第4話 道具一式

 休日の午前の事である。

「宅配便です」

 届いたのは弓道一式であった。弓に矢、和装の道着である。

「お姉ちゃん、届いたよ」

 うむ、見ればわかる。

 しかし、母親はブツブツと言っている。

 高かったのか……。もう一度、見るが不機嫌である。

「大丈夫だよ、これが有れば初詣で神社のバイトが出来るよ」

 妹のみつかは早速着替えて、的外れの事を言う。弓道だけに的外れな事でいいはずだ。

 しかし、気持ち、似ていない事もないがあれは巫女である。

「お母さんはね、あなた達の幸せの為ならばね……」

 話を戻すと要するに高かったのである。

「直ぐに投げ出しそうで怖いけど……」

 もう一度、要約すると高かったのである。

「はい、先輩達もいい人です。嫌になっても、三年はやります」

「ホント、親思いの良い子ですこと。それに比べていといは何年やるの?」

 何か突然ふられた。よし、ここは良い子でいよう。

「卒業までの二年かな……」

「ま!!!!ぁ、二年、この親不孝者が!」

 なにか逆鱗に触れたようだ。

 大学に進学しても続けろとは思わなかった。

 これはかなり高かったらしい。

「え、ぁ、ぃ……」

 そして、鬼と化した母親に、わたしが言葉を探していると。

「お姉ちゃんが二年で辞めるなら、わたしも二年で辞める」

「ぱっ、わたしは何をしていたのだ?」

 良かった、母親が元に戻った。

 妹のみつかに助けられた。ホントよくできた妹だ。

 その日の昼ご飯のベーコンエッグの肉を一つ、みつかにあげるのであった。

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