第46話 ルイス・ブニュエル抄

 ルイス・ブニュエルという映画監督がいる。反キリストかつ熱烈にキリストを信仰し(私は無神論者だが神を愛する)、デビュー作の『アンダルシアの犬』で観客を怒りと賞賛で二分させ、その後も問題作しか撮らなかった男、と言っても何も紹介にならない。だいたい自分は「映画監督で誰がいちばん好きですか?」と訊かれてかならずブニュエルですと答えているがブニュエルのフィルモグラフィーをすべて網羅しているわけでもなく、相当怪しい男なので、以下の文章はあくまで個人的な思い入れの文章になることをブニュエル的なデタラメさで願い、祈ろう。


 最初に見た彼の映画は『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』でした。5人か6人くらいのブルジョワジーの男女が、というのでどうせ退屈だろうと思っていた。最初、このブルジョワジーたちが近所のレストランへ向かう。すると、そこのコックさんがちょうど亡くなっていて、料理は出せないという。また明日、晩餐を開こうと約束する。で、最初に結論から書いちゃうとこの映画は永遠にブルジョワジーたちがただただ飯を食えなくなる邪魔が入るというだけの映画だったので自分は大笑いしました。家に軍隊がやってきたり、夢オチだったり、幽霊のエピソードで邪魔が入ったりと、めちゃくちゃな映画です。


 次に見たのが『皆殺しの天使』。これもちょっと先の映画と似てますが、ブルジョワジーたちがオペラ観劇の帰りに洋館で豪華な晩餐が開かれます。おのおの座に着き、酒も豪華な料理も食べて、では帰りましょう.....というのになぜか誰も帰らない.....帰る通路にまるで透明な壁が出来たかのように20人くらいのブルジョワジーたちが無気力になってしまいます。で、彼らは5日間ほど洋館から出られなくなるので全員が死にものぐるいのヒステリー状態が蔓延して、しまいには熊や羊が大暴れする.....という始末。


 『ビリディアナ』という映画がまた厄介でした。どう書けばいいのかまったくわかりません。


 他にもエロティシズムと笑いが奇妙に混ざった『昼顔』『哀しみのトリスターナ』や、一人二役ならぬ(!)二人一役の女性にエロ爺が翻弄される遺作『欲望のあいまいな対象』や、まるで自動書記で作られたかのような『自由の幻想』といった傑作があります。例えば『自由の幻想』では高層ビルからパリ市民を狙う射撃テロリストがあらわれますが、テロリストが鳩を撃つと明らかに造り物の鳩がポトッと落ちる意味不明のギャグがありますが、ブニュエルの映画はさすがダリと親友だっただけあって(後に仲違いしますが)そういったシュールレアルな、もはやシュールレアルでさえないギャグで埋め尽くされています。


 こんな適当なブニュエルについてを書きましたが『昇天峠』とかも自分はまだ見れていない......畜生!ブニュエル万歳!

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