書斎
書斎
翌日、ローゼルは相変わらず忙しい。
ソアラが彼と顔を合わせたのは、夕暮れ時だった。
マギーがソアラの部屋に訪れ、別荘のずっと奥にあるローゼルの書斎まで、彼女を案内してくれた。
マギーは、マボガニーの大きな扉を開け、ソアラを室内へ招き入れた。
ローゼルの書斎の壁は、暖炉以外、ほぼマボガニーの書棚に覆われ、すべて粉砕のガラス戸がついている。
巨大な机。
大きな大理石のマントルピース。
その横に置かれた革張りの椅子。
優雅で男らしい雰囲気と、豪華な茶色の綴模様の壁紙。
天井は、花をあしらった円形飾りの凝った漆喰加工。
床に敷かれた高級絨毯によく似合っている。
昼過ぎまで降り注いでいた小雨は、あがっていた。
行儀よく並んだ縦長い窓から、茜色の光が差し込んでいる。
「やあ、ソアラ。昨日の件を気にしていたみたいだから、ソアラも同席したほうがいいと考えて、呼んでみた」
マギーが部屋から去り、ソアラが優雅な物腰で挨拶を済ませたあとのこと。
ローゼルが暖炉から離れ、彼女のもとへ来た。
「同席、ですか?」
「そうだ。その前に暖まろう。廊下は寒かっただろう?」
ローゼルは、顔を顰めたソアラの細腰へ自分の腕を回す。
雨がしとしと降り続けたこともあり、早朝から冷え込んでいる。
わずかに日差しがあった昼過ぎになっても、底冷えする寒さは残っており、温度は上がらずにいた。
「ローゼル様、寒かった昨夜の今日ですし、体調はいかがですか?」
ソアラは、昨日雨に濡れたことを思い出していた。
何よりもまずはローゼルの体調が気になり、ソアラは問うた。
「私? ソアラが気にしてくれるとは嬉しいな。問題はない。ソアラこそ大丈夫かい?」
ローゼルは、ソアラを誘導し、暖炉の前へ連れて行ってくれた。
「大丈夫です」
ソアラは、小さく頷く。
自分の目の前にいるローゼルの存在。
ソアラは、胸が高鳴るのを感じていた。
確実に暖まるはずの暖炉の熱量よりもずっと。
自分の細腰に手を添えているローゼルの感触すべてが、何よりも心地いい。
妙な暖かさをもたらしてしまうかも。
彼女自身、そんなことを内心考えていた。
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