第19話 おにいに頼られたときは恩返ししようと思ってるわけで──。って、何言わせるのさ!
優花に犬プレイをやめてもらうための作戦の失敗。お酒入りのお菓子を食べた優花が酔っ払って暴走する。俺と優花がエッチしていると玲菜に誤解される。
そういったいろいろな出来事が一気に起きてから一週間が経った。
あれから俺は、改めて優花に犬プレイをやめてもらうための作戦を立てることに決めた。
「玲菜―。晩ご飯できたけどー」
夜、晩ご飯を作り終えた俺は二階に上がって玲菜を呼びに行く。自分の部屋にいる玲菜から「今行く」と返ってきたので、俺は一階に戻り玲菜が来るのを待った。
ほどなくして玲菜が下りてきたので、俺達は晩ご飯を食べ始める。
「なあ、玲菜。ちょっと相談したいことがあるんだが」
「無理。自分で何とかしなよ、変態おにい」
とりつく島もないといった感じで玲菜は応じる。
一週間前、俺と優花がエッチしていると誤解されて以降、玲菜はずっと辛辣だった。俺のことは変態呼ばわりし、話し掛けてもいつにも増して素っ気ない反応ばかりしていた。
「本当ありえない。付き合い始めてまだ一ヶ月も経ってないのに、エっ……エッチするとか……。おにいの変態。淫乱。ヤリチン」
「実の兄を女子とやりまくってるやつみたいに言うな!」
ガチトーンで言われるとすごいへこむから。
「この前から何回も言ってるけど、俺と優花はそういうことしてないからな」
「でも、藤川さんはあのときエッチしている最中だって」
「あれは玲菜が部屋に入ってこないよう優花が言ったでまかせだ。ちょうどあのとき、見られたくない状況になってたから」
「見られたくない状況って何?」
「えーっと……」
何かしら答えを用意しないと誤解は解けないままだ。そうは言ってもありのままを述べるわけにもいかない。
当たり障りなく、かつ玲菜が納得する嘘の理由を述べよう。
「優花と、熱いキスを交わしていた」
「……それは、見られたくない状態だね」
よかった。納得してくれたみたいだ。
玲菜はまだキスするような相手はいないと思う。それでも多くの人が抱くように、キスしているところは他の人に見られたくないものという認識はあるようだ。
「俺と優花は健全なお付き合いをしている。体目的で付き合ってるわけではない。だから安心してくれ」
「……わかった。おにいがそう言うなら、信じるよ」
ごめんな玲菜。本当は健全なお付き合いできてないんだ。
でも何とかして優花に犬プレイをやめさせて、健全なお付き合いになるよう軌道修正するから。
「それで? 玲菜に相談があるんだっけ? その、どうしても困ってるって言うなら、相談に乗ってあげなくもないけど?」
「なんて回りくどい言い回しだ……。相談に乗ってくれるのか、乗ってくれないのか、どっちなんだよ?」
「相談に乗るって意味で言ったの! それくらい察してよね!?」
「察しづらい言い方したのはどこのどいつだ」
全く、話聞くつもりがあるならもっとわかりやすく答えればいいのに。
「じゃあ、早速質問させてもらうけど。女子が喜ぶデートって、例えばどんなのがあると思う?」
「女子が喜ぶデート?」
一週間前の作戦失敗後、改めて俺は優花に犬プレイをやめさせるにはどうすればいいか考えてきた。その中で一つ思い付いたのが、普通の恋人がするようなデートを体験させることだった。
遊園地に行ったり、おしゃれなレストランで食事したり。
そういった恋人らしいデートを体験させることで、犬プレイをしないデートのほうがいいと優花に思わせる。これが俺の狙いだ。
とはいえ、作戦を成功させるには犬プレイなしで優花が満足するデートをしなければならない。これは相当難しいことだ。
なので玲菜に相談し、女子目線の助言をもらおうと考えたわけである。
「そうだねえ。買い物デートなんかいいと思うけど」
「買い物デート?」
「女子は買い物が好きなの。実際に物を選んで買うのも、見るだけのウィンドウショッピングもね。玲菜も女子バドミントン部の友達と休みの日に買い物楽しんだりするしね」
「なるほど。でも、買い物デートで優花を楽しませられるかな?」
「やるべきことを抑えれば楽しんでもらえるはずだよ。まずは相手が興味を持ってるお店に行くこと。興味のないお店に連れていかれても楽しくないしね。あとは、デート相手が欲しいものを買ってあげると喜ばれるよ」
「プレゼントをしろ、ってことか」
確かに、プレゼントをするのはいいかもしれない。恋人から何かをもらうことは、それ以外の人からプレゼントをもらったときよりも嬉しいだろうし。
けど優花の場合、興味のある店は犬関連の店で、欲しい物は犬プレイ関連グッズだろうな。とはいえ、それだと犬プレイをやめさせることはできない。他に興味がありそうな店に連れていって、そこで欲しい物を買うのがいいか。
「まあ、後半のはうちの部の先輩が言ってた話を参考にしただけで、どこまで効果あるか保証できないけど」
「いや、すごく参考になった。ありがとう玲菜。相談に乗ってもらえて助かったよ」
「……なっ、何急に。お礼言われても何もあげないからね?」
「物をねだってはいないんだが」
「玲菜は自分のしたいようにしただけ。玲菜がバドミントンに集中できるよう、おにいはいつもご飯を作ってくれてる。それがありがたいから、おにいに頼られたときは恩返ししようと思ってるわけで──。って、何言わせるのさ!」
「自分で言ったんだろう……」
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