✝️武羅苦サイド✝️ 二人の特攻(ぶっこみ)
そしてあっという間に土曜日の夜。
寒さはますます深くなり、もう朝起きるのが本当につらい。
便所でケツを出すのも厭な程だ。
今朝も糞みたいな水道排水をせこせこ繋げやっと仕事を終わらせて帰ってきた。
リーダーの仇はあいかわらず無職で俺の家でぼんやりと過ごしていた。
晩飯を買いに行き用意してくれていたのがせめてもの救いだ。コンビニ飯だが。
ふたりでモグモグ食べて早速「仏打」のたまり場に行くことにした。
ふたりで話し合った結果日野町にある糞佐世保バーガー屋に行くことにした。
桃野の一番新しい店なので本人がいるかもしれないし、この間仕事で前を通った時に馬鹿みたいに「仏打」の車が居た。
あの雑魚メンバーは示威行動なのか全員がご丁寧に車かバイクに自チームのステッカーを貼り付けて我が物顔で街を走らせている。
最新のSUVに旧車に。
あのガキどもは薬と女でたんまり儲けている。
腹いせにたまに狩るがゴミは減りはしない。
今日もあのバーガー屋に屯しているのだろうか。
車で向かいながらふと、あまりに相手が多いとどうするのだろうかと考え仇に相談したが。
「いや、やるっしょ」
と笑うばかり、頭のネジが外れている奴に相談した俺が馬鹿だった。
仕方が無い。コンビニで景気づけに酒を買い飲み飲み運転している内に件のバーガー屋に到着した。
店の前にはサーフが一台と馬鹿みたいなロケットカウルを点けたバイクが二台。
俺は心の中で安堵する。良かった店内に何十人とは居ないようだ。
しかしすべての乗り物には「仏打」ステッカーが付いているのでメンバーが居ることには間違いない。
俺達は普通に駐車場に車を止め店内に入った。
仇が先頭、俺はいつも通り後ろから。
店内はウッド調でダセえアメリカンな看板やなにやら飾り付けがされている。
そしてなかなか美味しそうな匂いがしている。
俺が見る限り店内には四人居た。
カウンター内の厨房に豚がひとり、カウンターにひとり。そしてボックス席には二人、一人は女だ。
制服からして商業生だろう金髪のオールバックに後ろから胸を揉まれている。
幹部でもないようだ。見たことも無い奴等だ。
三下か。
俺達が何か言葉を発する前から厨房の豚が威嚇するような声を出す。
「今晩はもう閉店ばい、帰らんや」
この豚は仇の顔すら知らないらしい。
仇は鷹揚にニヤニヤしながら厨房に近づき豚に何やら言うのかやるのかと思うや否や、横にいたカウンター席の男の目にビール瓶を突き立てた。
「あっ」
男は情けない声を出して目を押さえた。
女は吃驚して動けないでいる。
ボックス席のもうひとりが立ち上がり仇に掴みかかったが頭突きをするように頭を振りかぶると何を思ったのか男の眼前に顔を近づけ鼻に嚙みついた。
「あああああぅうああああああああぅうううう」
男は突然の事に呻いて手をじたばたさせるばかり。
その後はハンバーガーを踏んづけたようなみしりといった音の後男の鼻は無くなった。
もう豚と女は竦んで動けなくなっている。
一人は鼻を押さえ声も無く転がるように店を後にし目にビール瓶を突き立てられた男は静かに呻いてるだけ。
女子高生も乱れた制服のまま逃げていった。
店内に残るは豚ひとり、かわいそうに膝からガタガタと震えている。仇が隣に立ちにこやかに。
「ハンバーガー食べたい」
というと豚はわかりましたと呟き鉄板でハンバーガーを作り出す。
なかなか良い匂いが店内に充満してきて俺は普通にハンバーガーを食べるものだとばかり思って居たがパティを焼いているときに仇が徐に豚の手をとり鉄板に押しつけた。
「あっあっああっあつ」
じゅうじゅうと肉の焼ける匂い。油を引いているためにこれも中々良い匂い。
あーあ、ハンバーガー食べないのかよ。
「あっっあっやめてくださっ離しあっ」
仇は手首を持ちグイグイと鉄板に押さえつける。
人の手のひらを焼きながら。
「ねえ桃野いまどこにいるの?」
と尋ねるも只管熱される手のひらを前に豚は喋ることすら出来ない。
「あっあっあっ」
俺は楽しみにしていたハンバーガーが食べられず興味を失いソファに座って煙草をふかしていた。
その時、外から下品なマフラーの音。
そして「こんちゃー!」と元気一杯な十代にしか見えないガキが入ってきた。
俺達を見て本当に腰を抜かしへたり込む。
「あ、仇と三村!」
そのコミカルな動きに俺も仇も笑ってしまった。
「おい、さんをつけろよ」
その後、豚はよたよたと逃げだしこのガキにポテトを揚げてもらいながら話をした。
こいつはこのハンバーガー屋のバイトで今アイコスの買い出しに行っていたようだ。別に暴走族ではないが暴走族が大好きらしい。
仇がやってきた喧嘩エピソードを色々喋っては「これは本当っすか」と仇に確かめキャッキャ喜んでいた。
そんな話が大好きらしい。
桃野の事を聞くと最近おっさんを雇った、そいつが殺し屋らしい。
「殺し屋なんて漫画じゃあるまいし、そう思うっすよね?」
しかし俺達は顔を見合わせる。
あの惨状、殺し屋はありえるのか。変わった空気にガキは戸惑いを見せる。
ポテトを出させるとそのまま追い出した。
「ま、桃野には挨拶しとかないとな」
はそう言うと立ち上がり俺の車から赤のスプレーを取ってきた。
正面の壁にメッセージを描く。
『武羅苦 三上』
「おい」
「あ、なんだよ?」
「三上って誰だよ」
「馬鹿おめーみかみじゃねえよ参上だよ」
俺は仇にスマホで正しい漢字を見せる。
「漢字が違うぞ」
仇はスマホを見てしばし考えたようだがどうにも出来ないと悟ったのか煙草を吸い出した。
二人で煙草をゆっくり吸った後、とりあえず帰宅した。
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