五人を愛する難しさ




「エドガルドは夜這いをかけててずるい!」

「ずるいのはお前達の方だろう!」

 ロゼアの庭園──言ってしまえば薔薇の庭園で、未だ火花を散らせているエドガルドとアルバート。

「そうだぞ、エドガルド。エリアならともかく、お前が夜這いをしてどうする」

「え、え?」

「エリア、今日はお前が行け、エドガルドは俺達が引き留める」

「ええ?!」

「皆様、せっかくの庭園でそのようなお話はお控えください」

 フィレンツォの言葉に、皆がしゅんと黙る。

「ダンテ様も、ちゃんと対応しなければ」

「できると思うかい?」

「できないでしょうが、そこは頑張ってください」


──ふぁーっきゅ!──


 と、心の中で中指を立てるが、かわい子ちゃん達には自分は甘すぎるのを承知なので、どうにか頑張るしかない。


「取りあえず、エステータ王国にはどんなものがあるんでしょう? プリマヴェーラ王国ここのように素敵な場所であれば嬉しいのですが」

「ダンテ、調べてないのか?」

「いや、調べてる途中にエドガルドが来たので調べ終わってないんですよ」

「ならば、俺達が案内しよう! 夏のエステータ王国の歩き方とやらをな!」

「まぁ、避暑地を巡る旅になるだけだから気にするな」

「ああ……なるほど」

 エステータ王国は相当暑い場所だと理解した。

 というか暑い場所だった記憶がある。


「ま、まぁ今はここを満喫しましょう。ロゼアのアイスとか売ってるらしいですよ」

「よし食べよう」

「た、食べたいです」

「アイスか……」

 興味津々な皆を見て、少しふふっと笑ってから前を見るとフィレンツォが近寄ってきた。

「ロゼアの色の種類だけあるから慎重に選んでくださいよ」

 と言われるが、何をどう慎重に選べばいいのか分からない私は、稀少性と「未来への希望」という花言葉を意味する青いロゼアのアイスを選んだ──


 フィレンツォの言うとおり一悶着あり、私はこれで大丈夫かと頭を悩ませた。


 夜、エリアが来たので色々と慰めて貰った、へたれで何が悪い!






 そして、夏。

 エステータ王国へと私はやってきた。

「暑い!!」

 私は思わず声を上げた。

「暑いです……」

「なんだここは……暑すぎる……」

「人の住む所じゃない……」

 エステータ王国出身以外の三名が声を上げる。

「はははは、そりゃエステータの夏は暑いからな! まぁ、こんな所で突っ立ってるのもなんだからさっさと行こうか!」

「ええ、そうしましょう……」

 アルバートとカルミネが案内する。

 この国の国王陛下からの手紙通りの避暑地まで案内され、そこの別荘へと入る。

「わぁ……外はあんなに暑いのに、中は涼しい……!」

 感激したように言うエリアに、アルバートは笑って答えた。

「そう言う作りになってるし、冷却石を魔術核で稼働させて家の中を冷やしているからな」

「そういえばそうでしたね」

「今日は俺とカルミネを愛して欲しい──と言いたい所だが、エリアに譲るわ」

「え……?」

 驚きの表情を浮かべるエリア。

 私の肩を叩くカルミネ。

 私の反対の肩を叩き、怖い笑顔を浮かべるアルバート。


──こわいっす──


 私は内心ガクブルしつつも、引きつった顔でアルバートに言う。

「ど、どうしてだい?」

「お前、エドガルドだけが正式な伴侶じゃないからと甘やかしすぎ」

「後、エリアは甘やかされなさ過ぎだ」

「「分かったら今日はエリアをきっちりと甘やかせ、いいな?」」

 ハモって言う二人に私はこくこくと頷くことしかできませんでした。



 なので夜、エリアを甘やかして、愛し合って、一晩を明かしました。



 少し元気が無かったエリアも少し元気を取り戻したようでした。





 ちなみに、私とエリアがいちゃついている間、アルバートとカルミネとフィレンツォとエドガルドとクレメンテの五人が今後どうやっていくかを真面目に話合っていたらしく申し訳なくなった。





──ハーレムってむずい!──

『当たり前だ』

──難易度高い訳だよ!──

『そしてハーレムエンドで終わりではない、今お前は続きを歩いている』

──分かってますよ──


 神様とのやりとり、助けて欲しいと思いはする。


『お前は甘すぎるのだ、誰にでも』

──そんなこと言ったってー──

『まずはそれをどうにかしろ、五人全員が一番なのは譲らない方向でだ』

──それなら、なんとか……──

『その上で、五人をバランス良く愛せ』

──それが難しいんですよ!──

『今、お前はエドガルドに比重が置いてある、エドガルドが正式な伴侶ではないが故に』

──うぐ──

『そこだけははっきりしておけ、正式な伴侶でないのがなんだと』

──ど、どういうことですか?──

『もっと全員公平にしろということだ、頑張れ』

──ちょっとー!!──


 神様はすっと引っ込んでいなくなってしまい、私はまた「戻って」くるとはぁとため息をついた。


──エドガルドと一度話さないとダメかこれは──


 そう考えると、私はエドガルドを呼ぶことにした。



 エドガルドは少し不服そうな顔をしていたが、私を見るとぱぁっと笑顔になった。

「申し訳ございません、エドガルド。私は貴方を特別視しすぎてたようです」

 その言葉に、エドガルドは狼狽えた。

「な、何を言うのだ、ダンテ」

「貴方は比翼副王、伴侶ではない──というのが公になっている貴方の立場。だから貴方を優遇しすぎた。本来なら他の伴侶と同じく扱うべきなのに──」

「ダンテ……」

「私は貴方を『哀れんで』しまった、それは愛ではない」

「!!」

 エドガルドの顔が泣きそうな顔になる。

「私は、他の四人のように貴方を愛したいのです」


「ですから、もう哀れむのはやめにします、それは貴方への侮辱行為だ」


 私はきっぱりと言うと、エドガルドは私に抱きついてきた。

「エドガルド……」

「不安だった、他の四人は伴侶なのに自分は違うと、あの日決めたはずなのに不安になってしまった」

「それは仕方の無い事です、割り切るのは難しいでしょう」

「だからお前に甘えてしまった、お前なら許してくれると。お前の優しさにつけ込んだ醜い私が嫌でたまらない」

「醜くなんてありません」

 エドガルドの言葉を私はきっぱりと否定する。

「エドガルド、貴方は美しい人です」

「いや、私は、今の私は醜い」

「エドガルド」

 手を握り、額にキスをする。

「どうか、貴方自身を卑下しないでください。寧ろ、悪いのは私なのですから」

「いいやちが──」

「「「この似たもの兄弟いい加減にしてください(しろ)!」」」

 バーンとフィレンツォとアルバートカルミネが扉を開け放って現れた。

「さ、三人ともどうしたのです?」

「ダンテは公式伴侶じゃないからと哀れんで甘やかしすぎた、エドガルドもそれに依存した、はいこの話これでお終い!!」

 アルバートが手を叩く。

「エドガルドも、ダンテに依存する悪癖をどうにかした方がいいぞ」

 カルミネが私とエドガルドを引き剥がす。

「ともかく、今後は五人皆平等に愛してくださいね、ダンテ殿下」

「あ、ああうん、勿論だ」

 フィレンツォの笑顔がめっちゃ怖かったのは黙っておこうと思った。






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