第20話 どこの世界に犬耳と犬尻尾身に着けて帰ってくるお花の摘み方がある!?

 でも、そうか。

 玲菜は俺がいつもをご飯を作ってるのをありがたいと思っていたのか。

 てっきり反抗期だからそういうこと思ってないのかとばかり。


「なっ、何ニヤニヤしてるの、気持ち悪い……」

「ああ、ごめん。玲菜が俺に感謝してるとわかったのが嬉しくて」

「言っておくけど、おにいに感謝してるのはご飯作ってくれることだけだからね! シャツに付いたケチャップのしみ抜きしてくれたこととか、バドミントンの新人戦の応援に駆けつけてくれたこととか。何とも思ってないこともあるんだからね!」

「わざわざ覚えてるってことは、感謝していると言ってるようなものでは?」

「~~~っ! うっさい! おにいのバカ! ちょっと玲菜にいいこと言われたからって調子に乗って! ムカついたからカレーライスおかわりする!」

「勝手にしてくれ……」


 今まで知らなかった玲菜の俺に対する気持ち。

 それを知った俺は、家でのご飯を作るのを頑張ってきてよかったと思うのだった。


 ●●●


 その日の夜、俺は優花にデートの誘いのメールを送った。デートの内容はもちろん、玲菜のアドバイスを参考に決めたお買い物デートである。

 メール送信後、すぐに優花から了承の返事が来た。それを確認したのち日程の相談をした結果、デートは四日後の日曜日に決行となった。


「ちょっと早く着きすぎたか」


 デート当日、俺は初デートのときにも待ち合わせ場所にした駅前にいた。だが張り切りすぎてデート開始30分前に着いてしまい、暇を持て余していた。

 犬プレイをやめさせるため、優花に恋人らしいデートも楽しいと思わせる。その思いが強すぎて早くに家を出発したのは失敗だったな。まあ、遅刻するよりはいいんだけど。


「お待たせしました」


 15分ほど待ってると、専属の運転手の車に乗せられて優花がやって来た。

今日の優花の服装は黒のセーターと白のロングスカート。今日はストッキングを履いておらず、ロングスカートの先からは生足が少し見えている。

 初デートのときの私服もよかったが、今回の服装も抜群に似合っていた。特に優花の清楚な雰囲気とロングスカートの相性がいいように思える。

 またセーターはピチピチしており、優花のボディラインが強調されていた。そのせいで前回よりも優花の大きな胸の膨らみが鮮明になっていて、正直エロい。


「……? どうかしましたか?」

「いや、何でもない」


 優花が酔っ払って全裸になったとき、どれだけ胸が大きいか目の当たりにしちゃったからな。胸の凹凸がわかりやすい服を着られるとつい視線が吸い寄せられる。

 これではだめだ。胸ばっかり見てると優花にバレたら幻滅されてしまう。あまり胸に視線がいかないようにしないと。


「今日の買い物デートのために、私は10万円ほど用意してきました。なので多少散財しても問題ないですので、ご心配なく」

「おっ、おう」


 高校生で10万円も用意できるとは。警視総監の娘のお財布事情とんでもないな。

 これ、俺がお金出せる場面ないのでは? 優花にプレゼント買おうとしたら「私が払うので大丈夫です」って言われそう。

 大丈夫か今日のデート? 優花にプレゼント買うつもりだけど、その機会優花の財力に摘み取られない?


「あの、康士郎くん。デートを始める前に、お花を摘んできていいでしょうか?」

「いいよ」


 一旦俺と別れ、優花は用を足すため駅構内へと向かう。俺は優花が来る前にお手洗いは済ませたので、駅前に留まった。

 数分後、なぜか俺のスマホに優花からメールが届いた。


『お花摘み終わりました。急いで戻りますので、わくわくしながら待ってて下さい』

「なんだ? この謎メールは?」


 お手洗い終わったくらいで報告しなくてもいいのに。あと「わくわくしながら待ってて下さい」とはどういうことだ?


「おっ、出てきたか。……って」


 メールを受け取ってから少し経ってから、優花が駅の外に姿を現した。

 青みがかった長い黒髪。黒のセーターに白のロングスカートというファッション。俺のほうへと歩いてくるその姿は、どこからどう見ても優花のものだった。

 だが一つ、どうしても気になることがある。


 どうして優花は、犬耳と犬尻尾を身に着けているんだ?


「すみません。お時間を取らせてしまって」

「別にいいよ。それより、優花はこの短い間何してたんだっけ?」

「えっ? お花を摘みにいっただけですが?」

「どこの世界に犬耳と犬尻尾身に着けて帰ってくるお花の摘み方がある!?」


 ちょっと待ってくれ。一旦状況を整理しよう。

 優花はお手洗いに行った。お手洗いが終わって、今戻ってきた。そしたら犬耳と犬尻尾を付けていた。

 うん。意味わからん。というかわかりたくもない。

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