意図

意図



「マギー、何を言いだすつもりだ?」


目を吊り上げたローゼルは、隣に立つマギーを睨めつける。


「ローゼル様、もう少し冷静になってください。私はソアラ様を否定しているのではなく、別の意味で言ったつもりです」


「別の意味?」


「そうですわ。ガラスの薔薇や、ローゼル様が、こんなにも鮮烈に反応する乙女、私は初めて見ました」


「だろうな」


「亡くなられた王妃様のジョア様よりも、鮮やかな紫色。これは一体どういうことなのでしょうか?」


マギーは、謎かけのように、ローゼルに言ってきた。


ローゼルの乳母であるマギー。


彼女は、女性では珍しく学問に精通するほど聡明。


これは今に始まったことではない。


優しい相貌から想像つかないほど、ローゼルはマギーに厳格に育てられてきた。


「……さて、どういうことなのだろうな。調べてみる価値はありそうだ」


「そういうことですわね」


「ソアラ、花嫁候補は変更するつもりはない。私のそばで王妃としての教育を受けて貰う。わかったな?」


ソアラに拒絶され、ローゼルは高ぶっていたが、マギーによって本来の冷静さが戻る。


ローゼルは、淡々とした口調で、ソアラに通告した。


「む、無理です。私は勉強するよりもまずは、働かなければいけないのです」


ソアラは、ローゼルの予想外な言葉を口にしてきた。


「働く? ソアラ、どういう意味だ?」


ローゼルは、わけわからず顔を顰めている。


「私を産んでくれた母が、過労により弱って床に伏せてしまい、働けないのです。それでエロク様のもとへ、まずはメイドとして仕え、ゆくゆくは愛妾としての役割を果たしながら、賃金を貰う予定でした。それでも愛妾として慣れていなく、思わずびっくりして泣いてしまいましたが」


ソアラは、先ほどのエロクとの騒動を思い返したのか、言葉を詰まらせて、少し怯えた表情になる。


気丈で王である自分を見つめるソアラ。


まだ十四歳の娘なのは確か。


さすがに何事にも動じることは出来ないらしい。


女性として非力だったことに怯えている。


ソアラから、弱々しさが滲み出ていた。


ローゼルは、ソアラのことがとても不憫に感じ、庇護欲にかられた。


思わず自分の腕を伸ばした彼は、ソアラを自分の胸板に引き寄せていた。



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