第20話
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サバーシのつてで、御宗派の神殿へ行った。
「これは気持ちです」
と、お布施をガッツリ出しておく。
神官達は巫女が来たので、まずおったまげ。
高額の施主を連れて来たので、更におったまげ。
たまげる→魂が消えゆる
という事が再認識できたなぁ。
「これまでの人生で、計らずとも不道徳的な事にも手を染めざるを得ない状況もなきにしもあらずでして…」
私は述懐し、
「せめてもの罪滅ぼしとして、御寄進をと思ったのです」
「良いお心がけですね」
神官はほくほく顔でうなずいている。
「巫女様も久しくお目にかかれませんで、今日はなんとめでたい日なんでしょう!」
舞い上がるとはこの事だな。
神官達はみなふわふわした足取りで、私達を上にも下にもおけないくらいの扱いである。
「ところで、もう1つ世のため人のために職につけぬ者に働く場を提供できればと思うのですが…」
「あー、それはいいお考えですね」
神官はいまいち飲み込めてないのか、頭の上に「?」を浮かべながら相槌。
「福祉とでも言うのでしょうか、この際、採算はあまり考えずに」
「いや、採算は考えろよ」
サバーシが私の背中を小突く。
「素晴らしいお考えです。我々神官もこうした勘定に慣れてゆかねば、との主の御心ですね」
「あ、いや、まあ、うん」
サバーシは歯切れ悪いが、神託など端からそういうものらしい。
「ぜひお手伝いをば!」
神官は発狂したかのように舞い上がっていた。
これ、ただのフィーバー状態だな。
すんごいお布施と巫女の来訪の効果だ。
ひとまず話を終え、彼らが鎮静化するのを待つことにした。
神殿には神殿の利益がある。銭勘定とはまた別の信仰という形のない利益だ。
恵まれない人々に救いの手を差しのべる。
神殿としてはこれまでもやって来た事だろうが、金を調達する、と点についてはさぞかし頭を悩ませているのではなかろうか。
それを一歩進んで働く場を用意して自立させるというところまで面倒を見る。
もちろん、神殿は我々ダークエルフ商会に任せるだけ。表だって商売をするのは憚られるので、汚れはこちらが請け負う。
当人らが職に就けたら御寄進を少し出してもらう。
手に職を付けて巣だってゆくとなれば、延々と働きもせずに神殿の保護を受けるなんて事が減る。
運営費が軽減されるのが大きいだろうな。
とまれ神殿側へはメリットのある話として提案できた。
次は商会の方だ。
シン神の神殿の後ろ楯をもって慈善事業的な事をしてますよーと宣伝をしつつ、職にあぶれて神殿に面倒見てもらっていた連中をライネに預ける。
「労働力を調達した。基本から教えて行け」
「うわ、マジかよ、こすい手使うやんか」
ライネは驚きはしたが、手際よく失業者どもを誘導してゆく。
「シュガージンジャーが届くまではまだしばらくかかる。その間に準備をしておかないとな」
「売れんのか、んなもん」
「売るんじゃない、売り付けるんだ」
「なんやラグやん、悪どいなぁ」
「褒めてもなにもでないぞ」
「いや、褒めとらんし」
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