第83話

「さぁ、マーロア、来るんだ。優しくしてやる」


ガシャンと鉄格子の鍵が開けられ、男たちが入って来た時、団長からの許可が降りた。


「気持ち悪いわ!」


 私はそう叫ぶと身体強化をし、私の腕を掴もうとしていた男を殴りつけると、男は壁際まで吹っ飛び倒れた。


一瞬の事態に男たちが動揺して動きを止めた。


すると、外の方からこの牢屋に向かってくる足音が聞こえる。


「助けて!!」


 リディアさんが大声で叫ぶと声を聞きつけたようで騎士達がなだれ込んできた。男達は私を盾にする間も無く取り押さえられていった。


「大丈夫ですか?さぁ、こちらに」


 私とリディアさんは一人の騎士に、壁際で震えている女の人達は別の騎士に寄り添われながら歩いて牢を出た。私達は貴族令嬢という扱いの元左手に移動し、他の人達は右手に移動して何処かへ連れていかれるようだ。


きっと詰め所かどこかで保護して詳しい話を聞くのだと思う。騎士に案内されて部屋に入ると、騎士は私に向かって取り上げられた魔道具を投げてよこした。


「リディア、ロア、お疲れさん」


騎士をよく見ると、マルコ副団長だった。


「マルコ副団長!お疲れ様です」


「ロア、初の誘拐おめでとう。頑張ったな」


「マルコ副団長、怖かったです。リディアさんがいなければ私、命令に違反して伯爵達をぶっ飛ばしていたかもしれません」


「ふふっ。血気盛んね。最後まで魔法を使わずに済んだのは良かったわ。身体強化はちょっとしていたようだけれど、まぁ、あの程度なら問題ないわよ。それにしても来るのが遅かったじゃない」


リディアさんが笑顔でマルコ副団長に詰め寄る。


「第三騎士団のやつらの動きが遅くてな。暗部だし、ゆっくりしていても大丈夫だろうってさ。これには団長も腹を立てていたがな。まぁ、いつもの事だ。俺たちの活躍をあいつらは何にも分かっていないからな」


 私は魔道具を装着しながらマルコ副団長とリディアさんのやりとりを眺めていた。どうやら零師団は危ない橋を渡ろうと、活躍しようと表に出る事はないらしい。


捕まえた功績は全て騎士団になるのだとか。


そう聞くとなんだかモヤモヤするわね。


けれど、それを分かった上で給料が出ているのだから仕方がない。零師団は他の騎士団員と違って破格の給料だしね。


 私達はマルコ副団長と一緒に零師団の部屋に帰ってから報告書を作成し、団長に提出する。なんとも濃い一日だったわ。きっと帰りが遅いとアンナ達が心配しているから家に連絡しておいたの。突然の仕事で王宮に泊まることになったと。


 報告書を提出したのも遅い時間だったので騎士団食堂で夜食を摂ってから暗部用の仮眠室へと入った。


仮眠室は本当に寝るだけといった感じかしら。ベッドが置いてあるだけの部屋なのよね。それにとても狭い部屋なの。けれど、空間結界なのか錯視魔法なのかは分からないけれど、王宮の客室ほどの広さがあるような感覚なの。


圧迫感のない感じ。ふかふかの布団でとても寝やすかったわ。


あ、もちろん部屋にシャワーは付いていないので清浄魔法で体の汚れを落として寝たわよ?リディアさんは自分の家に帰って寝るわと転移魔法で家に帰っていったわ。


流石イェレ先輩の姉。


転移魔法もお手の物なのね。転移魔法、私も覚えてみたいわ。けれど、あれは超難易度の高い魔法で魔力量も高くなければ使えない。


 魔力量が増えたとはいえ私が転移魔法で移動出来るのはせいぜい百メートルが良いところね。それも何度も使えない。詠唱にも時間を取るので私には不向きな感じかな。


覚えていて損は無いから今度リディアさんに教えて貰おう。

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