大切だから
「学院生活で、厄介ごとの規模が大きすぎたので、できれば平穏にいたいのですけども……」
私の言葉に皆が頷く。
「サロモネ王が封印するしかなかった
「それです……まぁ、何とかしたからこそ各国がこぞって新婚旅行にきてくれと……」
私はため息をついた。
「旅行か……旅行……新婚で旅行をするのは悪くはないが、問題は行った先で厄介ごとに巻き込まれやしないかが不安なのです」
「ダンテ様は、巻き込まれ体質ですからね……」
「言わないでくれ」
私は大きく息を吐いた。
「さて、断るのも失礼だし、どうしたものか?」
「全部行けばいいだろう、厄介ごとに巻き込まれたら、その分色々と要求すればいい」
カルミネがはっきりと言い切る。
「だが、ダンテにもしものことがあったらどうする?」
エドガルドがしかめっ面で、カルミネに苦言を呈する。
「ダンテにもしものことはない、あるとすれば俺達だ、俺達が足をひっぱらないよう努力するしかないだろう」
「ご安心ください、貴方方に何かあったら私容赦しませんので」
「ダンテがこうならないようにな」
カルミネの言葉に全員が頷いた。
「信用無いんですかね私……」
「信用しているからいってるんだ」
「ぼ、僕が一番、あしを、ひっぱりそう、なので……」
「エリア、貴方今も着けてる『客人』時代のブレスレットがあるでしょう? それが守ってくれますから」
「……そういえば、私達はそういうものを貰ってないな、結婚の飾りとは別に」
――げ――
結婚指輪とは違い、この世界では各自が結婚の証であるアクセサリーを身につけたりする風習がある。
仕事などの時は外すが。
それ以外の時は基本つけているのだが――
今考えると、エリアはそれ以外の飾り――ブレスレットを持っているが他の四人は持っていない。
つまりこれは――
「ダンテ様、お店には連絡したので、全員分作りましょうね」
「フィレンツォすまない」
予想していたらしいフィレンツォの行動に助かった。
「では、行きましょう。飾りは皆さんで選んでください、それに合わせて作りますので」
「わかった」
「わかりました」
「わかったよ」
「わかった」
「あうう……」
少ししょげているエリアを私は撫でる。
「すみませんね、エリア。他の皆が焼きもちを焼くので」
「は、はい……」
「別に俺は焼いてないぞ、羨ましいとは思っていたが」
「それを焼きもちというんですよ」
カルミネにそう返すと、私達は店に向かうことにした。
その間、別荘の留守番は祖母たちに任せた。
祖母たちが任せろというもので。
「づがれまじだ……」
結果デザイン等色々と頭とかを疲弊した私は四人分作り終わると椅子に倒れこんだ。
「ダンテ様、一日ごとに作るというお考えはなかったのですか?!」
「いやだって、皆早く欲しいでしょうし……」
「……すまない、ダンテ、お前がそういう存在なのをすっかり忘れてた」
「すみません、ダンテ……」
「すまん、ダンテ」
「悪いダンテ、次からは気を付ける」
「ぶへぇ……」
とりあえず全員の分を作り終えたので、今日は休むことにした。
フィレンツォに背負われながら、そう考えた。
ちなみに、作ったのはエドガルドが指輪、クレメンテはブローチ、アルバートはペンダント、カルミネはイヤリング。
全員バラバラで、デザインも被らないようにするのが大変だった。
エドガルドは王家の紋様にエドガルドの目――サファイアブルーの宝石と花の紋様をあしらった指輪。
クレメンテは、インヴェルノ王家とアウトゥンノ王家の紋様を混ぜて、金色の花散らしたブローチ。
アルバートはシンプルの王家の紋様に植物の葉を花のように咲かせたペンダント。
カルミネは、王家の紋様と、オレンジの宝石が連なったイヤリング。
想像で短時間で作れるのは凄いが、疲れるなと実感。
魔力が低下してるわけではない、デザインに悩んだのが原因。
――デザイナーさんマジで尊敬する――
各自に似合うように頑張って想像したが、似合っているかはわからない。
とりあえず、全員満足そうなので良しとした。
