第39話 三澄家の捜索

 雪の降る寒々とした冬の夜、三澄透は白い息を吐きながら自宅へ帰った。


「はあっはあっ」


「…透、見つかった?」


 母さんにそう聞かれて首を横に振る。


「いやっ、いない」


「…そう」


 母さんが悲しそうに呟いた。ルカとテトが家から消えて一週間経った。年始だというのに俺は神社にも行かずに必死に近所を走り回った。車の下や暗い路地裏、公園の遊具の中など、猫が隠れそうな場所をとにかく探した。


 でも、俺達の家族、ルカとテトはどこにもいない。


 母さん曰く、俺が年末に見た夢は正夢で、ルカとテトは開いている窓から家の外に行ってしまったのかもしれないと言われた。この寒い時期に窓なんて換気くらいしか開けないが、閉め忘れていた…の、かもしれない。


 実際、あの黒い穴は消えている。俺がゲーム内に必死に投げ入れた食べ物は、後で見た時にはすべてゲーム内から消えていた。ゲーム画面にはルカやテトはどこにもいない。アーミャの姿まで映らなくなった。


 コントローラーを押しても、もう画面が動かない。


 画面中央に操作キャラがいないから当たり前ではある。だがゲームとしては致命的なバグだろう。でも、このゲームハードは元々壊れていて画面など動いていなかったのかもしれない。


 今までのアーミャとの冒険も、俺が見た夢だったのかもしれない。


 白昼夢というやつだろうか?


 心の中のどこかで彼女が欲しいと願っていた俺が見た、非現実的な妄想だったのかもしれない。俺は猫が彼女でもいいと思っていた。LLVIのキャラクターであるルーナが実際にいたら彼女にしたいと思ったはずだ。


 その妄想が合わさり、アーミャが生まれたのかもしれない。


 徐々にだが、その説を信じるようになった。


「この季節は寒いから、どこかの家で保護されているといいのだけど…」


「俺、ネットの掲示板とか使ってみる。親父達は迷子猫のチラシ作ってみて」


「チラシ、チラシだな! よし任せろ!」


「それなら私はチラシに使う写真を選ぶわ」


 俺はネットの掲示板でルカとテトを探し、親父と母さんは迷子猫のチラシを作りはじめた。もちろん、自分の足を使い家の周辺を探すことも続けた。




 ―――――――――――――――

 気ままミャtips

【迷子猫】


 迷子の猫。


 猫は怖がりなので、知らない土地に行くと暗い場所や狭い場所に逃げることが多い。車の下などの暗くて狭い隙間を探すとよいだろう。見つけたら好きなおやつやおもちゃで釣るべし。

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