美凪side ③ 中編 その①

 美凪side ③ 中編 その①





 玄関の扉を開き、家から出た私と隣人さん。

 空を見ると今日も快晴です!!

 ふふーん!!やはり晴れ女の美凪優花ちゃんですね!!


 そう思っていると、隣の隣人さんが私に提案をしてきました。



「今日は駅まではバスで行くことにしよう」


 昨日は歩いて駅まで行きました。

 彼と手を繋いで歩きたかった。そんな理由がありましたから。


 ですが、今日は少し足に疲れがあります。

 二日連続で歩くのは少し辛いものがありますからね。


「そうですね。昨日は歩いたので少し足に疲れがあります」


 私はそう言って彼の提案に乗ることにしました。


「駅に着いたら電車で映画館がある駅まで移動する感じだな」

「了解です!!」


 昨日行ったショッピングモールにも映画館はあります。


 ですが、同じところに二日連続で行くのもつまらないです。

 きっと隣人さんもそう考えてくれたんでしょうね。


 きちんと考えてデートコースを決めてくれている。

 彼のそういう所はスマートでかっこいいですね。



 バス停までは十分ほどの道のりですが、私は隣人さんと手を繋いで歩いて行きます。


 そして少し歩いたところで彼が私に話しかけてきました。


「なぁ、美凪。少しだけわがままを言っていいか?」

「……え?わがまま……ですか?珍しいですね、隣人さんがそんなことを言うなんて」


 私がそう言葉を返すと、彼は少しだけ恥ずかしそうに言葉を紡ぎました。


「今なら周りに人が居ないからな。その……ストールを取ったお前の姿を見せてくれないか?」

「…………そ、そうですか。わ、わかりました」


 確かに周りを見ると人は居ません。

 鏡の前でも思いましたが、彼の前なら露出度の高い服装でも良いかな。と思います。


 私は肩にかけていたストールを外して、手に持ちました。

 少しだけ肌寒さを感じましたが、このくらいなら我慢出来ます。


「…………ど、どうですか」


 私はそう言ってくれる彼に視線を送ると、真剣な表情と声で称賛の言葉をくれました。


「綺麗だ。俺が贈ったネックレスも身に付けてくれたんだな。良く似合ってるよ」

「あ、ありがとうございます……」


「でもやっぱりお前のその姿は俺だけが見ていたいな。ありがとう、満足したよ」

「わ、私も貴方になら見せても良いですけど、他の人には嫌です……」


 私はそう言って、もう一度ストールを羽織りました。


「隣人さんは独占欲が強いですね……」

「まぁ……お前が相手ならそうなるだろ」


 も、もぅ……そんなこと言わないでくださいよ……


 私は恥ずかしさを覚えながら少しだけ視線を下にして歩いていました。



 そして、少しするとバス停に辿り着きました。


「良かったな。すぐにバスは来るみたいだ」


 時刻表を見た隣人さんは少しだけ安心したようにそう言いました。


「意外と市内バスの本数が多いですよね。とても便利だと思います」


 私が引っ越してくる前の場所は田舎でしたので、一時間に一本とかでしたからね。


「そうだな。田舎の方だと一時間に一本とかだからな」

「あはは。私が前に住んでたところがそんな感じでした。結構な田舎だったんで」


「奇遇だな。俺も前に住んでたところは結構な田舎でな。夜になると田んぼからカエルの鳴き声が聞こえてきたぞ」

「あはは。田舎あるあるですね!!」


 彼とそんな話をしているとバスがやってきました。


「よし。乗るか」

「はい!!よろしくお願いします」


 隣人さんは私の手を取ってくれました。そして転ばないようにしてバスへと乗り込みます。


 日曜日の昼前の時間です。

 それなりに乗客が居たので、残念ながら座ることは出来そうになかったです。


「座れなかったのは残念ですね」

「まあ、そういう時もあるわな。バスは結構揺れるからな。俺に捕まってろよ」


 彼はそう言うと、手すりを掴んだあと私の身体を抱き寄せました。


 …………え?


