ヴァレンテ陛下の頼み事




「ヴァレンテ陛下……」

「そこを頼む! 私が動くと奴らは逃げ出すに決まっている!」

 現在修羅場です。


 どうやら最近人さらいが増えており、その調査が上手くいかない事を踏まえて内通者がいるのではないかとヴァレンテ陛下は考えていますが、バレたら確実に国外に出て何かしそうな気がするので国外に出る前に対処をしたいから私に動いて欲しいと言われています。

 いや、別に構わないのですが──


「……」

 エドガルドの視線が痛いです、めっちゃ痛いんです。

 断れ視線を送ってくるのでめちゃ困る。

「エドガルド様、お気持ちは分かりますが、ここはダンテ様に一働きしていただきましょう」

「フィレンツォ、お前は自分の主人を危険に晒すのか?!」

 フィレンツォにエドガルドが食ってかかる。

 フィレンツォは静かに続けた。

「ダンテ様に何かできる輩はこの世にはおりませんよ、寧ろダンテ様がやり過ぎないようにしておきましょう」

「何んだ、フィレンツォ。私がやり過ぎるって」

「外道相手に、ダンテ様が手加減などできると」

「……できないな」

「という訳です。なので今回は私とダンテ殿下のみで動きます。皆様は屋敷で待機を」

「「はぁー?!」」

「ふざけてるのか、フィレンツォ」

「いえいえ、エドガルド様。ダンテ様を止められるのは私とエドガルド様達だけだからこそ、皆様に残っていただくのです」

「ど、どういう事ですか?」

「皆様のうち、誰か一人でも傷つけば、ダンテ様は暴走します。止めるのが難しくなります。ですから、私とダンテ様とで行くのです」

「「「「「……」」」」」

 フィレンツォの言葉に皆が渋々従った。





「全く、人さらいなど。ヴァレンテ陛下は悪い人ではないのですが身内の毒を探すのがヘタ過ぎる」

「フィレンツォ、それ私達も同じ……」

「エドガルド陛下の件は別件です」

 闇夜に紛れて、人さらいを追いかける。

 ちょうど、現場を目撃した為、透過の術を使って、静かに、素早く追いかける。

 勿論気配を殺して。


 しばらく追うと、鉄格子の中に閉じ込められている人達がいた。

 話し声が聞こえる。

「ヴァレンテの奴が嗅ぎつけて来た、今のうちの国を移動するぞ」

「何処へいきましょうか」

「インヴェルノ以外だ、インヴェルノはすぐに嗅ぎつけられる」


 誰が話しているかはともかく、取りあえずこのままだと被害が出るので登場とともに、配下らしきものをぶちのめした。


「何者だ貴様!」

 私は被っているフードを取る。

「インヴェルノ王国後継者、ダンテ・インヴェルノだ」

「な?! 何故貴様──」

「無礼だぞ、ダンテ殿下の前だ」

 フィレンツォが一番偉そうな奴の首に手刀を食らわし、ソイツは昏倒した。

「ダンテ様」

「取りあえず、ヴァレンテ陛下に合図を送ろう」

「警備団ではなく?」

「うん」

 私は、ヴァレンテ陛下に合図の魔術を送り、程なくしてヴァレンテ陛下はやってきた。


 ヴァレンテ陛下は頭を抱えた。


 主犯格は、なんとヴァレンテ陛下の腹心中の腹心と呼ばれた男。

 そして取り巻きは警備団の上層部当たりから出てた。


 ヴァレンテ陛下の心中は察するが、これはヴァレンテ陛下が自分で片付けるべき事なので、後始末はヴァレンテ陛下に任せた。





「何でヴァレンテ陛下の腹心がそんな事を?」

 神様に私は問いかける。

『まぁ、ぶっちゃけると人が増えすぎて、国を圧迫していると感じたんだろう。また、本当に苦しんでいる者を救えない状況にもあった。だからそれの要因を排除したかったのが最初だが──』

「人を売ることでお金を儲けてたらそっちがメインになった?」

『そういうことだな、さらった人を売る事で金が入る』

「もー奴隷の売買は禁止されてるのにー、というか今は奴隷事態禁止されてるのに、全く」

『まぁ、そこら辺の問題解決は現在の国王達の仕事だ、お前の仕事ではなかろう?』

「確かに」

 私は納得する。

『さて、もうそろそろ春も終わる、次の国への支度をすることだ』

「分かってますよ」





 次の国はエステータ王国、どんな出会いが待ってるのかな?

 とわくわくしながら本を読んでたら、エドガルドに夜這いされ、エリア以外の三人が来てギャーギャーとキャットファイトみたいなのが起きてすったもんだがありました。

 平穏はいずこ。





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