第21話 こういうことがあった
その夜、私は筋肉ムキムキの友人と酒を飲みながら多摩川の土手を歩いていて、夜だったので涼しかった。気分がよかったので、私は歌を歌っていた。
歌といっても、
パンパンパリャリャリャ
パラパンパン
パリャリャリャ
パンパラリャンリャンリャン
パラパラパラパラ
みたいなお粗末なもので、その頃私は暇になると家でクラシックギターをよく練習していて、しかし手が小さいのでこれは我流でむちゃくちゃな弾き方でした。むかしスペインにアンドレアス・セゴビアという老巨匠がおり、焼きたてのふっくらしたパンみたいな手で魔法のようなギター演奏をする人がいて、このパリャパリャはセゴビアが弾いてるバッハの演奏を私は歌っていたつもりでした。
と、突然、友人が、「UFOがいるよ」と言った。まあ飛行機だろう、と興味がなかったので、まだパリャパリャパラランを私は歌いました。「嘘つくなよ、馬鹿」とも言ったような気がします。ここは福生市であるし、ということは米軍基地が近くにあるのでその軍用飛行機だろう、と。でもあの耳をつんざくような騒音が1ミリもしないのが不思議でした。あんまり私はデカい声で歌っていたので、横を通る犬を連れたオバサンがサササと逃げたりしました。
そうこうしているうちに10分くらい経って、空を見上げると、動いている星が、さっきは一つだったのが15個ぐらいになっていて、それも一つ一つがテンデンバラバラに違う動きをしていた。私たちは気味が悪くなったので土手を走って家に帰りました。
家で夜ご飯を食べながら母親に、
「今日、UFOを多摩川でみたよ」
と言うと、
「あんたなんか連れ去られればよかったのに」
とニベもなく言われたので私はビョーーーンとノビてしまった。
これは要するにパラパラパリャリャンがお呼びしてしまった的なお話しなんだろうか?いまだにわからない。
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