第二章
美凪side ①
美凪side ①
隣人さんの誕生日パーティを終え、私と彼は隣の部屋へと戻りました。
どうやら私を待つ間にお風呂の準備も済ませていた隣人さん。当然ですが、一番風呂は家主の彼に譲りました。
そして、彼の後に入るお風呂は少しだけ特別な気持ちになりました。
今日は、湯船に浸かりました。
彼が入ったお湯。
なんか……意識してしまいます……
『今、出ました。良いお湯でした』
居間でニュース番組を見ていた彼に声を掛けます。
『おう。じゃあテレビを消すから、その間にドライヤーで乾かしてくれ』
ブレーカーが落ちることに配慮した彼の言葉。
私は少しだけイタズラ心が芽生えました。
『もし良ければ、私の髪の毛を乾かしてみませんか?』
『…………え?』
髪の毛が好き。な隣人さん。
私の髪の毛を好きなだけ触れるとなればどうなるんですかね?
なんて思いながら聞くと、
『わかった。責任を持って行う。雑に扱わないことを約束する』
し、真剣な表情で了承してくれました。
そして、テレビを消したあと洗面所でドライヤーの準備をします。
『……ど、どうぞ』
『あぁ……その、初めての経験だから何か変なことがあったら直ぐに言ってくれ』
彼はそう言うと、ドライヤーのスイッチを入れて私の髪の毛を乾かし始めました。
温風を近づけ過ぎないように、一箇所に集中させないように、私の髪の毛を少しだけ持ち上げてサラサラとバラけさせながら、丁寧にドライヤーを当ててくれています。
『……どうだ』
『気持ちいいです……』
『……え?』
は!!!???
つい本音が出てしまいました!!
『ち、違います!!間違えました!!お、お上手ですね、隣人さん!!』
『そ、そうか!!あはは、それは良かったよ!!』
私も彼も真っ赤になりながらそう言い合いました。
『その……もし良ければ、これからもしますか?』
『そうだな。美凪さえ良ければ……』
『じゃあ……よろしくお願いします……』
毎日……彼からこうしてドライヤーを当てて貰える。
嬉しいですね。
そして、髪を乾かし終えた私は、そのまま歯を磨きます。
隣人さんも一緒です。
ふふふ。こうしていると夫婦みたいですね。
『こうしてるとなんか夫婦みたいだな』
『……私が恥ずかしくて言わなかったことを躊躇いなく言いましたね?』
『すまん……口が滑った』
あはは。なんか、今日はお互いに口が軽い日です。
『じゃあ、おやすみ美凪。また明日』
『はい。おやすみなさい、隣人さん』
私と彼はそう言って自分の寝室へと入りました。
私は隣人さんが寝ているベッドに潜り込んで布団を被ります。
まだまだ彼の匂いが残ってる布団に包まれると、幸せな気持ちになります。
先程は彼の本心と私の本心をさらけ出し、また少し仲良くなれたのかな。と思いました。
ですが、私はあの時。一つだけ『嘘』をつきました。
それは……
『隣人さんのバカ……私のこの気持ちが『感謝』な訳が無いじゃないですか……』
そう。私は彼に……海野凛太郎さんに『恋』をしています。
じゃあ、なんであんな事を言ったかと言うと……
『私は、貴方に対して非常に大きな好意を抱いています』
この言葉は私の『告白』でした。
そして、一世一代の勇気を持って彼に伝えたんです。
『それこそ。これを使うような行為すら、貴方から求められればしても構わない。そう思えるくらいには』
え、えっちなことをしても良いですよ?って私は彼に言ったんです……
でも、彼は私のこの言葉を聞いた時に……
一瞬だけ……表情を曇らせました。
そう。隣人さんは心の底からは『私を求めてない』
悔しかったです。ここまで悔しい思いをしたのは生まれて初めてです。
だから私は逃げたんです……恋か感謝かわからない。などと言って。
ですが、私はまだ諦めた訳じゃ有りません。
『彼を絶対に私に惚れさせてみせる』
嫌われてはいないと思います。むしろ好かれてる確信すらあります。
ですが、私の『好き』と彼の『好き』には『温度差』があります。
その温度差を埋めて、彼が私無しでは生きていけない。
私と……したいって、思ってくれると確信が出来たら、もう一度告白をします。
『覚悟してくださいね、凛太郎さん……私を本気にさせた責任を取ってもらいますからね?』
才色兼備の超絶美少女!!
下界に降り立った天使です!!
この美凪優花ちゃんが、たかだか同年代の男の子一人を本気で惚れさせるのなんておちゃのこさいさいです!!
絶対に私にメロメロにさせてやりますからね!!
そして、まずは手始めとして……
『また、貴方の寝ているところにお邪魔しますね……』
深夜。彼が寝静まったと思える時間に目を覚ますようにしてました。
私は布団から抜け出すと、部屋を出てからそっと彼の寝室を覗きこみます。
『……すぅ……すぅ……』
オレンジ色の光に照らされて、私の想い人が寝ています。
『……失礼します』
私はそっとそう呟いてから、中に入ります。
そして、彼を起こさないように注意をしながら布団の中に入ります。
『……幸せです』
先程の布団とは比べ物にならない程に彼を感じることが出来ます。幸せな気持ちが胸に溢れてきます。
私はそっと彼の身体に腕を回して抱きしめます。
『……おやすみなさい、凛太郎さん』
私は……貴方が好きです。
でも、今はまだ伝えません。
この気持ちは胸の中にしまっておきます。
明日……いえ、今日からですね。
いっぱいいっぱい……アプローチをかけていきますからね?
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