第十七話 ~美凪と楽しく話をしながらバスと電車で映画館へ向かった件~
第十七話
家から出た俺と美凪は、バス停に向かって歩き始める。
「今日は駅まではバスで行くことにしよう」
「そうですね。昨日は歩いたので少し足に疲れがあります」
「駅に着いたら電車で映画館がある駅まで移動する感じだな」
「了解です!!」
昨日行ったショッピングモールの中にも映画館はある。
だが、昨日も行った場所に二日連続で行くのもつまらないと思った。
そして、バス停へと到着した俺と美凪。
俺は時刻表を確認すると、そこまで待たずにバスが来ることがわかった。
「良かったな。すぐにバスは来るみたいだ」
「意外と市内バスの本数が多いですよね。とても便利だと思います」
「そうだな。田舎の方だと一時間に一本とかだからな」
「あはは。私が前に住んでたところがそんな感じでした。結構な田舎だったんで」
「奇遇だな。俺も前に住んでたところは結構な田舎でな。夜になると田んぼからカエルの鳴き声が聞こえてきたぞ」
「あはは。田舎あるあるですね!!」
なんて話をしているとバスがやって来た。
「よし。乗るか」
「はい!!よろしくお願いします」
俺は美凪の手を握りながらバスへと乗りこむ。
バスの中は日曜日なので少し混雑をしていた。
残念ながら座る場所が無かった。
「座れなかったのは残念ですね」
「まあ、そういう時もあるわな。バスは結構揺れるからな。俺に捕まってろよ」
俺は手すりを掴みながら、美凪を身体に抱き寄せる。
「し、しれっと私を抱き寄せましたね……」
「こんなことでお前に怪我なんかさせたくないからな。嫌か?」
「い、嫌では無いですよ……少しだけ恥ずかしいですけど……」
「まぁ、俺も恥ずかしい気持ちはあるけどな。それでも俺はお前の身の安全を考えたい」
俺が真剣な目でそう言うと、美凪は顔を赤くして俺に抱きついた。
「よ、よろしくお願いします……」
「ははは。役得だと思って、駅までの時間を堪能するよ」
「もぅ……隣人さんはえっちです……」
なんて話をしていると、すぐにバスは駅へと辿り着く。
「残念だな。もう駅に着いちまったよ」
「あはは。私ももう少し貴方と抱き合って居たかったなぁと思いました」
そして、料金を払ってバスから降りたあとは駅へと向かう。
「今回は映画だったけど、プラネタリウムも悪くないなぁとは思ってたんだよ」
「なるほど。確か駅の終点にプラネタリウムが去年出来たって聞いてますね。星の名前とか由来とか、私は好きですよ?何か辞退した理由があったんですか」
首を傾げる美凪に俺は笑いながら答える。
「昨日は結構歩いたからな、プラネタリウムとかだと寝そうな気がしたんだよな」
「あはは!!確かにそれはあるかもしれませんね!!」
プラネタリウムはまた今度行くことにしましょう!!
そういう美凪の言葉に、俺は笑いながら首を縦に振った。
時刻表を確認したあと、俺と美凪はSuicaで駅の構内へと進む。
少しすると乗る電車がやって来た。
俺たちはそれが正しいものなのかを確認した上で乗車する。
中はバス同様に若干混雑をしていて、座る場所は無かった。
「またしても座る場所は無かったですね。ですが、えっちな隣人さん的には嬉しい展開なのでは?」
「そうだな。超絶美少女の美凪優花ちゃんを抱きしめられるのは役得だと言えるな」
俺は美凪の言葉に、笑いながらそう答えた。
「ふふーん。こんなことを許してあげるのは貴方だけなんですからね?」
電車の手すりに捕まりながら、俺は美凪の身体を抱き寄せる。
そして、美凪の耳元に顔を寄せて囁く。
「まぁ、俺以外にこんなことをさせるのは絶対に許さないけどな」
俺がそう言って顔を離すと、彼女は顔を真っ赤にしていた。
「な、な、な、なんてことをしてくれてるんですか!!」
「あはは。どうした、顔が真っ赤だぞ」
からかうような俺の言葉に、美凪はむくれた表情で俺の胸をポカポカと叩く。
「えっちです!!隣人さんは本当にえっちさんです!!」
全然痛くないけどな。ただただ可愛いだけの行為だな。
「まぁ、俺がこんなことをするのはお前だけだよ」
俺はそう言いながら、美凪の頭を優しく撫でる。
すると、彼女は毒気が抜かれたのか少しずつ大人しくなっていった。
「も……もぅ……私以外にこんなことしたらダメですからね……」
「ははは。安心しろよ、そんな相手なんて居ないからさ」
俺がそう言うと、美凪は少しだけジトっとした目でこっちを見てきた。
ん?なんだ、何かあるのかな。
「奏さんの『好きな人』は理解しました。ですが、隣人さんは桜井さんとみょーーーに仲が良いと思います」
……桜井さんか。
ぶっちゃけあの人は『お兄ちゃん以外の男にはなんの興味もない』って人だから、誰に対しても扱いは変わらないとは思うんだけどな。
「仲がいいと言うか、お互いに『上っ面だけの会話』をしてるからってだけだと思うけどな」
「上っ面だけの会話……ですか?」
「お互いに仲良くなろうと思ってないからな。当たり障りのない会話をしてるってだけだよ。本音の部分が同じだから話が合ってるように見えるんだろうな」
「な、なるほど……ちょっと良くわかりませんが……」
「あはは……そもそも向こうはお兄ちゃん以外の男はどうでもいいと思ってる人だからな。お前が心配するような事は起きないよ」
俺がそう言うと、美凪は顔を赤くしながら言葉を荒らげる。
「し、心配なんかしてません!!た、ただちょっとだけ!!気になっただけです!!」
「あはは。そういうことにしておいてやるよ」
「もー!!違うんですからね!!勘違いしないでください!!」
「お?ツンデレのテンプレだな!!」
「ツンデレじゃないですーーー!!!!!!」
そんな会話をしながら、俺と美凪は映画館までの電車の時間を過ごした。
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