第46話
アーミャはあれからポータンに倒された。
全滅回数を増やしてエンディングフラグを呼び出すために。でも、前提条件を間違っているため何度全滅してもフラグを呼び出すことはできない。そんなことなどアーミャは知らずに何度も倒された。
何度倒されたかわからないくらいボロボロになりながらずっと。宿屋に戻されてもずっと。ひたすら負け続けた。途中からエリクサーを使っていたのを思い出してトールがくれたエリクサーを使ったりもした。でも、一度使ったエリクサーに回復効果はなかった。
カチッ。
戦闘中に何かが起きて世界が暗転した。
「やっと、おわり…かみゃあ?」
…ザザッ、ザザザッ。
画面が暗転して黒い世界が広がる。ノイズのような、カラーコードのような、マップ表示が半分ズレて世界が裂けたような画面が続いた。
そして…
キよマニにャーゲーム
▶ヒト
ケット
三澄透が…「ヒト」を選択した。
ガタン!
黒い世界はクリア後のエンドロールじゃないかと思ったボクの考えは正しかった。その証拠に、目の前にはいつか見た次元の裂け目の黒い穴がある。とても小さいけど、確かに穴が開いている。戦闘で傷ついた体を動かす。穴の前まで這い寄ると両手で力一杯広げた。
「うみゃみゃみゃ…うみゃあっ!」
無理矢理穴を広げると、猫一匹が入れるくらいのサイズになった。所持品からルカとテトを取り出す。二匹はあれからずっと眠っていたみたいでスヤスヤと寝息をたてている。
あとは黒い穴に入ってもらうだけだ。
「ルカ、テト、帰る時間みゃ」
『…かえる?』
『もう、あさ?』
ルカとテトは立ち上がるとグーッとその場で伸びたり大きな欠伸をする。ルカはヒゲが気になったのか呑気に顔を洗っている。
あはは、こんな時でも自由気ままな猫達だね…
「ここからトールの所に帰れるみゃ」
『トール!』
トールという言葉を聞くと、テトが反応して一目散に黒い穴の中に飛び込んだ。そしてこの世界から出ていった。なんだかんだでずっとトールに会えなくて寂しかったのだろう。
「テト…元気でみゃ…」
別れは辛い。聞こえないように小さな声でテトに別れを告げた。ルカにボクの声が聞こえてしまったようで、黒い穴の前で立ち止まると振り返った。
『…みゃ、みゃーみゃ? も、いこ?』
「みゃはは…ボクはいけない、かみゃ?」
『…なんで? …あんない、する』
「ボクの冒険は、きっとここで…おしまいみゃ…」
ルカは動こうとしない。
『ルカ! ルカもそこにいるのか!?』
『るかねえ! はやく!』
黒い穴の中からトールとテトの声が聞こえてきた。黒い穴はどんどん小さくなっていた。本当はボクが無理矢理ルカを投げ込めればよかったんだけど、ボクはもう一歩も動けそうにない。
「ほら、心配してる声が聞こえるみゃ」
『…でも』
ボクがついて行かないなら一歩も動かないと言わんばかりにルカが座った。おっとりしているけど優しいルカ。黒い穴が猫の頭程度の大きさになった。猫は顔が入れば通れる。でも、逆を言うと顔が入らなければ通ることができない。もうタイムリミットだ。
それなら…
「ボクは後で行くみゃ、だから…」
ルカの目の前に一枚のチラシを置いた。
「先に行って、トールにこれ…頼んできてほしいみゃ…」
『…うん…わかった!』
ルカはそう言うとチラシを噛んで黒い穴に飛び込んだ。ボクがトールから報酬に貰うと言ったのを覚えていたのかもしれない。力強く飛び込んだせいかチラシはビリッと破れ、チラシの殆どがこちらの世界に残った。向こうへ行ったのはルカの口の大きさくらいかもしれない。
でも、受け取ることはきっとないから大丈夫。
最後にトールの嬉しそうな声が聞こえてきて黒い穴は完全に消えた。
「よか、ったみゃあ…」
でも、トールに会ってみたかったな…
頭の上にチラシが落ちてきた。
それに、この…
「しりゃたみゃあんみゃつ…欲しかったみゃあ…」
―――――――――――――――
気ままミャtips
【文字化け】
テレビゲームなどのコンピューターが表示している文章が正しく表示されない現象。
文字化け後は変な文字列になる。外国でも「mojibake」で通用するらしい。
この物語の文字化けは正確に言うと文字化けではない。文字化けを再現できるwebサイトがあるため、物語で文字化けを使用したい場合は一度見てみるとよいだろう。
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