出会いは必然⁉︎

出会いは必然⁉︎



ローゼルは、騎士の服装である紺の丈の長い上着を身に纏い、城下町に来ていた。


朱金の筋が入ったブロンドに、知性輝く切れ長に瞳。


姿勢端正で類まれな美貌は、どうあれ人の目につく。


ローゼルは、女性からの甘い誘いがひっきりなしにあったが、そっけなくかわし続けている。


もう陽が沈むというのに、騒然と区画された城下町の中央にある広場から、歓声が聞こえてきた。


一体何事だろうか?


ローゼルは、それを耳にし、足早に向かう。


そんなに多くはないが、広場の篝火のまわりには人が集まっていた。


ローゼルの目に、煌めく炎に照らされた手品師が、戯けて芸をしている姿が映った。


次に、少し離れた先にいる若い娘へ吸い寄せられていく。


ローゼルは、まるで磁石のように、視線を逸らすことが出来ない。


まだ十三、十四と幼く見え、自分の好みとはほど遠い。


自分が相手してきた、色気ある豊満な美女たちと違うというのに。


どうしてこんなにも気になるんだろうか?


ローゼルは、不思議に感じながら、目を離すことが出来ずに、じっとその娘を見据え、観察していた。


若い娘の髪は、豊かでまっすぐで、墨のように黒い。


だが、少しも似合っていない。


ありえないほど茶色の長い睫毛に、大きな深緑の瞳。


ローゼルにとって、その瞳はかすかに覚えがある。


彼自身、それがよけいに惹きつけられるのがあった。


娘は、鼻立ちが整い、花びらのような唇をしている。


違和感のある長い黒髪が、華奢な肩を覆っている。


飾り帯を締めた質素なガウンの上から、その肢体がほっそりと美しく、端整なのがわかった。


しばらくして眺めているローゼルの目を、釘つけにしたこと。


それは、可憐な姿形だけではない。


微笑んだ時、頬にくっきり浮かぶえくぼ。


花のように笑って、手を叩いている時の瞳の輝き。


何よりもそれがローゼルの心を捕縛した。


ローゼルがそうやって見つめている間に、三人の男が娘に近づいてきた。


身なりからして騎士の従者と思われる若者たちは、かなり酒が入っているらしく、顔が赤らんでいた。


若者たちの気配に気づいたのか。


若い娘からの笑顔が消え、踵を返してその場から逃げ出した。


若者たちは、娘を諦めることなく、楽しげに追いかけていく。


ローゼルは、悪態をついて、そのあとを追った。






※お読み頂き、ありがとうございます。

 気長に宜しくお願い致します。




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