水の遊技場と、体のぬくもり
「ここは……」
「水遊戯施設ラクスです」
目の前に巨大なプールや遊戯設備が広がっていた。
「水の精霊達と人が常に見回りをしていますので、事故は起こった事はありません」
「水は常に浄化されており、綺麗な状態です」
スタッフらしき人達が私達の前に現れた。
「ようこそラクスへ、ダンテ殿下と伴侶の方々、比翼副王様」
「出迎えかい、ありがとう」
「はい、王族の方に満足して頂くために」
「お心遣い感謝致します」
「はい」
「「「「ようこそ、水遊戯施設ラクスへ。水の遊び、水辺の遊びを楽しんでいってください!!」」」」
水着に着替えて、軽く体を動かし準備運動をしてから巨大なプールに飛び込む。
ちょっと長い髪は邪魔なのでまとめて置いている。
「すごいな、冷たすぎず心地よい温度だよ!」
「だろう!?」
「エステータ王国の遊戯施設の中でもトップクラスの施設だからな」
「エリア、足を子鹿のようにぷるぷるさせて私にくっつかないでください」
馴れない場所なのかそれとも広いプールを怖がっているのかクレメンテにエリアはしがみついていた。
私は苦笑して上がると、エリアの手を取る。
「エリア、大丈夫です。一緒に泳ぎましょう」
「ダンテ様、念のためエリア様には浮き輪を」
「用意がいいな」
フィレンツォが用意していた浮き輪をエリアに着け、ゆっくりと水の中に入っていく。
「わわ……」
「エリア大丈夫ですよ。──クレメンテ、エドガルドは大丈夫ですか?」
「クレメンテとエドガルドならさっき沈んで医務室に連れて行かれたぜ」
「え?! もしかしてまた泳げなくなったんですか?! クレメンテとエドガルドの所にああ、でもエリアを独りには……」
頭を抱える私に、カルミネが近づき、エリアの浮き輪の紐を掴んで私からすっと取り上げた。
「エリアは俺が見ている、行ってこい」
「ありがとうございます!」
私は急いでスタッフの方について行き、医務室で横になっている二人に声をかける。
「二人とも大丈夫ですか!!」
「……面目ない」
「一年ぶり泳げると高をくくってていたらこのざまだ……」
取りあえず無事そうなので私は安堵の息を吐く。
「せっかくダンテと泳げると思ったのに……」
「本当だ……」
「あの、浮き輪を使うというのは?」
「「何か子どもっぽいから嫌だ」」
「……エリアは使ってぷかぷか浮いてるんですが、後で一緒に泳ぐ予定──」
「「フィレンツォ、無地の浮き輪を頼む」」
「手配は致しております」
フィレンツォの行動力にはやはり驚かざる得ない。
「では、少し休んだら三人の所に戻りましょう。それまで側にいますから」
私はそう言って、エドガルドとクレメンテの頭を撫でると、二人は安心したように笑った。
少し休憩して、戻ってみると、ちゃぷちゃぷと浮き輪を使いながらエリアが泳いでいた。
小さい子が泳いでいるのを見ているようで何か微笑ましく、心の中が親心で満たされるようだった。
私に気づいたカルミネがエリアとともにプールから上がり、近づいてきた。
「帰ってきたか、それと二人は観念して浮き輪を使う事にしたか」
「「……」」
「エリア、少し泳げるようになったんですね」
「は、はい……」
「それは良かった」
「と言うわけで、周囲に迷惑かけた二人は俺とアルバートの二人で特訓だ」
「何だと?!」
「どういう訳ですか?!」
てっきり私が教える物だと思っていたため、エドガルドとクレメンテの二名はカルミネに噛みつく様に言った。
「仕方ないだろう、お前達二人をダンテに任せると面倒な事になる、ダンテと泳ぎたいなら浮き輪でも何でもいいからさっさと泳げるようになれ!」
「つーわけだ、ダンテ。エリアを頼んだぞ」
エリアと手を繋がされ、エステータ王国出身の二人に連れて行かれるクレメンテとエドガルドを見て苦笑いを私は思わず浮かべた。
「──では、泳ぎましょうか」
「はい……!」
エリアは満面の笑みを浮かべた。
二人が特訓中に、私とエリアはウォータースライダー的なものにも挑戦したり色々と泳いだり楽しんだ。
そして特訓を終えてエリアと異なり浮き輪無しでやってきた二人を見る。
かなり疲れ切っている用だった。
ちょうど良いので休憩スペースで、全員で休憩を取ることにした。
少し冷えた体には温かい飲み物はちょうどよかった。
「二人とも大丈夫ですか?」
「なんとか……」
「エリアと違って体力があるんだからとは不公平すぎる……」
その言葉に、エリアは困ったように私を見てきたので、私は微笑み返して頭を撫でた。
「エリアを気遣っての言葉でしょう、お気になさらず」
「僕を……」
「ええ、貴方を気遣っているのですよ」
事実、エリアは体力が今も少ない。
虐待の傷跡とも言うべきか、なかなか体力が伸びない。
本人も気にしている。
どうにかしようと薬を作ったが、エリアに断られた。
『今の僕があるのは、苦しかった「過去」があるからです。だから僕は僕の手で立ち向かわなければならないんです』
と、自分で少しずつ体力を増やすための運動を行うようになった。
それでも、四人と比べるとあまりにも体力が少ないのだ。
夜伽の最中もすぐにバテてしまう。
どれほど優しく抱いたとしても──
傷跡は残り続けるのを痛感させられた。
虐待の、傷跡を。
「……」
ラクスから戻り別荘でゆっくりとしていた。
ノックする音が聞こえる、エリアのノック音だ、これは。
「エリア、入ってきていいですよ」
エリアが入ってきた。
「あの、ダンテ様」
「アルバートとカルミネに言われたのでしょう?」
そう、指摘すればエリアは驚いた表情を浮かべてから、こくりと頷いた。
ベッドに近づいてきて、私にもたれかかる。
「僕は、もっとダンテ様に甘えても良いのでしょうか?」
「いいんですよ、エリア。貴方は自分の事を卑下しすぎです」
そう言って口づけをする。
「愛していますよ、エリア」
「……はい、ダンテ様」
顔を赤らめるエリアが可愛いけど、優しく抱いた。
エリアは性的虐待も受けている、だからそこは気を遣っているのだ。
これ以上傷つかないようにと。
翌日、アルバートとカルミネがニヤニヤと笑いながら私に絡んできた。
「エリアと仲良くできたか」
「ええ、お二人のおかげで」
「それは良かった」
「つーわけで、今日は俺達二人を愛してくれないか?」
「え? あ、はい。そうですね。二人には色々助けられてますから」
私はそう答えると、二人は私に抱きついてきてキスの雨を落とした。
そしてその夜、二人にとっていろんな意味で搾り取られて大変な夜を明かした。
性に明るい二人には勝てなさそうだと心から思った。
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