「し、しれっと私を抱き寄せましたね……」


 私は少しだけ戸惑いながら彼にそう言いました。


「こんなことでお前に怪我なんかさせたくないからな。嫌か?」

「い、嫌では無いですよ……少しだけ恥ずかしいですけど……」


 周りを軽く見ると、色々な人から視線を受けています。

 私は彼の胸に顔を埋めました。


「まぁ、俺も恥ずかしい気持ちはあるけどな。それでも俺はお前の身の安全を考えたい」


 私が軽く上目遣いで彼を見ると、真剣な表情をしていました。

 そ、そんな目で見ないでください……


「よ、よろしくお願いします……」


 私はそう言って、彼の身体に腕を回しました。

 ……幸せです。

 周りの目はもう気になりませんでした。


「ははは。役得だと思って、駅までの時間を堪能するよ」

「もぅ……隣人さんはえっちです……」


 でも、貴方なら許してあげますよ。

 私は揺れるバスの中で、彼の身体を抱きしめそう思っていました。



 そして、十五分ほど経った頃でしょうか。バスが目的地の駅に到着しました。


「残念だな。もう駅に着いちまったよ」

「あはは。私ももう少し貴方と抱き合って居たかったなぁと思いました」


 私と隣人さんは料金を払ってバスを降りました。


「今回は映画だったけど、プラネタリウムも悪くないなぁとは思ってたんだよ」


 プラネタリウムですか。確か駅の終点に去年出来たと聞いています。私は好きですよ、プラネタリウム。


 あれがデネブアルタイルベガ♪


 なんて言いながら隣人さんと話をするのも楽しそうです。


「なるほど。確か駅の終点にプラネタリウムが去年出来たって聞いてますね。星の名前とか由来とか、私は好きですよ?何か辞退した理由があったんですか」


 私が首を傾げながらそう聞くと、隣人さんは少しだけ笑いながら答えました。


「昨日は結構歩いたからな、プラネタリウムとかだと寝そうな気がしたんだよな」

「あはは!!確かにそれはあるかもしれませんね!!」


 昨日は結構歩きましたからね、薄暗い中で星の話とかを聞いていたら寝てしまうかもしれませんからね。


「プラネタリウムはまた今度行くことにしましょう!!」


 私はそう言葉を続けました。





 そして、駅の中を進み、隣人さんが時刻表を確認しました。


 私と隣人さんはSuicaで駅の構内へと進みます。


 少しすると乗る電車がやって来ました。


 きちんと乗る電車で合ってるかを確認してから私たちは乗車しました。


 電車の中はバスと同じように若干混雑をしていました。

 残念ながら座る場所は無かったです。


「またしても座る場所は無かったですね。ですが、えっちな隣人さん的には嬉しい展開なのでは?」


 私は少しだけ隣人さんをからかうようにそう言います。

 すると彼は笑いながらそれを肯定しました。


「そうだな。超絶美少女の美凪優花ちゃんを抱きしめられるのは役得だと言えるな」


 彼はそう言うと、手すりを掴み私の身体を先程のバスの時と同様に抱き締めて来ました。


「ふふーん。こんなことを許してあげるのは貴方だけなんですからね?」


 私はそう言って、彼の身体に腕を回して抱き締めました。


 すると、隣人さんは私の耳元でとんでもないことを言ってきました!! 


「まぁ、俺以外にこんなことをさせるのは絶対に許さないけどな」


 こ、こ、こ、こんなことを貴方以外にするはずがないじゃないかですか!!

 それに、私の耳元でなんてことをしてくれてるんですか!!


「な、な、な、なんてことをしてくれてるんですか!!」

「あはは。どうした、顔が真っ赤だぞ」


 からかうような隣人さんの言葉。私は彼の胸を拳で叩きました。


「えっちです!!隣人さんは本当にえっちさんです!!」


 その様子を隣人さんは微笑ましそうに見てます。

 は、反省が無いです!!


「まぁ、俺がこんなことをするのはお前だけだよ」


 彼はそう言いながら、私の頭を撫でてくれました。


 も、もぅ……頭を撫でれば良いと思ってませんかね……

 ま、まぁ……許してあげなくもないですけど……


「も……もぅ……私以外にこんなことしたらダメですからね……」


 私がそう言うと、彼はケラケラと笑いながらそんなことを言いました。


「ははは。安心しろよ、そんな相手なんて居ないからさ」


 ホントですか?貴方はみょーーーに『可愛い女の子』と仲が良い気がします。


 奏さんはまぁいいですよ。

 桜井さんとか、桜井さんとか、桜井さんとか!!


「奏さんの『好きな人』は理解しました。ですが、隣人さんは桜井さんとみょーーーに仲が良いと思います」


 私がそう言うと、隣人さんは少しだけ思案しながら言葉を返しました。


「仲がいいと言うか、お互いに『上っ面だけの会話』をしてるからってだけだと思うけどな」

「上っ面だけの会話……ですか?」


 どういう意味でしょうか?


「お互いに仲良くなろうと思ってないからな。当たり障りのない会話をしてるってだけだよ。本音の部分が同じだから話が合ってるように見えるんだろうな」

「な、なるほど……ちょっと良くわかりませんが……」


 首を傾げる私に隣人さんは笑いながら言葉を続けます。


「あはは……そもそも向こうはお兄ちゃん以外の男はどうでもいいと思ってる人だからな。お前が心配するような事は起きないよ」


 し、し、心配なんかしてません!!

 う、自惚れないでくださいよね!!


 ただちょっと!!ちょーーーっとだけ気になるだけですよ!!


「し、心配なんかしてません!!た、ただちょっとだけ!!気になっただけです!!」

「あはは。そういうことにしておいてやるよ」


 彼はそう言うと私の頭を撫でてきました。


「もー!!違うんですからね!!勘違いしないでください!!」

「お?ツンデレのテンプレだな!!」


 つ、つ、つ、ツンデレじゃないです!!

 なんてことを言うんですか!!


 私は彼の手を払い除けて言い返します!!


「ツンデレじゃないですーーー!!!!!!」


「ははは。悪かったよ、美凪」


 そんな私を隣人さんは笑いながらしれっと抱きしめていました。


 はぁ……なんだかとても不名誉なことを言われました……


 そして、そんな私たちを乗せて電車は目的へと走っていきました。




 

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