第29話 康士郎くんは、どういったコスチュームが好みなんですか?
「ハレンチな描写?」
「まっ、真ん中あたりのページを見て下さい」
優花から漫画を受け取ってから、俺はページをめくっていく。
「そっ、そこです」
「これは、メイドのコスプレか」
ページ内ではヒロインがメイド服を着用し主人公に見せつけているところだった。
しかもこのメイド服、露出度が高いのだ。
スカートはミニスカートだし、胸元も大胆に露わになっている。優花がハレンチというのも無理はなかった。
「私の家にもメイドはいますが、もっとしっかりとした身だしなみをしています! このようにハレンチな恰好は、メイドのあるべき姿ではありません!」
「まあ、世の中には露出度高めのメイド服もあるらしいからな。この漫画のはその中でもより高いと思うけど」
にしても、もしやと思ってはいたが優花の家にはメイドがいるのか。前優花の家にお邪魔したときは会わなかったけど、今度機会があれば会ってみたいな。メイド喫茶にいるのとは違う、本物のメイドがどういう感じか知りたいし。
「そもそも、どうしておおおおっぱいを見せる必要があるんですか! こんなのふしだらにもほどがあります……!」
「読者の男子が喜ぶから、こういう絵を描くんだと思うけど」
「とっ、とにかく! こんなハレンチな漫画、いつまでも持っていられません! 手早く風紀委員担当先生に届けてきますね。それでは、またあとで」
「おっ、おう。またな」
優花ってば、すっかり顔真っ赤になっていたな。
ていうか、優花の恥じらいの基準がよくわからなくなってきた。首輪を着けてリードで引っ張ってもらったり、頬をペロペロしたり。そういった犬プレイ中の出来事は恥ずかしがらないのに、胸元を露出したメイド服見たら恥ずかしがるんだもんなぁ。
●●●
「無事届けてきました……」
「お疲れ様」
一足先に教室に戻り、自席で休んでいた俺のもとに優花がやって来る。優花の頬の赤みはだいぶ取れていた。
「そういえば、今朝中間試験の成績が張り出されていたな。優花が今回も1位だったのは確認したよ。やっぱりすごいな」
「私はベストを尽くしただけです。ですが、大好きな康士郎くんに褒められるのは、嬉しいです……」
優花は指と指を擦り合わせつつ頬を緩ませる。照れ臭さはあるものの、喜びを隠しきれないようだ。
「康士郎くんは何位でしたか?」
「1位の優花と比べると見劣りするけど……。317人中で、152位だったよ」
「なっ、なるほど……」
ああ、優花に苦笑いを浮かべられてしまった。そりゃそうだよね。152位って、いいのか悪いかはっきりしないから反応も微妙になるよね。
「でっ、ですが、152位でもすごいですよ! 2年生になって勉強が難しくなっても、全体で真ん中より上の順位だったんですから!」
「無理にフォローしなくていいから。逆にいたたまれなくなってくる」
できれば高校入学後初の100位以上になりたかったんだけどなぁ。
優花に教わったおかげで英語が自己ベストだったし、これならいける。そう思っていたのに数学とか古文の成績が下がって、結果1年生の最後の試験より順位下がってしまったからな。
まあ、下がりそうな気はうっすらしていたけどね。英語は頑張れたけど、正直今回は試験勉強に身が入ってなかったもん。俺は犬プレイを楽しむ変態になったのでは疑惑で心乱れまくってたし。
「あまり落ち込まないで下さい。次の試験では、もっといい成績を収められます! また私が一緒に勉強して力になりますから!」
「優花……。ありがとう。心強いよ」
確かに、落ち込んでばかりいても仕方ないか。次の試験は夏休み前の前期期末試験。そこで頑張ろう。
「ところで康士郎くん。クラスの中には、中間試験が終わったのでお疲れ様会をする方々もいるそうですよ?」
「一部の人間はやるらしいな」
「よければ、私も康士郎くんとお疲れ様会がしたいです。だめでしょうか?」
「そんなことないよ。やろうか、お疲れ様会」
「はい、ありがとうございます」
それから俺達は、今週の日曜日にお疲れ様会をすることに決めた。
あとはどこでやるかだが、優花が場所の提案があると言ったため聞くことにした。
「よければ、藤川家所有の別荘でやりませんか?」
「べっ、別荘?」
別荘あるとか、やっぱり優花の家はお金持ちだなぁ。ひょっとしたらプライベートビーチとかも所有しているかも。
「別荘でお疲れ様会はいやですか?」
「いやなわけあるか。じゃあ、そこでやろう」
「決まりですね。当日は私の運転手が車で迎えに行きますので、康士郎くんは自宅で待ってて下さい」
「わかった。楽しみにしているよ」
まさか別荘にいけることになるとは。
玲菜や父さん、母さんに言ったらさぞ驚かれるだろうな。
「話は変わるんですが、康士郎くんに一点確認したいことがありまして」
「確認したいこと?」
「今日男子生徒から没収した漫画の中で、ヒロインがメイドの恰好をしていたじゃないですか? あのように何らかのコスチュームを着ることは、コスプレというんですよね?」
「そうだよ」
「康士郎くんは、どういったコスチュームが好みなんですか?」
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