第二十四話 ~放課後。山野先生から生徒会に入らないか?と誘われた件~
第二十四話
学級委員に任命された美凪は、意気揚々と教壇の前まで歩いてくる。
そして、豊かに育った胸を張りながら挨拶をした。
「学級委員になった美凪優花です!!隣人さん……海野くんではこの大役は務まらないと思ったので立候補しました!!別に愛してるとかそういうのじゃないです!!勘違いしないでください!!」
一昔前の『ツンデレヒロイン』みたいなことを言うなよ……
「このパーフェクト美少女の美凪優花ちゃんが学級委員になったのでこのクラスは一年間は安泰です!!安心して学業に励むと良いです!!」
そう言ってこいつは挨拶を締めた。
どうやらもう取り繕うつもりは無いようだ。
「それでは、海野と美凪。これから先はお前たちが司会をしろ」
「「はい!!」」
俺たちはそう返事をする。
俺は美凪に
「じゃあ美凪、書記をやってくれ。お前の方が文字が綺麗だからな」
と話をした。
テストの答案を見る限り、こいつの文字は俺より綺麗だった。
「ふふーん!!美しいこの私から生み出される文字は美しい。これは世の中の必然です!!」
「あはは……じゃあ美凪。よろしく頼むわ」
「任されました!!」
そして、美凪は黒板に
学級委員
美凪優花・海野凛太郎
と書いた。
「それでは各委員を決めたいと思います」
俺は教壇に上がってクラスメイトに話を始める。
「それでは図書委員から決めていきたいと思います。希望の方は挙手をお願いします!!」
そして、LHRの時間をめいっぱい使い、各委員の選出が終わった。
幸也と奏は図書委員になっていた。
『くじ引きで変な委員に強制的に入ることになるくらいなら、二人で平和そうな委員に入った方が良いよね』
『そうそう。私は嫌だもん、幸也以外の男とペアになるとか。あ、凛太郎くんは別だよ?まぁでも、凛太郎くんにはもう優花ちゃんが居るからね。しくしく。昔の女は立ち去ることにするわ……』
なんて話をしていたからな。
LHRを終えて、帰宅に向けたSHRの時間になっていた。
その場で山野先生は俺と美凪を見て話をした。
「海野に美凪。ご苦労だったな。しっかりと時間内に委員の選出を行えたのは評価が高いぞ」
「いえ、山野先生。俺の評価にしないでください。クラスメイトのみんなが協力的だったお陰です」
山野先生の言葉に俺は首を横に振った。
「ふふーん!!そうですね。隣人さんはクラスメイトの意見を集めてただけです!!結局のところ、くじ引きも使いませんでしたしね。クラスメイトと、この美凪優花ちゃんのお陰と言えるでしょう!!」
美凪の言葉に苦笑いを浮かべながらも、先生は俺を見て言う。
「なるほどな。そういう姿勢は嫌いでは無い。海野凛太郎。放課後に進路指導室に来い。話がある」
「……え?」
な、何を言われるのだろうか……
「それでは、今日のSHRはこれで終わりにする。部活動の体験入部など、興味のある部活に顔を出すのも良い。そのまま帰宅しても良い。自由にするがいい。では解散」
山野先生はそう言うと、教室から出て行った。
「……隣人さん。山野先生から呼び出しを受けてましたね。何をやらかしたんですか?」
「し、知らねぇよ。何だよ、進路指導室って……」
とりあえず。行かないとまずいよな……
「じゃあな、凛太郎。俺は野球部に顔を出すよ!!」
「バイバイ凛太郎くん。私は幸也に付き添って来るからね」
幸也は野球部に、奏は『幸也専属マネージャー』になるだろうな。幸也のポジションはキャッチャーだ。
打力と守備力は高いが『知能』が低い幸也。
打者の傾向とかを試合前に奏が幸也に叩き込むことで、完璧なキャッチャーに仕立て上げていた。
「じゃあな、幸也に奏」
俺はそんな二人を見送ってから、席を立つ。
「さて、進路指導室に行ってくるかな」
「じゃあ。私は待ってますね」
当然です。と言った表情の美凪に俺は聞く。
「先に帰っててもいいぞ?」
そう言うと、美凪は不機嫌そうな顔をする。
「今日は一緒に買い物をする。そう話してましたよね?忘れてしまったのですか??」
「あぁ……すまん。そうだったな」
俺がそう言うと、美凪は笑ってくれた。
「それでは進路指導室に向かいましょう。外で待ってますからね」
「あぁ。何を話されるかはわからないけど、とりあえず話は聞いてみるよ」
そう話して、俺と美凪は進路指導室へと向かって歩いた。
『進路指導室』
「ここですね」
「そうだな」
俺と美凪は部屋の上に書かれたプレートを見てそう話した。
「それではここで待ってますね」
「あまり遅くならないとは思うけど、もし遅いようなら先に……ん」
俺の唇を美凪が人差し指で抑えた。
そして、俺の目をじぃっと見つめて言ってきた。
「私は貴方を待ってます。それはどんなに遅くなっても。です。次に先に帰れ。なんてことを言ったら、貴方の部屋にあったえっちな本の名前を叫びながら帰りますよ?」
「あはは……それは勘弁だな……」
俺はくるりと踵を返して、扉の前に立つ。
「すぐに終わらせてくる。そしたら一緒に買い物に行こう」
「はい!!」
コンコンと扉をノックすると、
『ノックなんて文化はここには無い!!鍵は掛かって無いから勝手に入って来い』
と聞こえてきた。
「あはは。本当に面白い先生だ」
俺はそう呟いてから、扉を開けて中に入る。
「失礼します」
中にはタバコを吸っている山野先生が居た。
「来たな。外には美凪が待っているのだろう?そういうイチャイチャは学校では控えろよ?」
「見てたのですか?」
俺が苦虫をかみ潰したような気分で切り返すと、
「カマをかけただけだ。海野凛太郎。こういう事をしてくる人間は少なくない。今後は気を付けろよ?」
「……はぁ。ご教授ありがとうございます」
俺はそう呟いて扉を閉めると、先生の前にあるソファーに腰を下ろした。
「それで、先生はなんで俺をここに呼んだんですか?美凪とのことをからかうためじゃないですよね?」
「私はお前のように『会話が出来る』人間は嫌いでは無い。何、悪い話では無いよ」
先生はそう言うと、テーブルの上にある灰皿でタバコを揉み消した。
そして、俺の正面に坐る。
「海野凛太郎。お前にお願いしたいことがあってね」
「……お願い。ですか?」
俺がそう聞き返すと、山野先生は少しだけ笑いながら話を切り出した。
「海野凛太郎。生徒会に入らないか?」
と。
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