな……んやあああっ!」

「喘ぎ声どうにかしてくれませんかねえ!?」


 ただでさえ優花のお腹撫でてるから内心ドキドキしっぱなしなのに、喘ぎ声連発するとか。俺の理性をぶち壊す気か。


「こっ、康士郎くんがいけないんです。こんな……激しい手付きで撫でるから……」

「力強く撫でろって言ったのは優花だろう!」

「でも、この力強さは堪りません……んにゅっ! 力強く撫でられれば撫でられるほど、ご主人様の愛を感じますから……ああんっ!」

「俺のことを思って喘ぎ声抑えるのも愛じゃないのか?」


 このままだと喘ぎ声ASMRとして一本完成しそうなレベルだよ。


「うへへえ……ご主人様にお腹撫でられて幸せです……。ご主人様。もっと、もっと撫でて下さい。私のお腹を、ご主人様の温もりで満たして下さい!」


 けっこう撫でられたはずなのにまだまだ足りない様子の甘えん坊な優花。

 そんな優花を見ていて、ふと俺は思う。


 素の優花はとても恥ずかしがり屋だ。本当は俺にお腹を見せるのも、お腹を撫でられるのも恥ずかしいはず。

 それでも優花はこうして俺にお腹を預け、好きに撫でさせてくれている。


 これって、それだけ俺のことが好きで、心を許しているってことだよな?

 そう思うと、嬉しいと感じなくもないかな。


 やってることが犬プレイなのは正直納得いかない。でもお腹を撫でられて幸せそうにしている優花の可愛い姿も見られるし、撫でて損はなかったかもな。


 そんなことを思っていた矢先、突如俺達の部屋のドアが無造作に開けられる。


 ちょっと待て。どうして別荘の中に俺達以外の人間がいるんだ? 優花の運転手は一度藤川本家に帰ったからいないはずなのに。


「なっ……何をやっているんだね!」


 部屋に入ってきた人物は、俺が優花のお腹を撫でる光景を見て罵声を発する。

 その人物は、優花の父親の賢一さんだった。

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