第十六話 ~着替えを終えた美凪は、言葉を失うレベルの美しさだった件~
第十六話
居間を後にした俺は、着替えをするために親父の部屋にやって来た。
隣の部屋では美凪が着替えをしているだろう。
昨日渡したネックレスは着けてくれるだろうか……
……喜んではくれていたとは思う。
流石に誕生石のネックレスは狙い過ぎたかもしれない。とは思ったが、あいつは結構『ベタ』な物に弱いようにも思えた。
「まぁ、考えていても仕方ないか。俺も身だしなみを整えて、着替えをするか」
俺は部屋着を脱ぎ捨てると、昨日買ってきたTシャツに袖を通し、スキニーパンツを履く。
ジャケットを着る前に髪型を整える。
そして、昨日は着けていなかったチョーカーを着けた後にジャケットを着る。
「まぁ、悪くないな」
鏡に映った自分の姿は、美凪の隣を歩いても許される程度には仕上がってるとは思えた。
見た目が全てとは言わないが、それなりに整った顔立ちと高身長と呼ばれるレベルに産んでくれた親には感謝したい。
こればかりは努力ではどうにもならないからな。
「さて、先に居間に行って美凪を待ってることにするかな」
俺は親父の部屋を後にすると、居間へと向かっていった。
居間へとやって来ると、やはりまだ美凪の姿は見えなかった。
男の俺と違い、やはり女の子の準備には時間の手間がかかるのは当然だろう。
だが、こうしてしっかりと時間をかけてくれてることこそ、俺とのデートに彼女が『本気』を出してくれているという証拠だと言える。
この待ち時間の長さが、愛の現れと言っても過言では無いかもしれないな。
「さて、今のうちに映画のチケットの購入を済ませておくかな」
それなりに人気のある映画だ。せっかく見に行ったのに、座席が離れていてはデートの意味が無い。
俺はスマホで映画のサイトから視聴する映画を選択して、上演時間と座席を指定して、チケットの購入をしておいた。
上演当日だったけど、それなりに良い席を並んで確保することが出来た。
あとは映画館で飲み物やポップコーンを買って楽しく見るかな。
そう思っていると、後ろから美凪の声が聞こえてきた。
「お待たせしました、隣人さん」
「いや、別に気にしなくていいぞ。そんなに待ってな……」
振り向いた俺は言葉を失った。
「ど、どうですかね……」
オフショルダーのワンピースに、ストールを羽織り、髪の毛は昨日同様にウェーブを掛けている。
そして、彼女の首元には緑色の綺麗な宝石が光り輝いている。
俺が彼女に贈った『ペリドットのネックレス』
それを美凪は身に着けてくれていた。
控えめに言って、天使。
下界に降臨した美の女神にも見えた。
「……綺麗だ。隣を歩くのが恐れ多い位にな……」
「そ、それは言い過ぎだと思いますよ……ですが、ありがとうございます。隣人さんもとてもかっこいいですよ!!」
美凪は照れたように笑いながら、俺の事も褒めてくれた。
「ははは。ありがとう、美凪。とりあえずお前の隣を歩いても許されるレベルには持ってけたとは思っていたんだけどな」
今日の美凪の見た目は本当にとんでもないレベルだと思えた。
「何を言ってるんですか、隣人さん。貴方だってそこらのモデルなんかよりもずっとオシャレでかっこいいです。それに、そのチョーカーも素敵ですね。良く似合ってますよ」
なるほど、気が付いてくれたんだな。
シンプルな服装だから、アクセントが欲しいと思ってたんだよな。
「これは厨二病を拗らせてる時に買ったものだからな。ある意味では思い出の一品とも言えるかもしれないな」
「あはは!!隣人さんの黒歴史も、役に立ったんじゃないですかね」
「そうだな。でも、流石に腕に鎖を巻くのは辞めておいたよ」
俺が冗談ぽく笑いながらそう言うと、美凪も笑いながら言葉を返してきた。
「気持ちはわかりますが、デートの格好では無いですね。私は指輪と鎖をセットにしてた時がありましたよ」
「あはは。本当にお前は女の子だったのか?と思いたくなるような趣味だな」
俺のその言葉に、美凪は頬を膨らませて抗議をした。
「むーー!!失礼ですね!!この超絶美少女の美凪優花ちゃんに向けるセリフじゃないですよ!!」
「あはは。ごめんな、美凪」
俺はそう言って美凪に軽く謝罪を入れると、彼女に手を差し出す。
「美凪優花さん。俺とデートに行ってくれませんか?」
真剣な表情で彼女をデートに誘う。
美凪はふわりと笑いながら俺の手を取ってくれた。
「ふふーん。貴方がそこまで言うなら良いでしょう。この美凪優花ちゃん。隣人さんとデートに行ってあげますよ」
手を取ってくれた彼女に俺は笑いかける。
「今日も楽しく過ごそうな、美凪」
「はい!!今日もよろしくお願いします、隣人さん!!」
こうして俺と美凪は、一緒に家を出てから映画館へと足を運んだ。
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