タバコとフード
私は、今から死ぬ。
理由は、疲れたからだ。
毎日セルリアンに怯えながら瞳を閉じる。
朝起きたら、いや、もう起きないのかもしれないと考えながら眠りにつく。
生きていて、何も生まない。
ただ、恐怖心を無くそうと努力する日々。
そんな人生に、疲れたのだ。
ガードレールの外に立った。
ここは山の中腹。
いくら身体能力が高いこの体でも大人しくなる。
そう思った。
自分の思いとは裏腹に、月は丸く光っていた。
道路の照明も光っている。
このまま誰にも知られずに死ぬ。
このままだったら。
「落ちるのか、やっぱり」
後ろから声がした。
尾行されないように細心の注意を払ったはず。
声の方向を向いてみた。
誰かいるのはわかった。
だがその時、ちょうどよく月が雲に隠れ、あたりが暗くなった。
そして照明がその人の後ろにあり、顔が暗くて分からなかった。
でもシルエット的にパーカーを着ていることは分かった。
「…あなたには関係ないでしょ…」
「…関係ないといえばないけど、あるにはある」
「…!何が言いたいの…!!」
思わず口調を荒くして言ってしまった。
そして、体ごと話してくるフレンズ?に向けた。
すると、胸辺りがオレンジ色に光っていた。
いや、燃えていた。
左手に小さいものを持ちながら、右手で火を起こしていた。
元は動物。
本能的に火を見た瞬間背筋が凍ったがすぐに火はなくなった。
その代わり、右手に持っていたものがほのかに光っていた。
それを口に持っていき、深く息を吸ったあと空気がなくなるまで息を吐いた。
その空気は白く、まるで寒い日のようだった。
そうだ、どこかの本に載ってあった。
確か名前は…
「別に、飛び立つことをやめようとさせてるんじゃない」
思いつく前にそいつがゆっくりと歩いてきて言った。
そして横のガードレールに肘をかけ、遠くの景色を見ていた。
「ただ、言いたいことはある」
ほのかについている火のおかげか、さっきよりかは顔元が見やすくなった。
「『そのままでいいのか』、これだけは言っておく」
かすかに、目だけは見えた。
それ以外は分からない。
だが、その目は透き通っており、いつも見ていた。
「…それじゃ、あとはごゆっくり」
そう言い、再び闇に消えていった。
雲に隠れていた月がすぐにまた見え始めたが、そこには人影などなかった。
朝、私はいつもの場所に帰った。
みんなが心配してくれてた。
抱きついてきたり、中には泣いていた子もいた。
そこには珍しく、隊長も滞在していた。
ちゃんと訳を話そう。
そしてまた始めよう、そう決心した。
それと同時に、視界に入っていた。
内ポケットに、昨日見た”タバコ”が入っていたことに。
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