別荘の自室のベッドに横になり、ぐったりとする。
デザインで悩んで、どんな守りを入れるのかも悩んで、色々悩んで精神的に疲れた。
神様はこういう時はなーんもアドバイスくれないので仕方ない。
というか、アクセサリーを欲しがる四人の圧もすごかったからそれも原因だろう。
と思いながらベッドの上で、フィレンツォに鳥粥を食べさせてもらっている。
「全く、相変わらずダンテ様は……」
「本当、申し訳ないと思ってるよ……ところで何でフィレンツォが?」
「誰が食べさせるかでもめるよりはいいでしょう」
「ははは……」
実質伴侶が五人もいるとなると、それはもめるな、と思ってしまう。
――まぁ、その道を選んだのは私なんですけどね!!――
とは口が裂けても言えない。
「それを考えるとヴァレンテ陛下はスゴイんじゃないか? 確か10人も伴侶がいるんだろう?」
「いえ、あそこは相当もめてもめて今の形になったそうですよ」
「oh……」
思わず、天井を仰ぎ見る。
「……ところで、一番苦労したのは?」
すぐさま考えが正しいのかどうか、確認するためにフィレンツォにたずねる。
「……あそこは伴侶の方々でしょうなぁ……陛下がああいう方ですから……」
「あ゛――……」
ヒトの事は言えないが、あの陛下幼少時の私を口説いて一波乱起こしたと聞いているので、そりゃ苦労するわなとなる。
「愛が多きヴァレンテ、ともおっしゃられてましたから」
「なるほど……」
「というプリマヴェーラ王家は代々愛が多いんですよ。伴侶が5、6人は当たり前、多い時は30人とか」
「……それ、全員平等に愛したの?」
「でなくては伴侶になれませんから」
「ワォ……」
私は思わずまた天井を仰ぎ見る。
「ところで、ダンテ様」
「ん?」
「旅行の件はどうなさるのですか?」
「あー……そうだな、春にプリマヴェーラ王国、夏にエステータ王国、秋にアウトゥンノ王国で巡ればいいんじゃないかなぁ……」
「成程」
「正直旅行には気のりしないけども、断る理由もないわけだし……」
「畏まりました」
「……それよりも」
「ええ」
私の言葉にフィレンツォがドアの内側からノックをすると、ばたばたと音が聞こえた。
私はそれにため息をついて、扉を開けると、だるま落としか某動物の音楽隊よろしく乗っかり合っている五人がいた。
「皆さん、だからそれは心臓に悪いのでやめてくださいと言ってるでしょう?」
「そのえっと……」
「ダンテ、お前とフィレンツォの仲が良すぎて心配なんだ」
「「そういう関係じゃないので安心してください」」
私とフィレンツォはハモって否定する。
「じゃあ、何でフィレンツォと二人きりの時だけいつもと口調が違うんだ」
「あー……なんでしょう? それだけ長い時間すごしてるんですよ……正直皆さまよりも長いから気が付いたらフィレンツォと二人で話す時は口調が変わるんです」
「ダンテも意識していないと?」
「してませんね、気が付いたら、ですから」
私は意識して変えているつもりはない、気が付いたら変わっているだけだ。
「……私達にはそういう言葉遣いは……」
「多分無理ですね」
「「「「「何故だ?!(ですか?!)」」」」」
五人が揃って言うと私は首を振る。
「だって、私は皆様の事がそういう意味で大事なんですもの、フィレンツォの主従とは違う意味で、伴侶として大事なんです。だから敬い、大切にしたいから口調は多分変わらないでしょう」
悲壮感や怒りに染まっていた五人の顔色が私の言葉で一瞬で喜色に変わる。
私は大切な相手の性質によって口調が変わる。
フィレンツォは執事であると同時に友人のような存在だから、二人の時はあの口調。
でも、五人は違う意味――伴侶として大切だからこのままだろう。
――もし変わるとしたら、衝撃的な何かあるかくらいかなぁー―
そんな事を考えながら、旅行の計画を立てるために、皆でリビングに集まり話合いを始めた――
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