桜に導かれた氷華

彗星桜

序章

昔々のお話

 昔々。

 戦が行われていた時代は、欲と金と人の屍で成り立っていた。


 権力のあるものたちは欲を出し、あの領土が欲しい、あいつを殺せば金が手に入る。とそんな傲慢な願いを口にする。


 だが、その願いのために自分の命をかけるわけにはいかないと、権力のない平民たちを戦に駆り出した。

 平民たちは当然逆らえる訳もなく、愛する人たちを置いて血に塗れた戦場へと出ていくのだ。


 ある者は矢で射抜かれて死に、ある者は刀で切られて死んだ。

 そして、辛うじて生き残ったものたちも何かを失っていた。

 それは腕であったり、足であったり、眼球であったり、何かを失って帰ってくるのだ。


 過酷な戦場から帰ってきた後、あんな思いはもうしたくないと自ら命を絶つ者までいた。


 そんな地上の様子を見ていた神は、この惨い戦を終わらせるために、二つの家のものたちにそれぞれ特別な力と使命を与えたのだ。


 一つの家のものにはと人をなるだけ死なせるなという使命を与えた。


 その力は人によって違い、傷を治すもの、病を治すもの、そして人を蘇らせるものなど、人を蘇らせるさまざまな能力が与えられた。


 癒す力を与えられたものたちは、傷ついた人がいれば傷を治し、死んでしまった人がいればその人を蘇らせた。


 そして、もう一つの家のものにはと戦を企てようとしている者を殺せという使命を与えた。


 癒す力を与えられた家は、一族全員が癒す力を持ったが、殺す力を与えられたのは若い当主ただひとりだった。


 殺したいと願い呪文を唱えれば、人に苦しみを与えながら殺せてしまう。

 そんな恐ろしい力は、この時代に確かに必要だったのだ。


 当主は戦争を企てた者、戦争を企てようとしている者を次々と殺めていった。


 そして、両家の涙ぐましい努力が混ざりあい、被害を最小限に抑え戦はこの世界から消えたのだった。


 両家は功績を称えられ、都の中でも五本の指に入るほど強い権力を持つ家となり、その特別な力は親から子へと引き継がれていった。



 そして戦が終わり数百年経った現在でも、と、として、その特別な力は両家の深い縁と共に残り続けていたのだった。

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桜に導かれた氷華 彗星桜 @sakura4456

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