第四話 ~初めて握った美凪の手はとてもドキドキした件~
第四話
服装と髪型を整え、美凪の隣を歩いても恥ずかしくないような見た目のレベルにした俺は、居間へと向かう。
彼女の身支度にはもう少し時間がかかるだろうな。と思った俺はテレビをつけて時間を潰すことにする。
ちょうどワイドショーでは今日と明日の天気について話をしていた。
今日も晴れ。明日も晴れ。
降水確率は0%だった。
「天気に恵まれて良かったな。せっかくのデートなのに、雨とか降ったら最悪だからな」
なんて呟いていると、
「ふふーん!!パーフェクト美少女の美凪優花ちゃんは最強の晴れ女でもありますからね!!この天候の予報は当然と言えるでしょう!!」
身支度を整えた美凪が後ろからやって来る。
白いワンピースに薄らと施した化粧。
栗色の髪の毛を少しだけウェーブをさせているのが、昨日と少しだけ違う点かな?
正直な話。そこら辺のアイドルなんか裸足で逃げ出すようなレベルの美少女だと思えた。
「昨日も言ったけど、とても良く似合ってるよ美凪」
「ふふーん!!まぁこの私が本気を出したらこの位は当然ですよ!!」
「俺とのデートに本気を出してくれるなんて嬉しいな。そんなに楽しみにしてくれてるのかな?」
俺が笑いながらそう言うと、彼女は少しだけ恥ずかしそうに言葉を返す。
「……そ、そうですよ。男の人とデートをするのなんて初めてですからね。そ、それに……私は少なからず貴方には好意を持ってますからね。楽しみにしているってのは間違いでは無いですよ」
やべぇ……めちゃくちゃ可愛いこと言ってるぞ、こいつ……
「そうか。その……俺も女性とデートをするのは初めてだからな。何か変なこととかあったらすぐに言ってくれ」
「あはは……そうですね。ですがあまり肩肘張らずに自然体で楽しみましょう。私はいつもの貴方との会話がとても楽しいですからね」
……随分と破壊力のあるセリフを連発してきてるな。
「そうだな、とりあえず自然体で楽しむことにしようか」
俺はそう言うと椅子から立ち上がる。
「じゃあ行こうか、美凪」
「はい!!」
そして、俺と美凪は部屋から出ると、玄関の扉に鍵をかける。
「ここから駅までは歩いて二十分位だけどどうする?」
「歩いて行くか、バスを使うか、自転車を使うかですかね」
「そうだな。個人的には自転車は無しにしたい。お前の服がシワになるのは嫌だし、そもそもスカートの女性に自転車を漕がせたくない」
「配慮してもらってありがとうございます。そうですね、私としては徒歩で駅まで行きたいです」
「何か理由はあるのか?」
俺が聞くと、美凪は少しだけ頬を染めながら答える。
「貴方と手を繋いで歩いてみたいです」
「そ、そうか……なら、駅までは徒歩で行こう。駅からはショッピングモール行きのバスが出てるからそれを使う感じで」
俺はそう言うと、美凪に右手を差し出す。
「手を繋いで歩こう。車道側は俺が歩くからな」
「は、はい!!」
美凪は俺の右手をそっと左手で握りしめる。
柔らかくて少しだけひんやりとした美凪の小さな手。
壊れ物を扱うように、俺はそっと握り返す。
「て、照れますね……」
「そうだな……でも、悪くないな」
歩幅を合わせながら、俺と美凪は駅へと歩いて行く。
……少しだけ手を繋いで歩くことに慣れてきたな。
俺より歩幅が小さい美凪の歩く速度に合わせるのにも慣れてきた。
「……その、隣人さん。お願いがあるんですが」
「ん?どうした、改まって」
そんなことを思いながら歩いていると、美凪が立ち止まって俺を上目遣いで見つめてきた。
「こ、恋人繋ぎ。というのをしてみませんか?」
「……そ、そうか」
恋人繋ぎ。指と指を絡めて繋ぐ手の繋ぎ方だよな。
「こ、恋が感謝か知るためにもどうですかね?」
「俺はそんな理由が無くても、お前とならそういう手の繋ぎ方をしてもいいと思ってるよ」
俺は美凪に向かってそう言うと、指と指を絡めて繋ぐ恋人繋ぎに、手の繋ぎ方を変える。
なんだろうな。手の繋ぎ方を変えただけなのに、彼女の存在を強く感じる。
「……こ、これは……心にきますね」
「そうだな。でも、俺はこうして歩くのは嫌いじゃない」
「そうですね。私も嫌いじゃないですよ。その……むしろ歓迎してると言えますね」
「そうか。じゃあ今日と明日はこうして手を繋いで過ごそうか」
俺がそう言うと、美凪はぱあっと笑顔になる。
「は、はい!!喜んで!!」
……お前のその笑顔は本当に可愛いな。
そんなことを思って歩いていると、駅前のバス停へと辿り着く。
「どうやらそんなに待たないでも大丈夫みたいだな」
時刻表を確認した俺は美凪にそう言う。
「良かったですね。ちなみに隣人さん。今日のお昼はどうしますか?」
「そうだな。ショッピングモールにはイートインがあるからな、買い物が終わったらそこで食べるのが楽だろうな」
「そうですね。実はちょっと食べてみたいお店があるんですよ」
美凪はそう言うと、スマホの画面を俺に見せる。
『めちゃはやステーキ』
という名前のステーキ屋だった。
「なるほどな。聞いたことがあるステーキ屋だな。値段の割には美味い。そんな話だな」
「はい。正直な話を言えば『タレ』が美味しい。そう聞いています」
「そうだな。肉を美味しく食べるのに欠かせないのはタレの存在だからな」
俺がそう言うと、美凪はニヤリと笑って俺に言ってきた。
「隣人さんならここのステーキを食べたら、同じ味のタレを作れないかなぁ……と思ってます!!」
「あはは。流石に全く同じ味とは行かないだろうけど、近い味なら再現することは出来るぞ?」
「ホントですか!!流石隣人さんです!!」
「店の味をある程度のレベルで再現する。ってのはそんなに難しい事じゃないんだよ。でもそこにかかる『手間』であったり『コスト』が出来上がったものに見合わないことが多いんだよな」
「再現するのは難しい事じゃない。って台詞がもう凄いですね……」
なんて話をしていると、ショッピングモール行きのバスがやって来た。
「よし。このバスだな、乗るぞ美凪」
「はい!!」
俺はそう言うと、先にバスステップに上がってから美凪に手を差し出す。
「あはは。紳士ですね」
「転びやすそうなミュールを履いてるしな。この位は当然だろ?」
「お気遣いありがとうございます。隣人さん」
俺と美凪はそんなやり取りをしてバスに乗る。
バスの中は空いていたので、並んで席に座ることが出来た。
「窓側の席は私が貰いましたぁ!!」
「あはは。そんなにボタンが押したいのか?」
「ふふーん!!この役割は誰にも譲りません!!」
なんて言いながら、美凪は窓側の席に座った。
「それじゃあショッピングモールまでの間はお互いに好みの服装とかを少し話でもしてようか」
「はい!!」
しばらくすると発車するバス。
俺と美凪は他愛の無い会話をしながら、バスの中で時間を過ごした。
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