魔法少女はそんなに万能じゃなかった4



「異端者は〝浸食〟してくるタイプです。触られたら俺の腕みたいに溶けるし治りが遅くなるんで気を付けてください」

「なるほどね……クゥちゃん、まだいけそう?」

「次くらったら首飛ぶと思います、腕まだ治せないんでやばいです……」


 そう言ってグロッキーな腕を見せてくるクロに思わずおげぇっと声が出た、胃の中身全部出るとこだったぞおい。

 綺麗にスパッと切れていたらまだグロさ的には大丈夫だけど中の肉がぐちゃぐちゃになっていてとんでもないことになっている、まだちょっと塊が残ってるミンチ……おええぇ。グロ耐性なかったら吐いてレベルでやばい、こんなのちゃんとした女子がある女子が見たらトラウマだし発狂だわ。


「触られたらおしまいってことね。分かったわ!」

「うげ……ああはなりたくないわ」

「あ?」

「な、なんでもないわ」


 傷を負ってもクロの嫌味たらしい態度は現在しているようで鋭い眼で私を睨みつけてきやがった。


「今ここで喧嘩はダメだよ。異端者の属性は闇だから僕とヒイロちゃんがメインアタッカー、クゥちゃんはちょっと不利だからクゥちゃんとアイさんはサポートで。よろしくね」

「おっし、全力で叩けばいいんやね!」

「任せなさぃ!」


 闇の弱点は普通に考えたら光、炎も適応されるか知らないけど炎も光判定になるなら私は今最大戦力となる!(はずだ)。

 異端者の弱点ということはチャチャッと済ませられる気がする、よっし5分でやってやろう。


「準備はいい?」

「おん!」

「できてるわよ!」

「できてます」

「よし。じゃ、油断しないようにね!」


 私達を守っていた氷の壁が消えて異端者が《キャハハ》と笑いながら攻撃をしてきた。力任せの攻撃を受け止めるのには骨が折れそうだったから一旦距離を置く。

 あんな重い一撃を1回1回受けてたら腕が使い物にならなくなりそう、恐るべし怪力の持ち主だ異端者。


「おーおー威勢がえーな!」

「ヒイロちゃん、油断しちゃダメだからね!」

「わかっとりますよ!」



 異端者はシロさんに狙いを定めて攻撃を仕掛けているけど1発も当たっていない。氷魔法を使いながら避け、避けたと同時に武器である針を無数に投げて攻撃する。

 アイさんが作った水野足場を利用し、背後をとって刀で切りかかったけどすぐにバレて反撃された。初心者時代の私じゃすぐにぶっ飛ばされてぐらい威力がパない、マジでバケモンすぎる。

 尋常じゃないほど重い一撃をなんとか受け止め、炎を刀身から異端者に向けて放つ。


《いだぁあいいいぃいいぃいいやあああああっ》


 炎が異端者の身体を包むと異端者は甲高い悲鳴を上げて私から離れ、炎が触れそうになる度に私から逃げていく。


《ぎゃあィあああああああああっっ!!》


 甲高い悲鳴を上げ、異端者は地面から夢バグのような触手を出し私を妨害してくる。うねうねと動く触手は集合体恐怖症の人が死ぬレベルで生えてきていて気持ち悪い。見た目がグロすぎる。


「まじ気持ち悪すぎやろ!!」


 別に集合体恐怖症というわけじゃないけどこれはちょっとキモイ、黒くてちょっと太い突起だらけの触手が無数に地面から生えてうねうねしてるとかキモイ。精神攻撃してくんなコノヤロウ!


《い゛やぁ!い゛ぎぁああああッ!!》


 触手をなぎ払いながら異端者を追うけどゴキブリのように倒しても倒しても復活してくる、誰か置くタイプの殺虫剤寄越せ。

 スクランブル交差点のど真ん中で集合体恐怖症の触手に囲まれるとか最悪、気持ち悪い……見た目どうにかしろ、物理的な攻撃だけで頼むよほんま。


「うえ、まじきも___え、あれヤバない?」


 ビルの上でナイフで援護していたクロを狙って異端者が高く飛ぶ。

 1発喰らえば首飛ぶと言っていたが大丈夫なのか?と思いながらチラ見ていたらシロさんが容赦なく異端者を蹴り飛ばして隣のビルに叩きつけた。シロさんは私とは比べ物にならないほどの圧倒的な魔法で異端者を容赦なく攻撃し始める。籠の中の鳥なレベルで逃げ惑う異端者……ちょっと待て、いたぶってないですかソレ。

 私なら多分一瞬で氷漬けになるよ、逃げ場所ないってあんなの。


「ヒイロちゃん、シロくんアナタ達魔力の消費を考えなさい!倒れちゃうわよ‼」

「きーつけてます、よッ‼」

「分かってますよ!」


 あらゆる方向から触手が襲ってくるけど触手自体は炎に当たった瞬間怯むから簡単に一応倒せる。ここまで闇属性が炎に弱いなんて思ってもいなかった、雑魚い。

 炎って光ってるしやっぱ光と同じ効果があるみたい!!楽々って感じで余裕だけど触手は倒せるけど数が多すぎる、数の暴力てやつか。ゴリ押しでいけるとか思われてるの腹立つな。


「アイさんは僕のサポを続けて!」

「オーケーよ!」

「クゥちゃんは僕の魔法を隠して!」

「ん!」

「ヒイロちゃんは…………そのまま集中‼異端者の魔力を限界まで減らして!」

「集中りょーかい‼」


 魔力が少なくなってきたのか徐々に数が少なくなってきた、このまま切り続ければすぐに終わりそう。

 最終的に触手も私の事を避け始めて逃げ惑う触手達を悪い顔をして追いかける。もはやどっちが悪者なのか分からないような……完全に私が虐めてる絵面じゃん。私キラッキラの魔法少女だし悪役にしないでくれや。


「おら、さっさ逃げんと燃やすで!」


 普段はあまり使わない大太刀を振り回して邪魔な触手を切り落とす。雑魚清掃にはもってこいの我が大太刀ちゃん。


「おらおら黙って逃げんと舌噛むぞ‼ギャハハハ!」


 もう笑い方までやばくなってしまった、マジで知らない人が見たら悪者確定な気がする。雑魚処理なら我が使い魔で十分だったかもしれない……と思いながらギャーギャー喚きながら追いかけること数十分――


「ヒイロちゃん引いて!叩く!!」

「おん!!」


 指示通りに触手パークから撤退してシロさんのところに行く。突如攻撃を止めた私達を見て異端者はケラケラと笑い、クロに狙いを定めて走り出した。


「ちょ、引いたはええけど大丈夫なん!?」

「大丈夫。ふふっ、見てて」


 動かないクロを見て異端者はにぃっと笑い、武器を持つ右手を大きくあげる……マジで大丈夫なんだよね!?

 1歩もアイツ動かないんですけど!?と口に出そうとしたその瞬間___


「今日は早めに帰りたいし、すぐに終わらせる」


 攻撃が当たる寸前にシロさんが仕掛けていたと思われる魔法が発動し、地面から勢いよく氷柱が出現する。

 突如出現した氷柱に対応できず異端者は串刺し状態になり、身動きが取れない様子で手足をパタパタ小動物のように動かしたあと動かなくなった。カッチコッチか固まってやがるぜ。

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