第31話 ご主人様が喜ぶ恰好をするのも、犬の務めですから

「運動? お疲れ様会って、料理と飲み物用意して、二人でパーティーするって話だったよな?」

「はい。ですが、今日は康士郎くんが作った料理を食べられるんです。なので少しでも美味しくいただくために、体を動かしてお腹を空かせておきたいんですよ」


 お疲れ様会では俺が料理を作ることになっていた。食べ物はどうしようかという話になったとき、優花が俺が作った料理が食べたいと言ったのがきっかけだった。

 俺としても自分が作った料理で優花が喜んでくれるならぜひ作りたい。そう思って優花の提案に乗っかったのだ。


「わかった。なら先に運動するか。でも、どこで運動するんだ?」

「別荘の敷地内に草原があるので、そこを使います」

「すごいな。草原あるのかよ」


 ていうか待てよ。

 優花と運動するとなると、普通に走ったり何かしらのスポーツをやるとは限らないのでは? むしろ飼い主と犬がやる運動になりそうな気がする。


 しまった。そこまで頭が回ってなかった。このままでは運動という名の犬プレイに巻き込まれてしまう。何か対策を考えねば。


 とはいえ、これはこれでいい機会かもしれない。

 ここのところ俺は自分も犬プレイを楽しんでるのではと思い。悶々とした日々を過ごしてきた。けどこれから優花と犬プレイをして、俺自身は楽しめなかったとする。そうなれば俺は優花とは違うとわかり、胸のつかえが取れるのではないだろうか?


 だったら、あえて優花の希望通りにするか。その結果俺が犬プレイを楽しんでることが確定すれば目も当てられないが、自分の立ち位置は明確にしておきたい。


「運動するなら動きやすい恰好になったほうがいいよな? 俺ジャージとか持ってきてないけど、どうすればいい?」

「ご安心を。康士郎くんの分のジャージはこちらで用意してあります。一階の奥の部屋に置いてありますので、そちらで着替えてきて下さい」

「準備がよくて助かるよ」

「私は二階の部屋で着替えてきます。着替え後は玄関前に集合としましょうか」

「了解」


 どうせ犬プレイをするつもりなのだ。優花は犬っぽい恰好になるつもりなんだろう。あとでジャージプラス犬耳と犬尻尾を着けた状態で登場するのが目に浮かぶ。

 なんて考えていたが、優花は俺の想像の斜め上をいくのだった。


 ●●●


 結論を言おう。

 優花は犬耳と犬尻尾を着けた上で、体操服姿で現れた。

 犬耳と犬尻尾を着けてくるのは予想できていた。しかし、体操服に着替えてきたのは予想外だ。


「なんで体操服に着替えたんだ? しかもブルマまで履いて?」

「せっかくの康士郎くんと運動する機会なので、康士郎くんの好きな恰好になろうと思ったんです。前にどういうコスチュームが好みか聞いたとき、康士郎くんは体操服が好きだと答えてましたし。ご主人様が喜ぶ恰好をするのも、犬の務めですから」

「だからって無理して着なくてもよかったのに」

「無理なんかしてません。好きでこの恰好になっていますから。ほら、よく見て下さい。康士郎くんの大好きな体操服ですよ? ブルマだってちゃんと履いてますよ?」

「おいこら、尻をこっちに突き出すな」


 尻を強調したポーズ取られると視線が吸い寄せられちゃうだろうが。ピチッとしたブルマに食い込む尻のラインに。


 にしても、尻も艶めかしくはあるが、他も負けず劣らずだな。

 紺のブルマと黒のニーソックスの間に生まれる絶対領域は、ほどよく引き締まりつつ弾力感もありそうだし。

 上は半袖Tシャツだから体のラインがはっきりしていて、優花の細く美しいウエストラインが露わになっている。一方で、胸周りは優花の胸の大きさがこれでもかと主張されていた。


 やっぱり体操服は素晴らしいな……。

 って、感慨にふけってる場合か! あんまりじろじろ見ていると変態だと思われるから気を付けろ。


「ところで康士郎くん。着替えていて気付いたんですけど、体操服と犬尻尾って相性いいと思いませんか?」

「思わないな。犬尻尾のせいで体操服の良さが半減するから」

「またまた。本当は最高の組み合わせだと思っているんでしょう? よく見て下さい。ブルマから可愛い尻尾が出ているんですよ? 愛らしいとは思いませんか? ほら、ほら」

「だから尻をこっちに突き出すな。尻尾もぎ取ってやろうか?」

「なるほど。もぎ取りたいほど私の尻尾に夢中なんですね」

「違うわ!」


 ポジティブシンキングが逆に面倒臭いな、おい。


「さあ、草原に移動しましょうか」


 それから俺と優花は別荘の敷地内にある草原に移動した。

 草原はとても広く、うちの高校のグラウンドくらい広かった。

 優花曰く、ここは元々牧場だったらしい。草原はその名残だとか。


「それでは、早速体を動かしましょう! ボールにフリスビーに、遊び道具の準備は万端ですよ!」


 そう言って優花は手提げかばんから用意した道具を俺に見せる。

 思ったんだけど、俺のやることってボールとか投げるだけじゃない? 優花は動くけど俺はほとんど運動せずに終わるのでは?

 まあ、いいか。体力温存できるし。ただでさえ優花の犬プレイに付き合わされると疲れるからな。

 主に精神的に。

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