第十五話 ~夕飯の材料を買いに美凪とスーパーに行ったら夫婦と勘違いされた件~
第十五話
『スーパーマーケット』
俺と美凪は自転車に乗って十五分ほどで近くのスーパーへと到着する。
『ロヒア』と言う安売りをしてるけど結構量が多い。と言うスーパーマーケットに来た。
一点あたりの値段は高いが、単価に直すとお買い得。
そういうお店だ。
会員カードの必要が無い、コス〇コみたいなものだと思ってる。
俺は100円玉を買い物カートに入れて、鍵を外してカートを借りる。カゴを置いたら準備OKだ。
「隣人さん!!私ちょっと楽しみになってきました!!」
「あはは。小さい子供じゃないんだから落ち着けよ」
カートを押しながら店内に入る。
今日の夕飯の分と明日の弁当の分の買い物だ。
「レタスは昨日食べきっちゃったからまた一玉買っておくか。あとは胡瓜とトマトでサラダにするか……」
カートの中にレタスと胡瓜とミニトマトを入れていく。
「おい、美凪。明日の弁当は何入れて欲しい?」
「たこさんウィンナーです!!」
「あはは……なるほどね」
ロヒアはウインナーが美味いからな。入れる予定だったけど、切り方を指定してきたか。
「難しいんですか?」
「あんなん余裕だよ。なんの手間でも無い」
弁当には卵焼きとウインナー。あとはミニトマトをいれるか。
「よし。野菜はこんなもんでいいか。肉を買いに行くか」
「お肉!!お肉!!」
カートを押して肉のコーナーに行く。
すると、ちょうどウインナーの試食販売をしていた。
「隣人さん!!食べたいです!!」
「あはは。ウインナーを買う予定だから一個ならいいぞ」
「わーい!!」
俺が食べて良いと許可を出す。美凪は嬉しそうにしっぽを振って走っていった。
……あいつ高校生だよな?
美凪は試食のおばちゃんから焼けたウインナーを貰って食べる。
「隣人さん!!美味しいです!!」
「ここのウインナーは美味しいからな。『お姉さん』俺もひとついいですね?」
『ふふふ。旦那さんはなかなか口が上手いわね』
「旦那では無いですけどね」
なんて会話をしながらウインナーを貰って食べる。
うん。パリパリしてて美味い!!
おばちゃんの近くにあったウインナーの徳用袋を一つ手に取って、カゴの中に入れる。
『ありがとうね』
「いつも美味しく食べてます」
試食を楽しんだあとは、豚のロース肉をカゴに入れる。
すると、
『本日 サイズミックス卵 特売日 1パック99円 お一家族様 一点限り』
と書いてあるPOPが目に付いた。
「明日はオムライスとかにするかな」
まだ冷蔵庫には卵が残ってるけど買っておくか。
海野家と美凪家で2パック買えるな。
俺はカゴに卵を2パック入れた。
すると、美凪が少しだけ申し訳なさそうな顔をしながらやって来る。
「どうした、美凪。なんかあったのか?」
「その……隣人さん。これが欲しいです」
そう言って彼女が出してきたのは、6個入りのチョコパイの箱だった。
「お、お菓子を買ってもいいですか?」
「……まぁ、構わないけどそれはダメだな」
「えぇ!!??な、何でですか!!??」
俺は美凪の持ってきたチョコパイの箱を元の売り場に戻す。
そして少し離れたところにある、9個入りのチョコパイのパーティパックをカゴに入れる。
「え!!そんな大きいの買ってくれるんですか!?」
驚く美凪に俺は言う。
「チョコパイは俺も好きだからな。一緒に食うだろ?だったらでかいパックで買った方が単価は安くなる。それに、パーティパックは今日の特売だったからな。258円ならまぁ妥協点だな。198円とかの時もあるけど。そう考えるとあんな6個入りなんか買う必要は無いな」
チョコパイのパーティパックはオープニングセールとかだと158円とかで売ってたりする。
6個入りの箱なんて買ったことない。
「な、なるほど……隣人さんは買い物上手です」
「……こんなん基本だろ」
そんな会話をしながら店内を回る。
「隣人さん!!帰りにアイス食べて帰りませんか!!??」
「いいぞ。パピ〇を買って二人で割って食うか。78円だからめちゃくちゃ安いぞ」
「わーい!!」
「お、シーチキンの缶が安いな。サラダに入れるか」
「シーチキン大好きです!!」
「隣人さん!!隣人さん!!これ、ストロングって書いてあります!!飲んだら強くなれますか!?」
「それはお酒だから棚に戻して来なさい……」
そして、売り場を一周した俺と美凪は買い物を終えてレジへと並ぶ。
「隣人さん!!このチョコレートが美味しそうです!!99円は安くないですか!?」
と、美凪がレジ横に積んである『ついで買いをさせる為』の罠にまんまと嵌っていた。
「チョコパイ買ったんだから、チョコレートはもういらないだろ?それにな、そこに積んであるやつってのは、今のお前みたいに、『ちょっと安いからカゴに入れよう』って思わせる店側の策略みたいなもんだよ」
「ガーン!!まんまと嵌ってしまいました!!」
「本当に食いたいならアレだけど、今日はいらないよな?」
「……はい」
そんなやり取りをしていると、レジの『お姉さん』が笑いながら話しかけてきた。
「仲の良いご夫婦で羨ましいですね。こちらの卵はお一家族一点限りなので、二点目はお断りしてるんです。申し訳ございません」
「あ、その……俺と美凪は夫婦じゃなくて……」
「あぁ、失礼しました。学生服が見えていませんでした。彼氏彼女の関係でしたか。でしたら目を瞑っておきますね?」
レジのお姉さんは、そう言うとパチンとウインクをしてくれた。
彼氏彼女でも無いんだけどな……
なんて言葉は、面倒そうなので言わないでおいた。
そして、会計を済ませた俺はお客様用ダンボールに商品をポイポイ詰めていく。
卵は割れないように無料のビニール袋に三枚重ねで包んでおく。
「レジ袋は買わないんですね」
「ママチャリの後ろに縛り付けるにはダンボールの方が都合がいいからな」
俺は帰り道に食うパ〇コだけは外にして、全ての商品をダンボールに詰め終わる。
「アイスだけ持ってくれ」
「はーい」
俺は美凪にアイスを渡し、ダンボールを抱える。
『ありがとうございましたー』
店外に出ると、ママチャリの後ろに縛り付けていた荷紐を解いて、それを使って買った商品が入ったダンボールを縛り付ける。慣れたもんだよな。
荷物を縛り終えると、美凪が二つに割ったパピ〇の半分を渡してきた。
「はい!!」
「ありがとう」
上の部分をちぎって、その部分のアイスを吸う。
ここの部分が美味しいよな。
ごみをポケットの中に入れておき、下の部分を口で咥える。
「買い物カートを戻してくるから荷物を見ててくれ」
「はーい」
買い物カートを所定の位置に戻して鍵を刺す。
100円玉を抜き取って財布に戻す。
良いシステムしてるよな。これなら買い物カートをその辺に放り投げて帰るやつが居なくなる。
俺は美凪のところに戻ると、声を掛ける。
「よし、帰るか」
「はーい」
買い物を無事に終えた俺たちは、アイスを吸いながら家へと帰った。
いつもは一人で買い物をしてるけど、こいつとする買い物はなかなか楽しかったな。
俺はそんなことを考えながら自転車を漕ぎ、自分が少しだけ笑っていることに気がついた。
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