第47話 愛猫達の帰還

 三澄透がベッドで寝ていると、次元の裂け目のような黒い穴が突然開いた。そして、テトが飛び出してきて透を見つけるとお腹へダイブした。


「ニャー!」


「ぐへっ!」


 この重み、この痛さ…


 それにこの鳴き声は…


 俺はもしかしてと思い、飛び乗ったものを両手で持ち上げた。三角形のピンと立った猫耳に、やんちゃそうな顔つき。ブルータビーのアメリカンショートヘア。


「テトっ!」


「ニャア!」


「いままでどこに行ってたんだよ! みんな心配していたんだぞ!」


 少し痩せている気がするが怪我もなく元気そうだ。テトとの再会を喜んでいるとルカが居ないことに気がついた。辺りを見るといつかの黒い穴を見つけた。


「テト、まさか…ルカはこの中にいるのか?」


「ニャア」


 テトは俺の手から飛び降りると黒い穴の前で鳴いた。おやつとご飯、遊びたいという猫語以外はさっぱりわからないが、今なんと鳴いているのかは少しわかった。ルカはこの黒い穴の中にいるらしい。俺が見た夢は夢じゃなかった。頬をつねってみても痛い。これは現実。


 俺も黒い穴の前まで行くと中に向かって叫んだ。


「ルカ! ルカもそこにいるのか!?」


「ニャー!」


 前回は俺が色々したせいで消えたのかもしれない。テトは戻ってこれたのだ。ルカも戻ってこれるはず。それでも不安は膨らみ、顔を近づけて中を覗こうとしたらルカが飛び出してきた。


「ウミャッ!?」


「ぐへっ!?」


 ルカが俺の顔面にぶつかった。顔は痛いがそれどこじゃない。ルカを抱っこすると怪我がないか確認した。ルカも一ヶ月前よりも痩せている気がする。でも健康そうだ。俺はルカとテトを抱えると、深夜なのにも関わらずドタドタと廊下を走り母さんと親父の寝ている寝室に飛び込んだ。


「ルカとテトが帰ってきた!」


 翌日、朝一番に動物病院へ駆け込みルカとテトを診察してもらった。


 母さんがテトを見てもらっていて、俺はルカと待合室で待機中だ。ルカは病院に来ると、いつも呑気に過ごしているのに今日は少し様子がおかしい。少しでも安心させようと思い、撫でるためにキャリーを開けた。


 すると…


「あっ、ルカっ!」


 まるで病院から出て、すぐに家に帰りたいかのように病院の入口をガリガリとと引っかきはじめた。いつの間にかイタズラをしたのか、小さな紙を咥えていて目で俺に何かを訴えてきた。


「昨日まで怖かったんだよな…もう安全だから心配するな」


 暴れるルカを持ち上げていると母さんが出てきた。結果を聞くとなんとテトは異常なし。血液検査の結果次第だが、今のところ問題なしらしい。一ヶ月以上迷子だったのにテトが健康で、母さんは喜びのあまり号泣している。


「きっと、誰かがお世話してくれていたのね」


「ああ、その人に感謝しないとな」


 なんだか俺は、結果をすんなりと受け入れることができた。きっとアーミャが二匹を助けてくれたのだろう。母さんには黒い穴から二匹が出てきたことを伏せている。ゲーム世界からルカとテトが帰ってきたかもしれない。でも、俺はなんといって説明すればいいのかわからない。


「三澄ルカちゃん、一番にどうぞ~」


「あっ、俺。ルカを見てもらってくる」


 号泣する母さんに見送られながらも、俺はルカを抱えて診察室に入っていった。ルカは診察中もずっと暴れていた。


 後日、血液検査の結果が届いた。


 ルカもテトも健康そのものだった。




 ―――――――――――――――

 気ままミャtips

【どうぶつ病院】


 どうぶつの健康を守る場所。


 だが、同時に多くのペットが嫌いな場所でもある。そのため生傷の絶えない職場なのだろう。




 ちなみに、ここまでが四章です。

 ここまでお読み頂きありがとうございました。

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