庇護
庇護
ソアラは、ローゼルの庇護を受けて暮らすことになった。
屋根裏部屋で暮らすメイドとして、こき使われた伯爵家とは違う。
豪奢な部屋。
自分のためだけに揃えられた、最上級の調度品。
ソアラは、戸惑いを隠しきれない。
正式な婚約者候補としての発表は、まだ先の話だった。
紫色のガラスの薔薇をペンダントトップとした金の鎖のネックレス。
ローゼルは、すぐさま再会したその日にソアラの首元にかけてしまった。
ソアラは、マギーの指示通りに、主に王であるローゼルの身の回りの世話を請け負うことになった。
毎日刺激たっぷりな生活を送っている。
ソアラが自分で使っている部屋。
隣のローゼルの部屋。
そして、中庭以外、ソアラは足を踏み入れることは出来ない。
ソアラは、短い範囲の中で、ローゼルの世話をしている。
ローゼルの起床も手伝うことになっていた。
ソアラは、毎日起床にはひと苦労していて、今日もまたローゼルを起こさなければいけない。
二人の部屋が繋がっている扉。
ソアラは、憂いの瞳を向けつつ、ゆっくりと歩き出す。
先に早めに起き、夜着から着替えて準備を済ませた彼女自身、毎日ながらも気が重かった。
ソアラが来ているのは侍女の衣装。
だが、マギーが身につけているクラシカルなワンピースとは違う。
ペティコートを何枚か重ねて、スカートを膨らませた黒いワンピース。
レースがふんだんに使われたエプロン。
とてもふわふわとしている。
他にはない、可愛らしい服だった。
公に公認されるまで、他に干渉されないようにと、特別にしつらえたこと。
ローゼルとマギーの案らしいが、それは少女が着たがるような可愛らしさだった。
伯爵家の長年使い古したエプロンドレス。
ソアラ自身、比べてしまい、何だか自分には不釣り合いだなあと思っている。
ソアラは、ひらひらした衣装を尻目に、溜息をついている。
意を決した彼女は、隣の部屋に続く扉のノブを回した。
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