第103話

 そこから私達の結婚式までは早かったわ。邸に帰るとオットーを始めとした従者達みんなが祝ってくれて邸は大騒ぎになったわ。


ファルスが騎士団長になったら渡そうと思っていた剣。騎士団長にはなれなかったけれど、側近になったファルス。


初夜の2人きりの時、私はそっとベッドに入る前にお祝いとして剣を渡したわ。マージュさん渾身の作品!国宝級といっても過言ではない代物だったわ。柄は私とお揃い。殿下も持っていないのよ?


ファルスは豪華な箱からリボンを解き、箱を開けると固まってしまったわ。


「ファルス、凄いでしょう?柄は私とお揃いなのよ?今まで貯めていたお金がすっからかんになっちゃったけどね!」


「……マーロア!凄いなんてもんじゃないだろう!?本当に俺の剣、なのか?」


ファルスは固まり、フルフルと震えながら聞いてきた。


「もちろんよ!明日から使って欲しいわ」


「あ、あぁ。大事に使うさ。マーロア、有難う。俺、こんなに幸せで良いんだろうか」


「私も幸せよ。ファルス、これからもよろしくね」


そうしてファルスは興奮冷めやらぬうちに夜が明けた。2人とも幸せに過ごしたのは言うまでもないわね!



そうそう、ビオレタもユベールも村から出てきていて邸に数日間だけど滞在したわ。どうやら復活した伯爵領は猫の額程の領地だったけれど、侯爵家の領地の隣だった。


ビオレタとユベールは伯爵領へと住まいを移して今までと変わらない生活を送る事になったわ。後で知ったのだけれど、ビオレタの家が何故没落したかと言うと、ビオレタの姉二人は先に嫁いでいてビオレタは婿を取る予定だったみたい。


婚姻する直前に両親が亡くなり、親戚達が挙って資産を横取りした上、伯爵家の相続手続きを邪魔したようで、間に合わず爵位返上となってしまったらしい。


ビオレタは資産も爵位もなくなった事でファルスの実父に捨てられてしまったのだとか。


 行く当ての無かったビオレタは父に拾われて侍女として働き始めた矢先、ファルスがお腹に居ることが分かったのだとか。人間の闇の部分を見てきたビオレタはファルスや私、ユベールが居たから乗り越えられたと言っていた。これからは領地で幸せに過ごして欲しいと思う。


ちなみにファルスの新たな兄弟もスクスクと育っていて今可愛い盛りだと思う。偶に領地に帰って遊んであげているわ。


 そして私はというと、零師団で相変わらず勤務を続けているわ。普段から認識阻害を掛けて王太子妃殿下やエレノア様のお茶のみ友達として護衛をしている。偶に殿下達の視察に付いて国中を回ったり、他国へも出掛けたりするようになったわ。


もちろんファルスと一緒に。ファルスは側近として、私は零師団なので先回りして害獣を討伐して危険を減らしたり、同僚と情報を集めたり、時には侍女に扮して意外と忙しく活動しているのよ?


転移道具もようやく使える許可が降りたわ!


 先回りして討伐したドラゴンをイェレ先輩やアルノルド先輩に送りつける事もたまにはあるわね。突然研究室に降ってくるドラゴンに怒りながらも魔道具を用意してくれる先輩達にいつも感謝しているわ。


まぁ、転移場所を研究室内ではなくて訓練場にすればいいのにと思うのは私だけかもしれないけれど。


 先生はというと、何故かレコとコンビを組んで相変わらず国中を回っているみたい。レコは『賭博でお金が無くなって仕方なくです』と言っていたわ。本当かしら?





「マーロア、そろそろ王宮勤務も控えた方がいいんじゃないか?」


「もう少し動いていたいわ。だってお義母様が領地から出てきてくれるまでは、ね?」


「心配で心配で仕事が手につかないよ」


「ふふっ。そうね。父にも家に帰ってくるように言われているし、そろそろお休みをいただこうかしら。といってもお隣だけれど」


 そう、結局タウンハウスは侯爵家の隣に用意されていたわ。吹けば飛ぶような小さな領地の伯爵家には後ろ盾が必要だって父もテラも言い張って何故かすぐに会えるようにとお隣に邸を建てていたのよね。


これには私もファルスも苦笑い。けれど、そのおかげでアンナやオットーが心配してよく我が家に来てくれるの。有難いことね。父もテラが仕事を手伝うようになって楽になったのか我が家にちょくちょくベビー用品を持ってくるの、オットーと共に。


私は大きくなったお腹を撫でながらとても幸せを感じていますわ。



【完】


ーーーーーーーーーーーー


最後までお読みいただきありがとうございました⭐︎

初めて20万字を超える長編。7月末から書き始めてようやく完結となりました!


最初の予定は卒業後、レヴァイン先生とファルス、マーロアで各国を旅する予定にしていたのですが、何故か国内になっていました。

もっと卒業後からの冒険を増やしても良かったかなー。噂のダンジョン入り忘れたなー。(´∀`)

今回は戦闘シーンを取り入れていつもより丁寧に書き、ファンタジーカテにしました!

恋愛カテは感情を表現するのが難しくてよく筆が止まるのですが、ファンタジーは敵や魔法を考える時、自分の想像力のなさに筆が止まる事が多かった気がします。(´∀`)


そして指摘で気づいた第三王子問題。最後まで第二王子出ず…。あー暗殺されちゃったかな?(^◇^;)

後で第二王子はシェルマンにこっそり直さなければいけませんね。笑


途中で知ったのですが、縦書きで読む人もいるらしいと!全然知りませんでした。(^◇^;)

縦書きだと空白行が読みづらいですね。

横書きだと空白がなければ目を攻撃して読みづらい。段落も無い方が読みやすい。この辺は改善の余地はまだまだありそうな気がします。。゚(゚´ω`゚)゚。


公開から2ヶ月ちょっと。長い間お付き合いをいただき、本当にありがとうございました!


残り一話、ファルスの事情。よければ読んでいって下さい⭐︎

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