第6話 弟子は何人だ。

「この部室はダメだ……」

 入部して数週間。

 練習はせず、今日はチョコレート菓子を食べている。

 はて?母親が壊れる程、高かった道具を無駄にしたら……。

 想像しただけで怖い。

 わたしが着替えて練習しようとすると。

「ちみ、ちみ」

 木舞部長が声をかけてくる。

「なんですか。その『ちみ、ちみ』と言うセリフは?」

「これは偉い人が使う言葉だ、ちなみにわたしは帝王学をうけている」

 さいですかー

 わたしは無視して着替えを続けると。

 木舞部長は大きなハンコを用意して、わたしのおでこにハンを押す。

「なにするのですか!」

 わたしは手鏡でおでこを確認すると。

『肉』であった。

「『祝』の方がよかったか?」

「両方とも嫌です。大体、今時の若い者には『肉』など分からないだろうに」

「そうなのだ、『異世界転生』ものを書けと言われても数が多すぎてどれをベースにしていいか分からないのだ、確かに何本も異世界転生モノを書いていればいいのだろうが、アラフォー世代の嘆きですな」

 木舞部長は腕を組んで小首を傾げる。

 お前は何者だと心の中で思う。

 おっと、話を戻してと……そう『ちみ、ちみ』である。

「木舞部長はとこかの大金持ちなのですか?」

「ああ、大工の統領なのだ」

「うむ、大工ギルドのトップなのか?」

「小さな町工場くらいの大きさだ」

 さて、練習する気も失った事だし、チョコレート菓子でも食べるか。


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