第三話 ~デートの一日目はショッピングに行くことに決めた件~

 第三話




「ふふーん!!どうですか、隣人さん!!私の完璧なウインナー焼きは!!」

「うん。とても良く出来てると思うぞ」


 テーブルの上に乗せた皿の上には、俺の作ったスクランブルエッグと美凪の作ったウインナー焼きが乗っている。


 出来上がりの良さに、美凪はドヤ顔で俺にそう言ってくる。

 だが、確かに良く出来ているとは思うよな。


 食パンをトーストしてからマーガリンを塗り、スクランブルエッグとウインナーとレタスを挟んで食べる。


 パリッとしたウインナーの焼き加減は完璧で、彼女が自画自賛するのも頷ける。


「美味しいよ、美凪。だが何よりも、フライパンを洗う時に……」

「火傷をしなかったことが偉い!!ですよね?」


 俺が言おうと思ったことを、笑顔で先に言う美凪。


「あはは。そうだな。」


 俺はそう言って笑った後に美凪に言う。


「俺はさ、良く漫画とかアニメとかで見かける手に傷を作って料理を作りました。ってのは嫌なんだ。そうして出された料理がどんなに味が良いものでも、俺は素直に喜べない。そう思ってる」

「……はい」


「お前には絶対に怪我をして欲しくない。不格好でもいい。不揃いでもいい。焦げても構わない。砂糖と塩を間違えても構わない。だけど、怪我にだけは十分に気をつけてくれ」

「はい。わかりました」


 俺のその言葉に、美凪は微笑んで首を縦に振った。


「貴方は、優しい人ですね」

「こんなのは普通だよ」


 そんな話をしながら、俺と美凪は朝の食事を終えた。




 食器を流しに入れ、俺が洗っている間に美凪がお湯を沸かしてコーヒーを作っていた。


「インスタントコーヒーに隣人さんはミルクと砂糖は使いますか?」

「使うぞ。砂糖を二つにミルクを一つだな」


 俺がそう言うと、美凪は少しだけ意外そうな顔をした。


「はぇ……私の勝手なイメージでは『俺はコーヒーはブラック以外は飲まないんだよ。キリッ』みたいなことを言うと思ってました」

「あはは……ブラックコーヒーは中学二年生の時にやって見たけど苦くて飲めなかったよ。それからだな。砂糖とミルクを使い始めたのは」

「なるほど。厨二病と言うやつですね」


 なんてことを言いながら、美凪も俺と同じ量の砂糖とミルクを用意していた。


「隣人さんに黒歴史はあるんですか?」

「あったとして、話すと思うのか?」


 俺がそう答えると、美凪は笑いながら


「机の中を見たら黒いノートとか出てきませんかね?」


 なんて言ってきた。


「それ系の黒歴史は無いな。あるとしたら傘を振り回しながら『卍解!!』とか『アバンストラッシュ!!』とか叫んだくらいかな」


「そんなの、みんな通る道ですよ?ちなみに、私は『呼吸』の使い手です!!」

「水の呼吸とかかよ?」


「いえ、波紋の呼吸です!!」

「お前本当は何歳だよ……」


「ふふふ。私は結構そう言うのも好きでしたからね。ところで、この後はどうしますか?」


 首を傾げる美凪に、俺は自身の希望を話す。


「そうだな。個人的には買い物に行きたいな。背が伸びてるからだと思うけど、洋服が少し合わなくなってきててな」

「……羨ましいですね。まだ伸びるつもりですか?」


 180cm程の俺の身長のだいたい胸の辺りだから、美凪は160位かな?女の子としては普通か少し小さいくらいか。


「美凪だってそんなに小さいわけじゃないだろ?」

「もう少し欲しかったと思いますよ。あと5cmくらい」


 お前の胸はあと5cmは余裕で大きくなりそうな気がするけどな……


 そんなことを思っていると、彼女の胸に視線が行っていたのだろう。美凪は頬を染めて少しだけ恥ずかしそうに胸を隠す。


「あ、あんまりジロジロ見ないでくださいよ……恥ずかしいです……」

「あ、すまん……」


「もぅ……ダメですよ。隣人さんはホントにえっちなんですから……」


 言葉の内容とは裏腹に、美凪は少しだけ嬉しそうにも見えた。


「それで、どうする?ショッピングモールで買い物をする感じでもいいか?」

「そうですね。私も春物を欲しいなと思ってましたので、ちょうど良いかなと思います」


 そういった後、美凪は俺に向かってニコリと笑う。


「そうですね、貴方好みの服を選んで貰ってかまいませんよ?」

「……え?」


「今日買った服を明日のデートで着る。と言うのはどうでしょうか?昨日のワンピースはほとんど汚れてないので、今日も着ようと思ってます」

「そうだな。俺もほとんど汚れてないしな。じゃあお互いの好みに合わせるようにするか」


「それは良いアイディアですね!!では早速着替えてショッピングモールへと向かいましょう!!」


 俺のその提案に、美凪は手を叩いて賛成した。


「貴方の部屋で着替えてきますね」

「おう、じゃあ準備が終わったら居間に集合しようか」


 そう言うと、俺と美凪は椅子から立ち上がって部屋へと向かう。


「……隣人さんはえっちですからね。覗いたらダメですよ?」

「……覗かないから」


 俺の部屋の前で、美凪が少しだけからかうようにそう言ってきた。


「あはは。ではまたあとでお会いしましょう」


 美凪はそう言って部屋へと入っていった。


「よし、じゃあ俺も着替えるかな」


 俺も部屋に入り、パジャマを脱いでいく。


 あの超絶美少女の美凪を俺好みの服装に出来る。

 なんだろうな。すごい優越感だな。


「さて、とりあえずは美凪の隣を歩いても恥ずかしくないレベルには仕上げないとな」


 俺は鏡の前に立ち、髪型から服装まで本気で整えて行った。

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