第41話
「そろそろ家族が恋しくないかみゃ? 帰りたくならないかみゃ?」
アーミャは王都の中を散歩していた。
『…まだ…さんぽする』
『ルカねえが、あきるまで』
二匹はまだ帰るつもりがないようだ。
ルカとテトと朝ご飯を食べた後、まだ帰りたくないと言い今日も散歩することになった。
あれから黒い穴がどうして消えたのかを考えてみた。二匹が帰りたくないから閉じたのかもしれない。それなら帰りたいとおもわせれば黒い穴がまた開くはず。
そう考えたボクは二匹と話をすることにした。
ルカとテトには昨日と同じカリカリを用意してあげた。今日も宿屋の店員は不在で、ボクの朝ご飯は焼き魚だった。今日も味がしない。
たぶん怖いものと痛いことの次くらいには料理が苦手。
昨日カウンターに置いたお金は無くなっていたから、宿屋の人は居るはずだ。もしかしたら王都で近々お祭りがあって、その準備でみんな忙しいのかもしれない。
その証拠に、今ボク達が散歩をしている道には人が誰一人として歩いていない。いつもは人や馬車がいっぱい行き交っている大通りなのに。
今日はボク達以外が誰もいない貸し切り状態で、自由気ままに散歩ができていいけど、ちょっと不気味な光景だ。
『…つかれた…のせて』
『ルカねえが、のるなら、テトも』
二匹は歩き疲れたらしい。ルカは昨日と同じでボクの頭に乗せて、テトは両手で抱っこした。
『…ひんやり…きもちい』
『トールより、ひんやり』
「トール? その人がルカとテトの家族かみゃ?」
トールという人が二匹の家族であり喧嘩した相手のようだ。ボクが聞いた瞬間、テトが嫌そうな顔をしてプイッと顔を背けた。
「トールに会いたくないのかみゃ?」
『…おこられた』
『トール、こわかった』
その後、二匹からいくら話を聞いても怒られた、怖かったと続けて要領を得ない。話疲れたのか、気がついたら二匹は眠ってしまった。
とりあえずトールという人がこの猫達の家族で、黒い穴の中で泣いていた人なのがわかった。今日はそれでよしとしよう。
『…といれ』
ルカとテトが眠った後、呑気にブラブラ歩いていると、ルカが突然ブルッと震えてそう言った。
『テトも、したい』
テトも起きた。でも、ボクにはそれがよくわからない。ポカンと口を開けて聞き返してしまった。
「トイレって、なにかみゃ?」
トイレには砂が必要ということで、砂のある森の中にやってきた。
『まず、あなをほる』
テトがそう言うと、前足を器用に使って小さな穴を掘った。
「にゃるほど…」
『ここにだして、いれる』
出して、入れる?
テトは掘った穴の上で数回クルクルと回った後座った。そして踏ん張るようにして何かを出すとスッキリとした顔になった。
『だしたあと、うめる』
「…にゃる、ほど?」
『…したこと…ないの?』
他の場所でトイレをしていたルカにそう聞かれた。
「ボクは一度も、このトイレ? っていうのはしたことないみゃ」
一日数回トイレをしないとお腹がパンパンになるらしい。猫って不思議な生き物だ。
『おまえ、ふしぎ、ことばもわかるし』
テトにそう言われて気がついた。なんで二匹の言葉がわかるんだろう。
猫獣人だから猫の言葉がわかるのかな?
でも、その前にボクはオマエなんて名前じゃない。胸に手を当て、ルカとテトに遅い自己紹介をした。
「お前じゃなくて、ボクはアーミャみゃ」
『…みゃみゃ?』
『アーミャ、おぼえた』
名前を教えると、ルカは不思議そうに首を傾げ、テトは一回で覚えたらしい。トールの名前を覚えていたことを考えると、テトほうが賢いのだろう。
そんな賢いテトの横で、ルカは呑気に毛繕いを始めた。
「それで、まだ帰らないのかみゃ?」
『『かえらない』』
まだトールにいい報告はできないようだ。
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気ままミャtips
【猫のトイレ】
猫は基本的に砂があればそこがトイレ。
しつける必要はない。最近では鉱石系の砂を使った猫用トイレがあり、お手入れも楽で臭いが全然しないため優秀。
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