温泉と我が儘




「さて、今日はどうしましょうか?」

「温泉もあるらしいぞ」

「温泉ですか、いいですねぇ」

 温泉は良いものだと頷いているとフィレンツォが近づいてきて──

「貸し切りでとっております」

「──さすがだ」

 思わずやりすぎちゃうん、とか言いたくなったが飲み込もうとしたが──

「でも、ちょっとやりすぎじゃないか?」

 言っちゃった。

「何をおっしゃいます。他の方々の裸を見られたいのですか」

「うん、前言撤回見られたくないね。良くやったフィレンツォ」

 さすがに自分の裸を見られるのは前世温泉の国出身故抵抗はないが、そういう伴侶や家族の姿をじろじろ見られたらと考えると勘弁願う。

 なので今回の貸し切りは有り難かった。

「ではいきましょう」

 皆頷いて準備を始めた。





「わぁ、チリエの花がたくさん咲いてる……!」

「これは見事」

 柵で囲まれた露天風呂だった。

 柵の向こう側にはチリエの木がたくさん植えられているのだろう。

 前世的に言えば、桜の花見をしながら風呂を楽しめるという奴だ。


 体をお湯で一度流して洗ってから、透明な温泉につかる。

「あ~~……これは良い」

 ちょうど良い温度の温泉だ、熱い温泉も悪くはないが私の好みはこちらだ。

 ちらりと各自の様子を見る。


 エドガルドは熱く感じているのか、時折涼んでいる。

 エリアはちょうど良いのか温泉を堪能している。

 クレメンテはぬるく感じているのか、もう一段階熱い風呂に入っている。

 アルバートとカルミネは──


「ちょっと、お二人とも何飲んでいるんですか?」


「貸し切りだからな! 酒をな!」

「すまん、コイツを止められなかった」

「はい、おしまいおしまい──!」

 酒で顔を赤くしているアルバートから酒を取り上げフィレンツォに渡す。

「全く、温泉で飲酒は体には良くないんですよ?」

「だが酒はうまいんだぞ!」

「美味しくても体に良くないのはダメです! 飲むなら水とかにしてください」

「全く、ダンテは真面目というか頭が硬いと言うか……」

「食べ物でたまに体に悪いけど美味しいものを食べるのは構いませんが、温泉で酒はへたをすると死に繋がります! 伴侶を早くになくすようなことはしたくありません!」

「……悪かった」

「やはりダンテが言うと説得力が違うな」

 お酒ではなく果実水に変えて貰い我慢してもらう事にしました。


 温泉から戻り、屋敷で牛乳を飲んでからゆっくりしていると──


 何故か猛烈に唐揚げが食べたくなりました。

 しかし、唐揚げはこちらにはない料理。

 ついでに高カロリー。


 どうしようと悩んだ末──


 フィレンツォに買い出しをしてもらって自分で作ることに。

「何か頭に浮かんだ何かを食べてくなった」

 で、通しました。

 それで通るフィレンツォ、マジ感謝。



 用意した材料、鶏のもも肉や、ジンジャもといショウガ、ガリオもといニンニクなどを切ったりすりおろしたりあれこれする、その上で、全部を混ぜて冷蔵させる。

 混ぜた後、小麦粉とかの粉をつけて油で揚げる。

「できた」

「いい匂いがしてるがなんだ?」

 カルミネが寄ってきたので油を切った一個を口に運ぶ。

 菜箸は何故かあるのでそれで。

 カルミネはすんと匂いを嗅いでから口にした。

「~~!!」

「どうです?」

「肉がじゅわって……それでいてガリオの味が良い具合にアクセントになっている……!! なんだこれは?」

「あー……頭の中に浮かんだ料理です」

「……ダンテ、お前ある意味天才だな」

「ダンテが天才なのは昔からだ」

 エドガルドが参戦する。


 いや、本当は天才でもなんでもない。

 神様の助けと前世の知識とかあってこうなってるだけなので。


 ただ、唐揚げは皆に大半食べられました。

 しょんぼり。



 その後、食事をとってゆっくりと屋敷で過ごす。

 至福の時間です。


「ダンテ、いいですか?」

 クレメンテが部屋に入ってきた。

 ガチャリと鍵をかける音。

「どうしたんですか」

 ベッドの上から起き上がろうとすると押し倒されました。

「──本来エリアが愛されるべきなのですが、私も愛されたい」

 とおねだりが来ました。

「エリアには頼みました、譲って欲しいと、愛されたいと」

「……いいですよ、クレメンテ、来てください」

 私は上半身を起こして彼の唇にそっと口づけをしました──



 その夜、クレメンテを優しく抱いて、ともに眠りました。






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