子ども達の成長~理不尽なパパ嫌期(それはしゃーないfrom神様)~




 ディアナとアルフィオはそのままだが、デミトリオとエリアが心配だった。

「デミトリオ、どうしたんだい?」

「パパ。ママはどうしたらわらってくれるの?」

「どうしたら笑ってくれるんだろうね? 一緒に考えようか」

「うん!」

 ソファーに腰掛け、向こうで必死に笑おうとするエリアと、それができず落胆する彼を慰めるカリオさんがいた。

「……」

「ダンテ、次は何があった?」

 エドガルドが声をかけてきた。

「エリアがなかなか笑えないので、それをどうするべきか……」

「笑うときはあるぞ?」

「え?」

「デミトリオ、少しだけ目をつぶっていなさい、お前のパパがママを笑顔にするから」

「え゛」

「うん!」

 目を閉じ、覆うデミトリオに慌てふためく私と、それを聞いてやってきたエリア。

 表情は暗い。

「ダンテ様……」

「ダンテ、エリアに口づけをしてやれ」

「へ?!」

「いいから」

 周囲に他の子やアルバート達がいないのを確認して、私はエリアを抱きしめて口づけをした。

 そして口づけを終えるとうっとりとした表情のエリアがいた。

「エリア、貴方は頑張ってます。だから私もこれからもより貴方を愛したいと思いますよ」

 と囁けば喜色満面になっていた。


「ママ、わらってるー!」


 デミトリオがパタパタと駆け寄ってきた。

「ねぇ、パパ。どんなまじゅつをつかったの?」

「大きくなったら教えてあげるから、今は秘密だよ」

「教えてね! 教えてね!」

 忘れてくれることを期待しつつ、多分覚えてるんだろうなぁと思った。


──うちの子、みんなあたまいいもん!──


 親馬鹿と言われようと、事実なもんは仕方ない。

 うちの子は頭がいいんだ、フィレンツォのお墨付きがあるしね。


『まぁ、ダンテ様ほどではありませんが』


 と後付けで言われたが、あんときはエドガルドが私を強姦する事件を防ぐのに必死じゃったから訳が違うんじゃ訳が。

 とは言うことなどせず、お口チャックで乗り切る。


 そんなこんなで育児でわたわたしていたら六歳になった途端子ども達が──

「「「「ひとりでねれます!」」」」

 とそろって言ってきた。

 ので、取りあえず、一人で寝られるかお試しで自室にベッドを用意し、試してみた。

 ブルーナは一回もこず。

 アルフィオも同様。

 ディアナも同様。

 デミトリオが初日一人で寝られないと来てからは一人できちんと寝ているようだった。


 フィレンツォ達の監視の結果、独り寝させても問題ないという事になった。


 大体私もそのくらいの年頃に独り寝を開始していた気がする。


 かくして、親離れの第一歩として、子ども等は皆一人で寝るようになった。

 少しだけ寂しいが誇らしくもあった。





「で、こうなるのですね」

 伴侶達──エリア、クレメンテ、アルバート、カルミネの四人とエドガルドにベッドの上で囲まれた私はそう呟いた。

「子ども達は一人で寝られるようになったのだ、なら私達と一緒にまた寝ても良いだろう」

「確かにそうですが……」

「今日は何もしないからな」

「今日は?」

「……まぁ子ども達が大きくなるまでは禁止だな」

「はははは……」

 エドガルドの言葉に私は乾いた笑いを浮かべた。


 とりあえず、隣で寝るのは誰かとなり、エリアとクレメンテが両隣その隣にカルミネとアルバート、端にエドガルドという風になった。

「公式的に伴侶じゃない私が隣で寝るのは問題だろう」

 エドガルドはそう言って端っこに眠った。


 子ども達が大きくなったら反動が来そうだなと思いながら了承した。




 子ども達は勉強をするようになった。

 各自教師役が付き、勉強を教えるのだが。

 ブルーナが勉強を嫌がった。


「エドガルドおじさまがいい!」


 と駄々をこねてエドガルドを指名。

 エドガルドが教える事になった。


 何かこの子将来結婚相手エドガルドがダメだと分かるとエドガルドに似た相手を探しそうだなと思った。


『案外予想できるものだな』

──マジすか──


 神様に言われて、私はげんなりした表情を浮かべた。


『その子はエドガルドと結婚したいと言い出して泣くぞ、エドガルドは血縁上無理だと答えるがな』

──いつ頃──



「びぇええええ!!」



『今』

──マジかよ!──


 私はブルーナの部屋へと慌てて移動した。

「ブルーナ」

「パパ、な゛ん゛でおじざまとはけっこん、できないの゛ー!」

「エドガルドは私の兄で比翼副王だ。結婚はできないんだよ、血縁的に」

「な゛ん゛でお゛じざまは、パパのおにいちゃん、なの゛ー!」

「な、何でと言われても……」

「びぇええええええ!!」

 エドガルドも困り果てているようだった、クレメンテがやって来て、ブルーナを抱っこし別室へと連れて行った。


──ど、どうしよう!?──

『安心しろ、クレメンテが何とかする』

──どうやって?──

『……内緒』

──うがー!──

『まぁお前は知らん方がいいわけだ』

──ちくせう!──


 しばらくすると、ブルーナはひっくひっくと嗚咽をこぼしながらクレメンテに抱きかかえられて戻ってきた。

「すまない、しばらくはブルーナの教師役は別の人に頼めないだろうか、できれば既婚者に」

「分かりましたそう手配しましょう。フィレンツォ」

「かしこまりました」

 フィレンツォはそう言ってその場を立ち去った。

「パパ……」

「ど、どうしたんだい、ブルーナ」

「……パパのばか、ひとたらし」

「何処で覚えたのそんな言葉?!」

 するとクレメンテは苦笑した。

「しばらくはこんな感じが続くと思うが、頑張れダンテ」

「そんなぁ……」


──実の娘にそう言われるのは堪えるよ──


 クレメンテの言う通り、パパ嫌期に突入したブルーナに私はべっこべこにされるが他の子達に慰められたり、エドガルド達に慰められる等して何とか乗り切った。





 ブルーナのパパ嫌期が落ち着くのには一年かかったが、これから思春期というものがある。

 また、子等が全員パパ嫌期に入ったら私死んじゃうんじゃ無いかと不安があった。





『安心しろ、それはない』


 と、神様のお告げがあったものの、安心できずグロッキー。

 思春期とは複雑なものだから怖い物は怖いのだ。


『全く臆病だな』

──ほっといてくだせぇ──


 臆病で何が悪いと思いながら、子等の成長が楽しいのに、ちょっと怖いという状況にある私であった──






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