第十五話 ~美凪が作った朝ごはんは完璧でかなり美味しかった件~
第十五話
今回は、美凪に全てを任せようと思っているので、俺は台所に立つことすらしないつもりだ。
俺は美凪の様子を居間から覗いて見た。
「卵は四つ使ってスクランブルエッグにします。ウインナーがあるのでその後焼きましょう。レタスときゅうりとトマトでサラダにします。今日はご飯なのでインスタントのお味噌汁があった方が嬉しいと思います」
なんて声が聞こえてきた。
そして、美凪はまずはレタスを水で洗って手際よくちぎっていった。
「~~~♪~~~♪」
鼻歌を歌いながらレタスをちぎっていく美凪。
その様子に少しだけ不安を覚えた俺だったが、レタスをちぎり終え、きゅうりとトマトを包丁で切る時には、鼻歌を辞めて真剣な表情で包丁を扱っていた。
「あはは。包丁を扱う時は真剣に。ちゃんとやってるな」
そして、サラダを作り終えた美凪はボウルを持ってこちらにやって来た。
「…………ジロジロ見てるのはわかってますからね?」
ジトリとした眼で俺を見ながら、美凪はそう言ってきた。
「別に見てるくらいなら良いだろ?」
「ふふーん!!まぁ!!この超絶美少女の美凪優花ちゃんを眺めていたい気持ちは良くわかりますからね!!」
美凪はそう言うと、再び台所へと向かっていった。
……なんだか、新妻の美凪を見てるような気分になってきな。
そして、手際良く卵を割って菜箸で溶き卵を作っていく。
この調子なら大丈夫そうだな。
「ははは。さて、あまり美凪の姿ばかり見ててもアレだしな。大人しくテレビでも見てるとするかな」
俺は美凪から視線を外すと、テレビの方へと視線を向けた。
「お待たせしました!!優花ちゃんスペシャル朝ごはんの完成です!!」
「おおー。これは凄いな……完璧じゃないか」
しばらくすると、テーブルの上には美凪の作った朝ご飯が並んだ。
レタスときゅうりとトマトのサラダの上には、シーチキンが乗せてある。きゅうりのスライスは少し厚めにしてあった。
スクランブルエッグは、そぼろの様にはなっておらず、トロトロ加減は完璧だった。
そして、塩コショウで味を付けられたウインナー焼きも添えられている。
並行してケトルでお湯を作っていたのだろう。
インスタントのお味噌汁も着いている。
そして、昨日炊いた白米はしっかりと電子レンジで温めてある。
「これは正しく、優花ちゃんスペシャル朝ごはんと言っても過言では無いな」
「ふふーん!!私の才能が怖いです!!それでは隣人さん。冷めないうちに食べましょう!!」
「そうだな。じゃあ食べようか」
俺と美凪は「いただきます」と声を揃えて言うと、朝ごはんを食べ始める。
俺はまずはスクランブルエッグをひと口食べる。
「……うめぇ」
ふわふわトロトロのスクランブルエッグは自分が作った時に『今日は完璧な出来だ』と思った時と同じ仕上がりだった。
「自分で言うのもあれですけど……めちゃくちゃ美味しく出来てますね……」
スクランブルエッグを食べながら、美凪は驚いたようにそう言っていた。
「これなら次のステップに進んでもいいかもしれないな」
「つ、次のステップ……ですか?」
俺の言葉に、美凪は真剣な表情で言葉を返す。
「料理の工程は一通り出来るようになったよな。次は『レシピにそって色々な料理を作る』ってのにチャレンジしてみようか」
「おお!!遂に私もそのレベルになったのですね!!」
「レシピの通りに作る。ってのは基本的な料理スキルが無いと出来ないことだからな。とりあえずは失敗の少ない『煮物料理の王様。肉じゃが』辺りを作って貰おうかな」
「肉じゃがは大好きです!!あれがあれば無限にご飯が食べられます!!」
お前は何がおかずでも『無限にご飯が食べられます!!』って言ってる気がするけどな……
「肉じゃがが優れてる点は、たくさん作ってもアレンジが出来る。って点なんだよ」
「な、なるほど……」
「初日は肉じゃがを食べる。次の日はカレーのルーを足して和風カレーにする。その次の日は残ったカレーを麺つゆを加えながら味を整えてスープにすればカレーうどんになる。凄いだろ?」
「とんでもない料理なんですね、肉じゃがは!!」
「ちなみに、今日の夕飯はカレーだからな。明日は肉じゃがにして、余ったらカレーじゃなくてコロッケにしてもいいな」
「り、隣人さんは色々なレシピを知ってるんですね……」
「まぁ……母親が他界してからずっと家事をやってきたからな。料理の経験はかなりあるぞ」
「……すみません」
少しだけ表情を曇らせた美凪。あぁ、母親が他界したって話か。
「母親のことなら気にするなよ。もう五年も前の話だしな」
「そ、そうですか……」
それに、親父も『再婚相手』を見つけてるみたいだしな。
「あの病気のせいってのはお前の父親と同じだよ。もう落ち着いた。とは言うけどな。だからこそ、手洗いやうがいはしっかりとやらないとな」
「はい!!そうですね。大切な人を病気で亡くす経験はもうしたくありませんから」
そして、俺は聞こうと思っていたことを美凪に問い掛けた。
「今日は映画館に行こうと思ってるけど、それだけだと時間が余ると思ってるんだ」
「そうですね。その言い方ですと、隣人さん的には何か案があると思いますが?」
「あはは。まぁ、俺の考えなんだけど、映画館の近くに猫カフェがあるんだよ」
「行きます!!」
猫アレルギーとか聞く前に、賛同が得られたな。
「お前に猫アレルギーとかあるか?とかを聞こうと思ってたんだよ。無いならそこに行こうかと思っていたんだよ」
「そう言うのは無いですね。猫ちゃん大好きです!!」
両手で拳を作りながら、美凪はそう力説した。
「超絶美少女の美凪優花ちゃんですが、猫ちゃんの可愛さはこの私に匹敵すると思ってます!!」
「…………そうか」
まぁ、猫みたいなところがお前にはあるよな。
犬っぽいところもあるけど。
「じゃあ映画館で映画を見たあとは、猫カフェで食事をしながら猫と戯れる。そんな一日にしようか」
「はい!!それでは身支度を済ませて再びこの部屋に集合しましょう!!」
そう言って俺と美凪は身支度をする為に、居間を後にして自室へと向かった。
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